ONEPIECE 空の王者が海を征す
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空の王者、反乱の終わりを見る
その輝きは、太陽は破裂したかと錯覚するほどに眩く激しい閃光。本物の太陽の光を遮ってしまうほどの強い光がアルバーナの上空にて炸裂した、光の次に襲いかかるは爆音と衝撃波と爆風。高高度故に爆発による被害はないが爆風はアルバーナを駆け巡った、瓦礫と人々を容易く吹き飛ばしながら周囲へと満ちていく。砂塵を巻き上げ、人々は何事かと空へと視線を向けていく。
「あ、あ、ぁぁぁぁっ……!!」
「レ、レウス君まさかそんなっ……!?」
時計塔の頂上の内部にてそれを誰よりも近くで見ていたビビとペルは言葉さえ失い掛けていた。自分に任せてくれと力強く、猛々しく天へと砲弾を持って行って彼。この国を守る為に奮闘してくれた竜、砲弾を天へと運びそのままそれに巻き込まれてしまった。
「そんなっ……レ、レウスさぁぁぁぁぁああああああああん!!!!」
砂漠の姫の悲鳴が街全体へと広がっていく、大切な仲間が。この国を救う為に巻き込まれてしまった、絶望に満ち溢れた彼女は時計塔から飛び降りそうなのを必死に止めるペル。なんとか落ち着かせようとするが無理な話だった。ビビの此処までの旅路を彼は知らない、麦わらの一味がどれ程彼女の中で重い存在なのかを。
決して楽ではなかった旅、だけど心から楽しかった時間、そんな時間の始まりはウィスキーピークでMr.5のペアに襲撃されたのを助けられた事だった。船の上で仲間の為に動く彼の姿には何度も助けられたし不安そうな表情をすると決まって励ましてくれる暖かな言葉が心地よかったのに……そんな彼が今……。
虚ろな瞳で見上げる天に浮かぶ深い深い爆炎、それを力なく見つめる瞳が何かを捉えた。
「あれ、は……もしかして……?」
爆炎の中からゆっくりと落ちていく一つの影、人間ほどの影をビビの瞳が捉えた。もっと目を凝らして見て見ればそれはよく知っている人影だった、ペルに直ぐに行ってくれと言う。それに一瞬戸惑う彼だったが同じように空を見ると直ぐに理解し飛び立った。それを両腕に抱えるビビが急いで下へ叫ぶ、それに従い地上のナミ達の元へと降り立った。
「君達に船医はいないか?!直ぐに彼の処置を!!」
「お、おいそれってまさか!?」
「う、嘘だろおい!?」
「そ、そんな……!!」
『レウスゥ!!!』
そこに居たのは全身に凄まじい傷と火傷を負っているレウスの姿だった。ペルはすぐさまその場に寝かせるとチョッパーが処置を開始する。だがその彼の様子は素人目に見ても手遅れとしか言い様が無いような有様、ペルもこれを処置しきれるのかと不安で一杯だった。
「酷い傷だ……ッ!?た、大変だ息をしてない!!?」
「う、嘘だろチョッパー何とかしてくれぇ?!」
「ナ、ナミ手伝って!!俺一人じゃ駄目だ!」
「わ、解った!!」
全身に付き纏っている酷い倦怠感と痛みと苦しみ、そして異様な眠気。混濁する意識の中、閉ざされてようとしている意識を繋ぎ止めているのは何処かから聞こえてくる声と見えている光。少し手を伸ばせば届きそうな光、それでもピクリとも動かない身体、そのまま諦めてこの眠気に身を任せようとする度にそれを払い除けて迫って来る光に少し耳を済ませて見た。
―――お願いレウス死んじゃ駄目だ!生きるんだよレウスゥ!!
―――お願い息をして……!!戻って来て……!!
