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提督はBarにいる。

作者:ごません
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お通し談義

 居酒屋とか、定食屋なんかで席に座ると出てくる小鉢。いわゆる『お通し』って奴だ。由来は様々あるが、注文をしっかりと「お通ししました」って合図だってのが粋だから俺は好きだねぇ。本来は喫茶店のお冷やみたいなモンで、店からのサービスだから勘定なんか取る物でもねぇんだが……最近はどうも勝手が違うらしいや。ウチの店でもお通しは出すんだが、毎日の食材の残りと俺の気分でメニューがコロコロ変わるから飽きないって、それを目当てに来る奴も居たりする。

「提督さん、もうお店開いてる?」

「相変わらず早いなぁお前も。ま~だこっちは準備万端整ってねぇってのに」

「あはは!だってここで暖気運転してから、他の所でたくさん飲むのが衣笠さんのルーティーンなんだもん!」

「ルーティーン、ねぇ……あんまりウチの売り上げにならねぇから止めて欲しいんだがな」

 そう。店が開くか開かないかの時間にやって来て、お通しと軽く一品ツマミを頼み、酒を2~3杯飲んでサッと去っていく。それがウチの衣笠の流儀らしい。

「まぁまぁ、別にいいでしょ~?それで、今日のお通しは?」

 軽い調子でカウンターに着くと、早くお通しを出せとせっつかれる。お通しってのは客に催促されて出すモンでもねぇんだけどなぁ……まぁいいか。こっちもまだポテトサラダとマカロニサラダが作りかけなんだ、手早く作るとしよう。

《包丁いらず!?福神漬けのきつね焼き》

・油揚げ:1枚

・福神漬け:20g

・マヨネーズ:適量

・とろけるチーズ:1/2枚

・花鰹、胡椒:お好みで

 さぁ手早く行くぞ。油揚げの中央に福神漬けを乗せる。その上からマヨネーズをかける。多すぎるとくどくなるから注意だ。そこにとろけるチーズを千切って乗せ、オーブントースターで2~3分焼く。チーズがとろけて福神漬けを覆う位が目安だな。後は仕上げにお好みで花鰹と胡椒を散らせば完成。

「ハイよ、『福神漬けのきつね焼き』。酒は何にする?」

「う~ん……ハイボール!」

「あいよ」

 さてさて、今夜のお通しはどんなかな~?等と呟きながら箸を取る衣笠を横目に、ハイボールを支度する。

「ん!美味っ!福神漬けの甘いのと、チーズとおかかがめちゃ合うよコレ!」

「だろ?手軽だけど美味いのがお通しのいい所さ」

 いい居酒屋はお通しも手抜きをしないからな。美味いお通しは店のバロメーターにもなる。





「ぷぁ~っ!やっぱ一日の締めは飲まなきゃねぇ!」

 福神漬けのきつね焼きをつまみつつ、ハイボールをゴキュゴキュと煽る衣笠。しかしまぁ美味そうに飲むねぇコイツ。と、そんな事を考えているとドアベルがカランカランと音を立てる。

「いらっしゃ~い……って珍しいなぁ初雪。お前が部屋から出てきて飲みに来るなんて」

「ん……たまには、自作も飽きる」

 そんな風に呟きながら席に着いたのは吹雪型の3番艦である初雪。基本的に面倒くさがりな性分だが、部屋に備え付けのキッチンで軽く料理がこなせる位には料理が上手いらしい。その上部屋から出てくる事はほとんど無いが、姉妹でも一・二を争う蟒蛇との事だ。

「お~、初雪じゃん!元気してたか~?うりうり!」

「衣笠さん……頭撫でないで、髪形崩れる」

 衣笠が隣に腰かけた初雪の頭をワシャワシャと撫でている。初雪も抵抗はしているが、必死の抵抗という感じではない。撫でてもいいけどやりすぎはやめて、といった感じである。

「お前らそんなに仲良かったのか?」

「うん、昔ソロモン海の辺りでちょっとね~」

「ん。2人で頑張った……」

 成る程、太平洋戦争中の記憶絡みか。ちょっと意外な組み合わせだったもんだから驚いてしまった。

「で?初雪は何を飲むんだ?」

「ジンロ。ロックで」

 こりゃまた珍しい。韓国焼酎の中でもクセが無さすぎると有名なジンロをロックでか。

「味がないから料理を邪魔しない。でも酔えるから好き」

 おぉう、これまた妙な拘りだな……。まぁいい、どうせ酒が韓国の酒なら、お通しも韓国風で行くとしよう。

《お手軽簡単!キムチの白和え》

・木綿豆腐:1/2丁(150g)

