ONEPIECE 空の王者が海を征す
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空の王者、怪物を見る
「ボス大変です!!海底へ揺り篭を仕掛けに行ったクルーが怪我をっ!」
「何!?直ぐに手当てだ、怪我の具合は如何だ?!海王類にやられたのか!?」
サルベージ王と呼ばれているらしいマシラ海賊団園長マシラ、彼はルフィ達が情報入手の為に潜っていた船をサルベージすると言うのでそれを見学させて貰い隙を見つけ情報をいただこうと思索しその許可を取り付けた時、彼の船にクルーと思われる男達が引き上げられた。マシラは医療班に指示を出しつつ部下の身を案じている。かなり部下思いの船長のようだ。
「い、いえ殴られたような痕があります」
「何だとぉ海底に誰か居るって事か!?」
「あ、あいつらぁ……」
思わずナミが何てことをと声を漏らしてしまった、そうだった潜っているのはこの麦わら海賊団の中でも好戦的な男だけで構成されたメンバーだった。何者かが迫ってきたのであれば撃退しようと攻撃を加えるに決まっている、それをすっかり忘れていた。このままでは自分たちがその犯人の仲間だとバレてしまう何とかしなければと思っている、マシラが鋭い目を此方へと向けながら大声を張り上げる。
「おいおめぇらっ!!」
「は、っはいえっとその……」
「俺の子分が何者かにやられた!おめぇらもしっかり警戒しとけ!」
「は、は~い(馬鹿で良かった……)」
人が良いと言うかなんと言うか、此方を心配し注意するような言葉を掛けるマシラに安心してビビも胸を撫で下ろした。怪我をした部下を船内へと運んでいくと準備を進める為にマシラは部下を招集した。
「おめぇら、今回は見学者っつうギャラリーがいるけど緊張することはねえぞ。普段通りにやれば良い、落ち着いて、ウッキッキ……き、緊張することねえぞおめぇらぁ♪」
『アイアイサー♪』
緊張する事は無いと言いつつも声色は何処か嬉しそうにしながら硬い、なんだかんだで彼らも嬉しいのかもしれない。あそこまでサルベージ技術に自身を持っているのだから誰かに見せ付けたいと言う気持ちもあったのだろう、そして今こうして見られていると言う事を実感するといやおうにも緊張しているようだ。解らなくも無いが……一度深呼吸をするとマシラ海賊団はサルベージ作業へと取り掛かった。
「揺り篭沈降!謎の敵に注意、発見した場合は攻撃を許可する!」
『アイアイサー!』
船の各所に設置されているクレーンが稼動して行き海中へとホースのように見えるロープを投下して行く、こちらも同じように酸素を確保する為のホースを降ろしているが規模とスピードが段違いだ。加えてこちらの樽を改造して作った物とは全く違う鉄で拵えている潜水服を着たマシラの部下が次々と潜って行く。本職の腕前を見せてやると言わんばかりの迫力と気合を見せ付けている。
「レウスさん、あれって何を降ろしてるんでしょう……?私サルベージって本当に知らなくて」
「多分船に打ちこんで引き上げる為のアンカーじゃないかな、サルベージ自体にも船その物を引き上げる物と船を分解しながら引き上げるやり方がある」
へっ~と砂漠の国出身のビビは素直に沈没船のサルベージ作業と言う物に興味津々だった、恐らくバレないかと心配そうしているウソップやナミ達に比べても純粋にサルベージ作業の見学をしている。そんな熱心なギャラリーの影響もあってかマシラ海賊団は気分良さそうにしながら作業を行っている。
「あれ、あのすいませんマシラさん。その船首のお猿さんは何なんですか?」
「おおこれか?ウッキッキ、お嬢さん良い着眼点してるじゃねえか。そうこれは唯の船首じゃねえんだぜ?」
「じゃあ一体何なんです?」
「ウッキッキ、まあ見てな。時期に解るぜ」