聞いた事がある声だ、友達と守ろうと思って人の声だ。一体なんで自分はその二人にそんな言葉を掛けられているのだろうかと理解出来ない。そもそもなぜ自分はこうなっている?意識に残っている記憶を掬いあげて見る、アルバーナ砲撃を回避する為に砲弾を空へと持って行った。ここまでは覚えているがその先が曖昧だ……。
何故……―――解。思い出した、ランブルボールの制限時間が来てしまい身体が硬直してしまったのだ。不安定かつ未完成な変形は身体に掛かる負担が凄まじかった、結果的に後数秒で薬の効果が切れる所で身体が動かなくなってしまった。そしてそのまま爆発に巻き込まれてしまった、だがまだ変形したままだった為に即死とはならなかったという事……。なんにせよチョッパーには感謝しなければいけないだろう、薬が無ければティガに勝てなかったし砲弾も運べなかった。礼を言わなければ。そして解った、自分は死に掛けているんだ、だからこうして言葉が掛けられている。
「……ッ、ガブッ!!」
「レ、レウス!!良かった意識が戻った!!」
激しくする呼吸、呼びさまれた意識と覚ます瞳。ゆっくりと開かれる視界に広がっているのはこちらを見つめるチョッパーとナミの姿だった。
「……俺、は……生きてるのか……?」
「うん、うん……!!さっきまで息もしてなかったけど、吹き返して良かったァァァ!!」
「心配したんだからぁぁぁっ……!!」
大粒の涙を流しながら目を覚ましたレウスに飛びつくナミとチョッパー、その際に痛みがするがその痛みが逆に意識をハッキリとさせる。なんとか二人を離させると傷ついた身体を何とか起こしながら建物の壁へと寄り掛かった。全身に激痛が走っているがそれでもティガの攻撃に比べれば大した事も無い。
「動いちゃ駄目だレウス、まだ治療は終わって無いんだぞ!?」
「悪いチョッパー……でも、反乱は……?終わって無いなら出来る事が……!!」
「大丈夫、あれを見て!」
まだ完全に止められて終わっていないならば働くと言うレウスを止めるようにある一点を指差した、人々の中を進むように目をやった先には一人の男が横たわっていた。それは間違い無くレインベースからアルバーナへと向かおうとした自分達の目の前に現れたクロコダイルに違いない。それを見た瞬間に理解すると同時に遅れながらに気付いた。ルフィが……あの王下七武海の一角であるクロコダイルを倒したのだと。そして同時に顔に触れる水に気付いた、天から降り注ぐ恵み、3年という期間も降らなかったと言われた雨が降っている。
「雨、だ……」
「ええ、反乱が終わる……!」
この反乱は王が人工的に雨を降らせ国から雨を奪ったという疑念から始まった物だった、その雨が再び、自然のままに国全体へと降り注いでいる。乾ききっている大地を潤すように降る雨は同時に反乱の終わりを告げていた。ビビの願いであった反乱の終結、それが今達成されたと言う言葉は彼の心を一気に安心させ心地よい眠りへと誘った。
この日、王下七武海サー・クロコダイルは海賊、麦わらのルフィに倒されアラバスタを乗っ取り理想国家の建国という野望は破られアラバスタと言う国は救われた。空から降り注ぐ恵みはその日、夜になっても尚国へと降り続けた。
「ビビ様、そろそろお休みになっては如何でしょうか。彼の看病なら私がいたします」
「いいのよイガラム、私がやりたいの。だってこの国の、いいえ私の仲間なんだもん」
「そうですか、では私はこれにて」
「ええ」
夜。戦いは終わった、ビビと共に国を救うために尽力した国の恩人達は王宮へと保護され手当てを受け今はベットに横になり眠りに付いていた。激しい戦いを潜り抜けてきた彼らには何よりも休息が必要、存分に眠る中ビビは一人の男が眠るベットの傍に座りながらその男、レウスの顔を見つめていた。
「本当に、有難うレウスさん……貴方のお蔭で……」
何処までも感謝の言葉を述べても気持ちを言い表せない。彼の行動が無ければ国民の命は散っていた、そしてあの行動が無ければ皆が戦いを中断し話を聞いてくれもしなかったかもしれない。一体どんな事をしたらレウスの行動に報いるだけの礼をする事が出来るのだろうか……。
「如何したら、貴方は喜んでくれます……?」
思わずそう口に出してしまった、眠っている彼に、聞こえない筈なのに。そんな時、頬を撫でる感触がした。俯いていた顔を上げると身体を起こしたレウスが自分の頬を撫でていた。
「そうだな……お姫様に笑顔でいてくれたら嬉しいかな?」
「レウスさん……本当に、よかったぁっ!!」
思わず嬉しさから抱き付いたビビを受け止めるレウス、そのままベットに沈んだ彼は軽く彼女の背中を撫でる、が
「がぁっ身体がぁっ!!?」
「ハッ!!?ご、ごめんなさいレウスさん!!し、しっかりしてレ、レウスさぁぁああああんッッ!!???」
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