ONEPIECE 空の王者が海を征す
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空の王者、何故か怒られる
「おぉぉいもう一回乾杯しようぜ!!ビビの事を祝え~!!」
「おいおいルフィ何回乾杯するんだよ、賛成だけどぉ!!」
「もうそこまでやられちゃうと恥ずかしくなっちゃいますよルフィさん」
「いいじゃないかビビちゃん、それだけ君が来てくれた事は俺達にとって最高に嬉しいんだからさ」
「よっレウスお前良い事言ったぜ!!ビビちゅわぁ~ん♡俺も最高に嬉しいぜぇ♡」
名目上誘拐されたビビの改めて仲間となった事を祝う宴が始まり皆は船上で大騒ぎしながら祝い続ける、短い間だったが紛れも無く仲間だったビビは此処で別れる事も覚悟していた皆にとってはこれほど嬉しい事ない、また旅が出来る。涙が流れるほどに歓喜するに等しい物なのだ。
「にしてもレウスお前も派手な事やらかしたな、これでもお前も高額の賞金首になるんじゃねえか。一国の王女を誘拐した犯人になったんだからな」
「かもな、もしかしたら初回から5000万を突破したりしてな」
実際は既に7500万ベリーの懸賞金が掛けられているが当人はそれを知る術はまだない。海軍に知られた竜と言う能力を持った海賊に加えてビビを攫った実績を含めると更に手配額が上乗せされ一気に億越えの首となると言う事も考えられるが、実際に彼が自分の懸賞金を知るのはもっと先の話になる。今はただただ一人少女を仲間となった事を祝う事で頭が一杯だ。
「―――あら随分賑やかね、私も一杯貰っても宜しいかしら?」
「ああ勿論さ、ほら」
「有難う、ドラゴンさん」
「……あれ、アンタって……?」
背後から聞こえてきた透き通るような綺麗な女の声にレウスは反応するように樽ジョッキを手渡す、がそこの時点で漸く可笑しい事に気付いた。この船に乗っている女性はナミとビビなだけな筈、その二人は自分の近くにいるがそのどちらでもなかった。浮かれていて思考速度が鈍っていたが徐々に正常な思考を取り戻していくと、その女性の正体に気付けた。
「ミ、ミスオールサンデー!!!?」
大声で叫んだビビは思わずレウスの背後に隠れてしまう、無理も無いだろう。バロックワークスに祖国を無茶苦茶にされているし彼女自身ミス・オールサンデーことニコ・ロビンに攻撃されている身。その脅威が身体に染み付いているとしても可笑しくは無い。レウスも警戒しビビを守れるような態勢になるがゾロやナミも武器を向ける。がロビンへと向けられていた武器はその手から叩き落とされた。
「そう言う物騒な物を私に向けないで欲しいわ」
「悪魔の実……」
「ええ、あいつはハナハナの実の能力者で身体の一部を自在に生やす事が出来るって言ってました」
ロビンの力を完全には知らないレウスへと説明するビビ。地面や相手の身体から腕などを生やし相手を拘束した上での関節技、それがロビンの基本的な攻撃。それだけではなく相手の身体の急所を確実に攻撃出来るという特性まで持っている、通常の人間では太刀打ちするのはかなり難しい。この船で勝てる見込みがあるのは全身がゴムであるルフィぐらいだろう。
「モンキー・D・ルフィ。貴方、私にした仕打ちを忘れていないわよね?あの時、私にした耐え難い仕打ちを」
「何言ってるんだよ俺は何もしてねえぞ?如何して欲しいんだよ」
「いいえ、やったわよ。簡単、私を仲間に入れて頂戴」
『はぁっ!!?』
折りたたみの椅子に座ったロビンはルフィが自分にした仕打ちの償いの為に同じ海賊団に入れてほしいという要求だった。当然全員が驚きの声を上げる、敵だった者が仲間にいれてほしいとは何を言っているのかと正気を疑うレベルである。
「……一体ルフィに何をされたんだ」
「貴方はあの時、死を望んだ私を生かした。目的を失い、もう生きる価値も無いと思ったのに貴方はそれを邪魔した、それが罪。私には帰る場所も行く宛ても無い。だからこの船に置いて」
ルフィとクロコダイルとの決戦、崩れゆく地下で彼女は死ぬ事を望んだ。だがそれを彼女によって齎されたクロコダイルの毒の中和剤を飲んだルフィがコブラ王共々救った。もう行く宛ても帰る所も無いのにそれを救ったのだから居場所を作ってほしいというのがロビンの要求だった。勿論ルフィの答えは拒否に決まって―――
「なんだそうか、そりゃしょうがないな。いいぞ」
『ルフィィィッ!!?』
「心配すんな、こいつ自体は悪い奴じゃねえんだ」
―――いなかった。まさかの肯定に最も険しい顔をしているのがビビだった。自分の国を乗っ取ろうとしていたクロコダイルの右腕としてバロックワークスで暗躍し生きていたとはいえイガラムの船を爆破したのは彼女だ、がクロコダイルを打ち取りアラバスタ乗っ取りを阻止してくれた大恩人でもあるルフィの命を救ってくれたという事実が彼女に圧し掛かった。
