提督はBarにいる。
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山葵の美味さ・2
さて、親潮のリクエストは『ワサビを使った鶏肉料理』だったな。ワサビというのは存外、肉との相性が良いからな。脂の強い和牛のステーキなんかをワサビ醤油で食べたりするのはよくある組み合わせだ。ワサビの辛味が肉の脂で抑えられつつ、肉をサッパリとさせてくれるので中々相性がいいとされている。だが、個人的にはワサビとの相性ならば牛よりも鶏を推したいね俺は。
鶏の淡白な味わいは白身魚に近い所もあり、ワサビの辛味が味を引き立ててくれる。そんな相性の良さを活かした料理を作るとしよう。
《ワサビ風味が新しい!塩ワサビ唐揚げ》※分量4人前
・鶏モモ肉:600g
・塩:小さじ1
・ワサビ:大さじ1.5
・酒:大さじ2
・片栗粉:適量
さて、作っていこう。最近流行ってきている塩唐揚げだが、大体の味付けは塩とニンニク、そこに多少の生姜というパターンが多い。だが今回の味付けは塩とワサビ、それに臭み消しの酒のみ。『え、これだけで美味しいの?』と思われるかも知れんが、それは作ってみてからのお楽しみだ。まずはメインの鶏肉の下拵えから。鶏モモ肉から皮を外し、余分な脂と筋を取り除く。脂が多過ぎると折角のワサビの風味が飛んでしまうからな。鶏皮はまた別の料理に使うと良いだろう。鶏肉から皮と脂、筋を取り除き終わったら一口大の削ぎ切りにする。
塩とワサビ、酒を混ぜ合わせて調味液を作り、ボウルに入れてカットした鶏肉を入れて揉み込んで10~15分程置いて馴染ませる。
片栗粉をバットの上などに広げ、鶏肉に粉をまぶす。その際、粉の付きすぎを防ぐために軽く水気を拭き取るのを忘れずに。
後は180℃に熱した油で4~5分こんがりと揚げるだけ。それとワサビが苦手な人への朗報だが、ワサビの辛味は熱を通すとほとんど飛んでしまう。しかし風味は残る為、鼻へのダメージは無いに等しい。親潮はガッカリするかもしれんが、これはこれで美味しい『ワサビを使った鶏肉料理』である。
「さぁ、揚がったぞ。『塩ワサビ唐揚げ』だ」
「ワサビ味の唐揚げですか!初めて食べます……」
期待に胸を膨らませた親潮が唐揚げをかじる。サクッ、という歯応えの良い衣の下からは、塩で味付けされたシンプルな鶏の旨味と、ワサビ独特のあの風味が一緒にやって来る。これはこれで美味いハズなのだが、親潮は眉根を寄せて不満げだ。
「提督、辛くないですコレ」
「そりゃそうだ、ワサビの辛味は熱を通すと分解されるからな」
「そ、そんな……!」
どんだけショックなんだよ。そんなら、お次はワサビの辛味がバッチリ効いた、肉に合うソースを作ってやろう。
《鶏肉以外にも!焦がしネギワサビソース》
(焦がしネギ油)
・長ねぎ:1本
・鷹の爪:1~2本
・オリーブオイル(またはごま油):大さじ10
・生姜:1/2片
(ネギワサビソース)
・レモン汁:大さじ1
・醤油:大さじ1.5
・焦がしネギ油:大さじ1.5
・焦がしネギ:大さじ2
・ワサビ:小さじ2
※辛味が欲しければ生の刻みネギを足すか、ワサビを増やしましょう!
