ONEPIECE 空の王者が海を征す
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空の王者、王と話す
「な、なんか川が見えた……。誰かが手振ってた気がする……」
目を覚ますと同時に意識を失っていた際の感想を述べるレウス、ビビに抱き付かれるとそれがちょうど身体の傷に響きあまりの痛みと開いた傷で気絶していた。気絶していた間は何かこの世の物とは思えぬような美しい川を目の前にしながらそれを眺めていたら川の向こう側から誰か、親しくよくしてくれた人が手を振っていたような気がした。一体誰なのか軽く気になるがこれ以上気に掛けていたら本気で向こう側に渡ってしまいそうな気もするので此処までにしておこう。
「レウス動いちゃ駄目だぞ?包帯も取っちゃ駄目だからな!怪我人は大人しくしてるんだぞ!」
「ああ解ってるよチョッパー。だけど怪我してるのに安静にしてない怪我人っているか?緊急でも無いのに」
「ゾロだ。あいつ動くな!って言ったのにトレーニングに行っちまったんだ!」
「……あいつらしいな」
まあ確かにゾロならやるだろうなと納得してしまう。話では東の海で世界一の大剣豪、クロコダイルと同じく王下七武海の一角である鷹の目のミホークと対決し全治2年の大怪我を負ったのに応急処置をされた身でそのまま魚人の一味と戦ったらしい。そこまでの重傷をしているのに幹部一人を撃破し敵一味の多くの魚人を一人で切り倒したとか……。ゾロに呆れながら感心するような複雑な気持ちを持っているとチョッパーが酷く申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「レウスごめん……俺がもっと良いランブルボールを作れてたらこんな大怪我しなかったのに……」
「おいおいチョッパー急かせたのは俺だ、寧ろあんな短い時間で作れただけ凄いってもんだよ。あのボールのお蔭で俺は戦いに勝てたしこの国は助かったんだぞ」
急ごしらえのランブルボールは確かにレウスに尋常では無い負荷を掛けた、苦痛に加えて甲殻が燃えるという余りにも不安定すぎる変形は精神的にも肉体的にもダメージを与え続けていた。意識さえも奪い闘争本能を搔き立てる劇薬、リオレウスその物の本能を引き出し竜から龍へと誘う危険な代物。同じ薬を使うチョッパーとしてはこんな物しか準備出来なかった事が申し訳無かったのだが逆だ、あれが無ければ終わったいた。
「結果が如何であれ俺は生きてるし、この国は無事なんだ。お前が気にする事なんてねえよチョッパー、今度はたっぷり時間を掛けて、俺用の奴作ってくれよ。ドクトルチョッパー」
「ド、ドクトルなんて言われても嬉しくねえぞこの野郎が♪任せとけよもうばか♪」
「(あーもう、なんでこいつこんなに可愛いんだろうな)」
くねくねと捩った身体から嬉しそう声でくれぐれも動くなよと忠告するとチョッパーは部屋から出ていった。一味の中で最も深手を負っているから念の為別室を借りているレウスだがたった一人でベットに横になっているのもそれなりに暇だ、周囲が煩くして身体に響かないようにと言う配慮なのだろうが少々寂しい気もする。これなら騒がしくても一緒の部屋が良かったと思わず呟いてしまう、なまじ船の上が騒がしかった性だろうか。
「……眠くもねえしな。ちょっと抜け出して……駄目だチョッパーに怒られる、んっ」
抜け出すのを諦めていると扉をノックする音がした、態々ノックしてくる辺りビビだろうかと思いつつ話し相手ぐらいになって貰えないかとどうぞ~と声を出す。扉の先にいたのは半分正解だった、そこに居たのはお見舞いの果物が詰まった篭を持ったビビとその父親であり国王であるコブラだった。思わず身体を起こそうとするとコブラはそれを止めそのままで良いと止める。
「レウスさんあの、ごめんなさい!私が思わずその……」
「ああもう大丈夫だよ、チョッパーが処置してくれたし。まあ川を見たけどね」
「あの世寸前だったの!?」
さり気無く以前フォローにならないフォローをしてくれた際のお返しをするレウスだった、軽いショックを受けるビビを慰めるように頭を撫でるとコブラは微笑ましい物を見ているかのような笑みを浮かべながらベット近くの椅子に座り口を開く。
「レウス君だったね、ビビが世話になった。今日はその礼を言いに来たのだ。娘を助けてくれた事を感謝するよ」
