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決して折れない絆の悪魔

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戦いの後

「何故あのような真似をした」
「あのような、とは?」
「惚けるな未来、あのISと戦闘をした事だ!」

グレイズ撃破後、呼び出しを受けた一夏とミカは大人しくそれに従い千冬の元へとやってきていた。そして開口一番に言われた事は何故アリーナに突入したかという事だった、だが二人は全く怒られているという実感がなかった。

「鈴を助ける為に決まってるじゃん」
「三年生が既にアリーナのロック解除を行おうした、そして直に教員の部隊が突入する手はずだったのだぞ。それを貴様らは自分達の命を態々危険に晒した意味を理解しているのか!?」
「危険、ね……それじゃあ聞きますけどあの時俺とあの無人機、グレイズの斧を止めてなかったら鈴はどうなってました?」
「今は私が聞いている」
「いいから答えろよ」

一歩も引かないミカに千冬は思わず舌打ちを打ってしまった、確かに斧は鈴に向けて振り下ろされた。だがそれでもISの防御機構がある。鈴のISのSEは十二分にあった、防御は可能だったはずだ。

「最悪絶対防御で守られていただろう」
「……はぁ呆れた、アリーナのシールドをぶち破るあの斧をISの絶対防御程度で守りきれると思ってるの?」

それに思わず千冬ははっとした。確かにISには操縦者を守る絶対防御というシステムがある、だがそれでも限度というものがある。アリーナのシールドを破壊出来るあの攻撃を受けて絶対防御が作動したとしても鈴は良くて重症、最悪死んでいただろう。ISに関わる者がよく起こす勘違いが絶対防御を過信するという事だ、絶対的なシステムなどない。それなのにまさか千冬までそう思っていたとは……一夏はやや幻滅したような瞳を向ける。

「それに実際問題如何だ、俺とミカがあのグレイズをぶっ潰す間に教員部隊とやらは突入してきたか?」
「……出て来ていない」
「俺達のおかげで素早くアイツを潰す事が出来たって訳だ。それに人を殺した事がない(・・・・・・)教員の皆さんじゃ腕を切り落としたり胸にニードルを打ち込む事が、出来ますか」
「―――ッ!?」

一夏の言葉は千冬にとって衝撃的過ぎる事だった。殺した事がない、その言いようはまるで自分達は人を殺した事があるような言い方だった。一時軍で訓練の指揮を執っていた千冬ですら人を殺した事はないし絶対に躊躇する、人を殺すのはそれほどに恐ろしい事なのだ、それなのにこの少年たちは……それをやった事があるのか……?

「お前、達、人を……」
「あるよ。俺」

思わず言葉を失った、自分よりも10個ほども年下な少年がそんなことを経験しているというのか……?

「い、一夏お前は……!?」
「俺はない、だけど俺は必要であれば殺す。何人でも、幾らでも殺してやる……」

冷たく冷え切った冷酷な暗い瞳の光っている意志、ただの言葉なのにそれが嘘のように感じられない……実際に一夏はミカが振るった斧を更に強く振り下ろしてまだ無人機と反応していない時点で右腕を両断している。本当に必要であれば躊躇なく殺すだろう、彼の言葉に嘘などない。

「俺達は必要なら罰は受ける。だけどな、アンタが鈴の命を軽く見たのは許せねえ」
「わ、私はそんなことは……」
「絶対防御で防げるって思ってた時点でそうだっつってんだよ。規則だなんだのって文句垂れる前にな、どんだけてめぇらが情けないか実感しやがれ!!何の為の教師だ、俺たちが対処した方が早かったじゃねえか!!けっやってられねえ、行くぞミカ」
「ああ」

千冬へと言いたい事を言い切ると一夏はそのままミカを連れて去っていく、残された千冬は消沈したまま動けなかった。命を軽く見ている、自分が……?大切な生徒の命を……?と小さく呟きながらただ部屋の中で魂が抜けたように立ち尽くし続けた。確かに二人が行った行為は危険だ、命を捨てるかのようなものだったかもしれない。しかしその行為のおかげで鈴は助けられた、それにあのままグレイズを放置すれば暴れまわり学園の生徒に大きな被害が出たかもしれない。それを倒した二人は褒められるべきなのかもしれない……。

「私は……私は……」


「腹減った」
「そうだな……結構動いたもんな、食堂行くか」
「あっ一夏、ミカっ!」

食堂へと足を進めているとそこへ自分たちを探していたのか鈴が肩で息をしながら駆け寄ってきた。身体を見る限る怪我はなさそうだ、それに安心しつつ鈴を見る。

「その、えっと……」

顔を赤くさせながら俯き、指を押し付けあっている鈴。何か言いたいか言えないよう、がミカは容赦なく言いたい事あるなら早くっと急かす。鈴はぅぅぅ……呻きつつ覚悟を決めたか赤面した顔を上げつつできる限りの笑顔を作って言った。

「一夏、ミカ、助けてくれて、ありがとうね!あの時、二人が斧を止めてくれなかったら私、たぶん死んでたわ……あいつ、自力でアリーナのシールドを破ってきたんだから……絶対防御だって、完全じゃないもの。だから本当に感謝してるの、ありがとう!」

眩しいほどの笑顔を向けてくる鈴に一夏は身体がむず痒くなってきた、ミカも少々照れくさそうにしている。そして同時に一夏は千冬への失望を深めた、当事者の鈴は絶対防御が完璧でないこととグレイズの危険性を理解していた。それなのに教員である彼女があれなのは如何なのかと。そんなことを思っているとミカは先に食堂へと歩き出した。

「先、行くから」
「ああっミカ!?」
「ああおい!ったくあいつは……」

ため息を付きつつ鈴の肩に手を置いた一夏は笑った。

「一緒に、飯食おうぜ」
「ええ、そうしましょう!」 
 

 
後書き
次回予告

セシリア「順調に進んでいく毎日、充実した生活

こんなに気分が良いのは昔では考えられませんわね。

ええっまた転校生ですか!?今度は二人も!?

お一人はドイツの方でもう一人は……ええええ男ぉぉっ!!!?

次回、決して折れない絆の悪魔、第18話

襲来、銀と金

本当に男性なのですか?」
 
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