さぁて、作るとしましょうか。まずはソースの材料になる焦がしネギ油を作る所から。コイツは他の料理にも色々と使えるから、作れるなら大量に作ってストックしておいても良いぞ。
まずは長ねぎを薄くスライスする。青い部分も全て使う。生姜は細かいみじん切りにしておく。
フライパンに刻んだネギと生姜、鷹の爪、オリーブオイルを入れて点火。油が沸騰してくるまでは強火で加熱していく。
油が沸騰したら中火にして、全体的にきつね色になるまでかき混ぜながら加熱。きつね色になったら弱火にする。
弱火で加熱しつつ、きつね色を通り越して茶色くなってきたら完成。茶色くなってくるとすぐに焦げすぎて苦くなってしまうので注意しよう。
保存する時には茶漉し等を使って油とネギを分けて保存する。使い道としてはラーメンやチャーハンのような中華の薬味とか、サラダや冷奴のトッピング等々。さて、ネギ油が出来たら漸くソースに取りかかるぞ。とは言っても、ソースの材料を混ぜるだけなんだがな。アレンジとしてはレモン汁を柚子やカボス、すだちの絞り汁にしてみたり、胡椒や山椒等を足して辛味をプラスしても面白いぞ。
今回は親潮から鶏肉料理とリクエストが来ているので、鶏肉のソテーと、さっき剥がした鶏皮を焼いた奴にこのソースをかけて出すが、牛でも豚でも合うぞ。後は刺身用のマグロのサクを買ってきて、フライパンで表面を焼いてタタキにしてからこのソースをかけても絶品だ。
「はいよ、お次はこれだ。『鶏モモ肉のソテー・レモンワサビソースがけ』だ」
親潮の好みに合わせて、載せたレシピよりもワサビを多くしてある。鶏肉にたっぷりとソースを絡めてやれば、鶏の旨味を引き立てるレモンの酸味とワサビの爽やかな辛味、そして焦がしネギ油の良い香りががやって来る。そして鶏肉の肉汁と合わされば、飯でも酒でも止まらなくなる事請け合いだ。
「ふわあぁ……美味しいです!」
「そうか?なら良かったよ」
悲鳴をあげる親潮を眺めながら、俺は葉ワサビを塩揉みしていく。
「あれ?提督は何を作ってらっしゃるんですか?」
「あぁこれか?ワサビを買ったらオマケに葉ワサビを貰ったんでな。醤油漬けを作るんだ」
《歯応えと爽やかさが堪らない!葉ワサビの醤油漬け》
・葉ワサビ:1束
・緑茶:適量
・醤油:適量
・みりん:適量
・塩:適量
葉ワサビというのは読んで字の如く、ワサビの葉。俺達が普段食べているワサビは根茎と呼ばれる部分で、根っこと茎の中間のような部分だ。ワサビは葉を落としつつ上に伸びていくので、収穫の時期にならないと取れない稀少品だったりする。春先なら花ワサビでもイケるからオススメだ。
まずは葉ワサビを水洗いして根元を千切り、やや多めに塩を振って、まな板の上などでしっかりと塩揉みする。
塩揉みが出来たら大体85~90℃位の熱い緑茶をたっぷりと満遍なくかける。85~90℃のお茶なんてわかんねぇよ!という人も大丈夫だ。冷たい状態の急須に沸騰したお湯を注いで少し置けば、大体目的の温度になっているぞ。
お茶をかけたらふきんで葉ワサビを包み、包丁の背を使って全体を叩く。こうする事で葉ワサビを柔らかくし、味を染み込みやすくしている。
よく叩いたらふきんで包んだままの状態で雑巾を絞るようにしっかりと絞って水気を切り、密閉できるビン等の容器に入れる。そこに醤油とみりんを同量入れる。醤油とみりんの目安は葉ワサビがひたひたになる位まで。これでしっかりと蓋をして、2~3時間漬け込んでおけば食べ頃になるぞ。
「へぇ、初めて見ました」
「食べる時にはビンを振って、葉ワサビを刺激すると辛味が増すんだ」
まぁ、今仕込んだばかりだからすぐには食えんがな。親潮には他の料理を出してやろう。
「どうする親潮、そろそろご飯物にいくか?」
「ご飯もいいんですが……提督、ワサビを使ったパスタなんて出来ますか?」
親潮に尋ねられた俺はニヤリと笑ってみせる。
「勿論だ、作ってやるぜ?ワサビを使ったパスタ」
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