ビビの質問にも快く答えるマシラは聞いて欲しかった部分を聞いて貰えたのか更にご満悦になりながら回答する。素直に待つ事にしたビビにウソップとナミからナイスアシスト!と言われるが当人は意味が解らなそうにしている、どうやらルフィの声がホースと繋げたスピーカーから聞こえたらしくそれを聞かれないようにフォローしたと勘違いされたようだ。
「いぉ~し発進だぁっ~船体ハンター!!」
『アイアイサー!!』
その指示の元船首付近にあったクレーンが作動して行く、すると船首の猿へと伸びていたロープを救うようにしながら前進して行く。猿もそれに引っ張られるように進んで行き投下してたロープに合わせるかのように海中へと沈められていく。純粋にギミックとして面白さを感じたのはウソップ、チョッパー、ビビは凄いという声を上げる。生憎ナミは解らないようだが。船体ハンターという猿は投下した揺り篭と言うアンカーと接続されるとマシラはホースをその手にしながら吹き込み行くぞ!と意気込みながら思いっきり息を吸い始めた。
「ま、まさか空気を自分で吹き込んで船を!?」
「そんな事が出来るってどう言う肺活量してんのよ!?」
「肺活量ならこの世の人間じゃ誰にもまけねえ自信があるぜ俺は!!(すぅぅぅぅぅぅぅ……)」
「よく吸ってる時に答えたなおい」
十二分に息を吸い終わったマシラはそのまま一気にホースへと息を吹き込んで行く、その空気量は半端ではないのか見て解る程にホースは膨らみ海へと降りていく。肺活量の事もあながち間違っていないかもしれない、そして船体が浮いたのか続けてポンプで空気を送り込んでいく船から突然悲鳴が響いてきた。マシラは仰天しながら思わずスピーカーではなく海に向かって叫ぶ。
「何があった子分共~!?」
『ふ、船の中に何者かが、ぎゃあああああ!!!!』
「うぉぉぉおおおおお!!!!何処の馬の骨だ俺様の可愛い子分をぉ!!お前たちは作業を続けろ、俺は行く!!」
『アイアイサー!!』
仲間の事を大切に思いその身を案じるマシラは作業を部下に任せ自分は勢い良く水中へとそのまま飛び込んで行った。あの肺活量なら間違い無く普通に深々と沈んでいるであろう船にも容易く到達出来るだろう……が、此処で海上であろう筈の船が大きく揺れると言う事が起きた。加えて海中には余りにも巨大な影が見えていた。
「な、なんか見えてません……?」
「見えてるな」
「見えてるわね」
「「なんでそこ二人は冷静なの!?」」
「海王類とかで耐性は付いてるわ」
「アラバスタで竜とか戦ったから」
と冷静なロビンとレウスを他所にその影は遂に海上へと浮上した。海王類と比類無いレベルの超巨大な亀、まるで大陸に見間違えてしまうかのような凄まじい大きさの亀に思わずナミ達は現実逃避してしまっているがロビンが船が食べられた事と給気ホースが亀の口へと続いている事で決定的だと言ってしまったでの一斉に現実へと引き戻された。
「レレレレレレウスさん如何しましょう!?ルフィさん達食べられちゃいましたよ!?」
「……。如何しようか、少なくともあいつらが食われた程度で死ぬとは思えないけど……」
「レウスお前ドラゴンになれるんだから何とかしろよぉ!?」
「無茶言うなよ、下手に攻撃してこっちに気を引いたら食われるぞこっちも。それでも良いのか?」
「やっぱり止めてください!!」
などと言っている間に亀は少しずつだが海中へと戻ろうとしているか沈み始めている、ホースで繋がっているこの船もマシラのビクトリー・ハンター号も海中へと引きずりこまれようとしている。ナミは迷う事無くホースを断ち切る事を指示した、それによってウソップとチョッパーから悪魔か!!?と叫ばれるがまずは身の安全を確保するのが当然と主張する。