「ミス・オールサンデー……いえ、ニコ、ロビン……」
「あら何かしら、王女ビビ様?」
近づいていくビビに皆は警戒するような声を上げる、ビビの心情を考えるとこのまま襲いかかるのではないかと心配になっているからだ。確かにこの女のしたとした事は許せない、だけどそれはもう仲間達が解決してくれた事。今幾ら此処で文句を言ったとしてもアラバスタが救われたと言う事実は変わらない、そして船長であるルフィが決めた事、自分は既にこの海賊船の一員なのだからその決定には従うのが道理。故に今するべきなのは……。
「私は正直貴方の事を許せないかもしれない、貴方は国を狂わせた奴の右腕」
「そうね、それで如何するのかしら」
「でもその国はルフィさん達が救ってくれた、だから私は貴方に何もしない。だってルフィさんがそう決めちゃったんだからね」
肩を竦めながら船長の決定に従うの意図を見せる、そして最後には笑顔を浮かべながら手を差し伸べた。
「私と同じくこの船の一員で同じ海賊、だから何て言うのかな。0から宜しく」
「……意外な言葉ね、貴方からそんな言葉が出てくるなんて」
「だってルフィさんだもん、しょうがないわ」
「ニシシシ」
「ウフ、そうみたいね。それじゃあよろしくねお姫様」
差し伸べられた手を握り返したロビンと笑顔を向けるビビを見て皆は一先ずは胸を撫で下ろし安心した、兎も角大問題への進展が無くて良かったと言う所だろうか。ビビがそう言うならばと徐々に皆はロビンに話しかけたりこれから楽しく行こうと話しかけたりしているが流石にゾロはまだ警戒心を抱いているのか距離を置いている。
「やっぱりサンジさんのご飯は美味しいですね、しかもアラバスタ料理のアレンジなんて最高でした」
「そうよね~サンジ君がうちのコックで本当に良かったわ」
日も傾き夕食も終えた麦わら海賊団、サンジの料理に舌鼓をしたビビとナミは甲板に出て夜空の星空を眺めていた。アラバスタに至る旅の途中に何度も目にしてきた海の上から見る星空を見上げるビビは改めて皆と一緒に旅に出てるんだなぁという実感を味わいながら不意に見張り台にて周囲警戒を行っているレウスが目に入ると思わず笑顔になってしまった、自分には笑顔でいてほしいと言う彼の言葉を守ろうと無意識に思っているのかも知れない。そんな笑顔のビビに気付いたナミはそんなに旅が出来て嬉しいのかと思わず聞いてみた。
「そんなに嬉しい、私達と来れて」
「えっ?ええっ勿論。でもそれだけじゃないんです、レウスさんに言われたんです。笑顔で居てほしいって」
「レウスに?」
「ええ、お礼は如何したらいいのかって言ったら笑顔で居てほしいって、それも出来れば傍でって」
「へ、へぇ~……そんな事を言われたんだ……」
まるで口説くような言葉にナミは顔を強張らせ口角を痙攣しているかのようにヒクつかせた、まさかそんな事を言っていたなんて……っと小声で呟いたのをビビはしっかりと耳にした。そして僅かに生まれた悪戯心に従って少し悪い顔をした。
「今思うとあれって口説き文句みたいだったな~……もしかして、脈有りって良いのかな~……?」
「っ!!??な、何言ってんのよビビ!?レウスがまさかそんな……!!?私にも言って貰った事なんて……!?」
「フフフッやっぱりね。ナミさんもレウスさんの事、好きなんでしょ?」
悪戯が成功した子供のような笑顔を浮かべたビビは顔を真っ赤にしながら慌てているナミを見た、ナミは更に顔を赤くして軽いパニックになってしまっている。笑っているビビを見つめると少し冷静になったのか自分も、という言葉から何かを察した。
「ビ、ビビまさかアンタ……?」
「ええ。私好きです、レウスさんの事」
「え、ええええっ!?」
「ナミさん、仲間ですけど私達はライバルですね。負ける気、ないですから♪」
そう言って歩いていくビビにナミは慌てて何処かウキウキしている背中を追いかけた。
「えちょま、待ってよビビあんた本気なの?!」
「本気も本気です♪ボヤボヤしてると、頂いちゃいます♡」
「えええええっ!!!??」
「おーいビビちゃんにナミちゃん、何騒いでるんだい?」
「何でもありませんよレウスさん、私もそこに行って良いですか~?」
「いいよ」
「レ、レウスゥゥゥゥゥッッ!!!!」
「うわあああなんでナミちゃん激怒してんのぉぉぉぉおおおお!!!!!???」
「あらあら」
見張り台へと登っていくビビとそれを追い掛けながら怒っているナミ、そしてそんなナミに脅えているレウスを見ながらコーヒーを啜っているロビンは思わず笑いがこみ上げてきた。これは予想以上に面白い船に乗ったのかもしれない。
「楽しい航海になりそうね♪」
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