「辞めて下さい国王様、ビビちゃんを助けろって言ったのはナミちゃんで助けるって決めたのは船長ですよ。俺はそれに従って、偶にビビちゃんの相談を利いたぐらいですよ」
「だが君がウィスキーピークでバロックワークスの魔の手から娘を守ってくれなければビビは今ここにはいない。本当に、有難う」
頭を提げる国王にレウスはただただ止めてくれとしか言えない、しがない海賊風情に一刻の王が頭を提げるなどしていけないとコブラを止めようとするがコブラはやめない。
「何、私は国王としてではない。一人の親として、ビビの父親として礼を言っておるだ。これなら受け取って貰えるだろう?」
「……ズルいですね貴方も、ビビちゃんの親としての感謝なんて受け取れない訳は無いじゃないですか」
「もうお父様ったらレウスさんが困ってるじゃない」
「はははっすまんすまん」
ビビに咎められてもコブラは笑顔を崩さなかった。してやったりと言いたげな表情にビビはしょうがないなぁと言葉を洩らすのであった。
「私ルフィさんの方に行ってくるね、ごめんなさいレウスさんまた後で来るから!その時に一杯話しましょ!まだお礼とか言い足りないの!」
「もうバックブリーカーは勘弁願いたいかな」
「し、しないってば!レウスさんの意地悪!!」
顔を赤くして出て行く彼女を軽く笑いながら見送る、部屋には国王と海賊が一対一で残された。
「随分、娘は君を慕っているようだな」
「何。彼女はまだ少女です、もう直ぐ三十路のおっさんの冴えないジョークに寒がったんですよ。だから顔が赤くなる」
「私には兄を慕う妹に見えるが?」
「歳が10以上も離れた妹とは、犯罪の臭いがしますね」
「海賊の君がそれを言うのかね?」
「違いない」
流れるようなトーク、大人の男同士の話が何処か笑い所を合えて作るような話し方をしながら展開させられていく。
「君の怪我はかなり酷いと聞くが大丈夫なのかね」
「うちの名医が見てくれてますからね。多分大丈夫でしょう」
「そうか……これは戯言と聞き流してくれても良い。君さえよければこの国に残る気は無いか、この国の守護者として」
「えっ……」
思っても見なかった一言にレウスは凍り付いてしまった、こんな事を言われるなんて思っても見なかった。こんな選択種が飛び出てくるなんて。
「君はこのアルバーナを、いや国である人の命を救ってくれた。本当に君さえ良ければだが……この国で生きてみないか……?何れはビビの婿としてこの国を」
「ちょちょちょ待って下さいコブラ王?!ああもう頭が混乱しちゃいますよ!!……ふぅ……」
コブラの言葉を途中でぶった切り深く深呼吸をする、突然かつとんでもない発言に追いつけない。この国の守護者として生きる、自分はある意味国の英雄なのかもしれない。加えてビビの命を救っている、コブラにとっては国民の命と娘を救ってもらっている重要な人物であるのを否定しないがビビの婿というのは幾らなんでもオーバーすぎる。それに自分の答えなんて決まっている。
「そう言ってくれるのは有難いですけど俺は海賊と言う自由な生き方が性に合ってる、国って言うでっかい物を護る生き方も素晴らしいと思うけど俺に規律だとかは似合わない。それにビビちゃんは俺に勿体無い位の子ですよ、それにおっさんですし俺」
「……ビビが不満だと?あの子の何処に不満があると言うのだ?スタイルは良いし優しく気立ても良い、少しドジだがそこがまた良い自慢の娘の何処が不満だと?!」
言葉を選んで彼女に自分と言う人間は相応しく無いと言ったつもりなのにコブラの脳内ではビビと言う女性では物足りないと脳内変換されていた。包帯が巻かれている身体に掴み掛かりレウスを揺さ振る。
「お、落ち着いてくださいコブラ王!?っというかそんな揺さ振らないで俺まだ安静にしてろってチョッパーに!?」
「うちの娘の何処が不満だと言うんだぁあああ!!!!???」
「んな事誰も言ってねええええええ!!!??」
「レウスさん遅くなってごめんなさ……パパ何やってんのよぉぉぉぉぉぉっっっ!!!??」
この後、レウスのお見舞いにやってきたペルとチャカは部屋の前で大量のたんこぶを作ったコブラ王をいじけており、首を傾げながら中へ入るとそこにはプリプリと怒っているビビと苦笑いを作っているレウスがいた。
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