・白菜キムチ:100g

・白すりごま:大さじ1

・ごま油:小さじ2

・醤油:少々


 さてさて、作るとしよう。豆腐はキッチンペーパーや布巾で包み、10分程置いて水気を切る。

 キムチは豆腐が絡みやすいように細かく刻む。ボウルに豆腐を入れて手で握り潰したら、刻んだキムチと白すりごま、ごま油、醤油を加えて和えれば完成。

「あいよ、ジンロのロックと『キムチの白和え』だ」

「キムチの白和え……初耳」

「あ!私に出したお通しと違うじゃん!ズルいよ提督!」

「うるせぇ、ウチのお通しは基本的に俺の気分でメニューが変わるんだよ」

 まぁ、気分だけでなく冷蔵庫の中身との相談だったりもするんだが。





「もう!じゃあ今日はここでとことん飲むからね!提督、もっとお通し出してっ!」

「いや、お通しってのは最初のつき出しであってだな……」

「いいから出して!」

「へいへい」

 こんな感じでムキになってる女は大人しく従っておくに限る。触らぬ神に何とやらってな。さて……何を作った物か。鶏のササミがあるな、それとザーサイ……こいつでサラダでも作るとしようかな?


《ササミとザーサイのグリーンサラダ》※分量4人前

・ザーサイ:お好みで

・ササミ:2本

・三つ葉:1束

・小ネギ:5本くらい

・貝割れ:1/2パック

・水菜:1/2束

・きゅうり:1本

・塩:少々

・ラー油:小さじ1

・ごま油:大さじ1

・粗挽き黒胡椒:適量



 さて、作っていくぞ。ササミは酒を小量入れたお湯で茹でて冷まし、冷めたら細くほぐしておく。ザーサイはお好みの量を千切りに。多めの方が美味いぞ。

 水菜、小ネギ、貝割れは4~5cmの長さに切り揃える。きゅうりも4~5cmの幅にぶつ切りにして、太めの千切りに。

 ボウルにラー油、ごま油、塩を入れて合わせ、そこに刻んだ野菜とササミを入れて和える。味見をして塩で調整したら、盛り付けて仕上げに黒胡椒をたっぷりと。


「さぁ出来たぞ、『ササミとザーサイのグリーンサラダ』」

 ニマニマしながら衣笠がサラダを口へと運ぶ。シャキシャキとした野菜と淡白なササミが纏うのは、中華の香り感じるラー油。更に黒胡椒で辛味を足してやれば……

「ビール!これには絶対ビールだよ提督!」

 ビールが欲しくなる。まぁそういう味付けを狙って作ってるからな、当然っちゃ当然か。

「……司令、私にも何か」

「OK初雪、ご注文は?」

「フワフワ系のあったかいおつまみ」

 何とも抽象的だな。まぁ、何か考えるさ。


《チーズはお好みで!明太とろろ焼き》※分量2人前

・長芋:250g

・明太子:80g

・青ネギ(小口切り):大さじ3

・めんつゆ:大さじ2

・マヨネーズ:大さじ1

・ピザ用チーズ:お好みで
 
・バター:小さじ2



 この間もとろろでグラタンを作った気がするが、今回のは似てはいるが全くの別物。今回の具材は長芋と明太子……ほぼこの2つのみだ。まず、長芋は200gをすりおろしてとろろに。残りの50gは食感の違いを楽しむために細やらかく刻む。

 ボウルに山芋、めんつゆ、マヨネーズ、ほぐした明太子、刻みネギを加えてよく混ぜる。

 耐熱皿にバターを塗り、とろろ生地を流し込む。ここでチーズを散らすんだが、チーズを使わない場合には生地を混ぜる段階でマヨネーズを大さじ1プラスしよう。マヨネーズの油分で表面がサクサクになるぞ。

 後はオーブントースターで8~10分焼けば出来上がり。

「ハイよ、『明太とろろ焼き』だ。熱いから気を付けろよ?」

「わかった」

 初雪は慎重に、スプーンで掬い上げで口へと運ぶ。しっかりとフゥフゥして口に入れると……

「あふぉふ」 

 まだ熱かったらしい。少し涙目になりながらも次々と口にスプーンを運ぶ初雪を見ていると、余程美味しかったのが見てとれた。やはり美味いものを作って喜ばれるというのはいいモンだ。 
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