がその時―――周囲の明るさが消え去り夜の闇に引きずり込まれたかのように昼だった空は一気に暗くなった。一瞬の内に夜へと変化した空に驚きパニックを起こす一同。がそんな時に海中からルフィが跳ね上がるかのように甲板へと上がり続いてゾロとサンジが上がってきた。
「ふ、船を出せここから離れるぞ……!!」
「やべえぞあいつは……海獣の一種みたいな猿が……」
「ルフィと楽しく話してたと思ったら、暴れだし始めやがったんだ……!!」
「暴れることゴリラの如しだ!!」
どうやら潜って行ったマシラと遭遇したゾロとサンジは目の前に現れた海獣の一種であろう猿の凶暴性を語り続ける、目の前でどれだけマシラが暴れたのだろうか。加えて沈没船の中と言う悪条件も加わりまともに応戦出来なかったようだ。そして漸く亀に気付いた二人も加わって船を動かそうとした時船の上へと現れたマシラは此方を敵視しながら腕に力を込め始めている。
「おれのナワバリで財宝盗んで逃げきれると思うなよ、てめぇら容赦しねえぞ……!!!」
「財宝!?財宝があったの!?」
「ああいっぱいあったぞ♪」
「ってナミさんそんな事言ってる場合じゃ!?」
「ビビちゃん、ナミちゃんにんな事言っても無駄だ。一国の王女の値段が云々って本人の目の前でいる人間だぞ」
「……そうでした」
目の前の男は財宝を奪ったのならば容赦しないと言っているのに財宝があったかなど聞いたら余計に起こらせて襲ってくるに決まっていると航海士にいうが好意を寄せる男の言葉で即座に彼女の人間性を思い出し直ぐに黙った。兎も角戦う準備をしようと武器を取り出すビビだがマシラは震え声をあげている部下の方を見た。
「園長、あ、あれぇ……!!!」
「如何した?!」
その声と指先を見た瞬間、今いる世界が現実なのかどうかと言う事を全員が疑った。明るい昼間が夜になったと言う事象が既に起きている状況に畳み掛けるかのような出来事に全員が心の奥底から驚愕し言葉を失ってしまった。それは余りにも突然現れながら頭の中では絶対にありえないと否定した上で異常さを理解するしかなかった。真っ暗な夜にも等しい空の中に浮かび上がっている生き物の姿のような物、突然現れたのも実に不可解なのに異常なのがその大きさ。リトルガーデンにて出会った巨人族のドリーとブロギーの百倍以上もありそうな巨大とその身体に見合うかのような槍のような武器、震える身体と恐怖を訴えかける本能が導き出すことは
『怪物だぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!』
その場から一刻も早く逃げ出す事だった、余りの出来事に何も考えられずに出されたオールを全員が命一杯漕いだ。レウスでさえ竜化するという考えすら出てこずにオールを必死に動かし続けた、必死に腕を動かし漸く光が見え元の昼の空に戻った所で巨大な怪物の姿も見えなくなり全員が床に座りこみ溜息を吐いた。
「……全く偉大なる航路ってのは次から次へと不思議のオンパレードだな……」
「全くだ……今日だって」
「巨大ガレオン船が降って来たと思ったら……」
「記録指針を空に奪われて……」
「妙な猿が出てきて……」
「それでサルベージを始めて」
「船ごとを食っちゃう亀が出てきて」
「夜が来て……」
「最後は巨人族の何百倍もある大怪物!!」
「あれには流石に参ったねどうも……」
思わずその言葉に同意しボーっとしているが漸く気付いた、何故かこの船にマシラが乗り続けている事に。そしてルフィ、ゾロ、サンジ、レウスは4人揃ってマシラを囲うと
「「「「出ていけぇぇぇぇっ!!!!」」」」
「ああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
空の彼方へとマシラを蹴り飛ばした。
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