FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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愛しているから
前書き
最近体を鍛えるために腹筋ローラーをしてるのですが、昨日立ちコロにチャレンジした瞬間腹筋がピキッ!!っていって、いまだに痛くて筋トレができなくなってます(笑)
てかなんで痛いのかもわからないからどうすればいいのかわからない・・・仕事前のラジオ体操にも支障が出るという(笑)
先程窓から見えたその姿を、ようやく近くで捉えることができた彼はどこか嬉しそうな表情を浮かべる。
「久しぶりだな、ベリー」
「うん。ホント・・・久しぶり」
しばしの沈黙。懐かしい仲間との再会にも関わらず、二人の間に流れる空気は非常に重い。理由は明白だった。仲間だったとはいえ、一方は相手を裏切り、裏切られた者。その二人が和気藹々と話をすることなどできるはずもなかった。
「その・・・なんて言えばいいのかな・・・」
飛んできたのはいいが、何から話せばいいのかわからず、言葉に詰まる。
「グラン」
固まっている青年を呼ぶと、自らの体を預けるように抱き付く少女。これにグラシアンは驚いたが、葛藤の後彼女を同様に抱き締める。
「会いたかったよ、グラン」
涙混じりの声に何も言わずにただ抱き締める青年。それからしばらくその状態のままでいたかと思うと、彼女はゆっくりと彼から離れる。
「元気そうでよかった」
「まぁ、おかげさんで・・・」
彼女を裏切ったことにより自身は正規ギルドに・・・それも、当時の最強ギルドへと所属することができたグラシアン。彼女たちの尊い犠牲のおかげで、彼はフィオーレを代表する魔導士へとなった。
今から三年前、ある五人組の盗賊団がフィオーレを賑わせていた。
「あっちに逃げたぞ!!」
「進路を塞げ!!」
前方を逃げていく二人の男。それを追い掛けていく評議院。その様子を建物の影から、別々の場所で三人の人物が観察している。
「そろそろだな」
『じゃ、打ち合わせ通り行きましょ』
『了解』
持ち運びできるほどの大きさの魔水晶で打ち合わせをした後、魔力がなくなったそれを証拠隠滅のために粉砕する紫髪の男と、茶髪の女性と、桜髪の女性。
三人はそれから、それぞれの持ち場へと動いていく。
タッタッタッタッタッ
「こっちだな」
「そうだな」
全速力で走っているにも関わらず、一切息を乱すことのない二人の男は、目的の曲がり角の前に来ると、体を切り返しそこに入り込む。
「バカめ、そこは行き止まりだ」
二人が逃げ込んだその先は行き止まりとなっている。敵のミスによって、世間を騒がす盗賊たちを一網打尽にできると思った評議院たちは、そこに雪崩れ込むように入っていく。
しかし、その直後にその場に広がっていた景色に思わず言葉を失う。
「キャー!!助けてー!!」
何もないはずのその場所で響き渡る女性の悲鳴。その正体は、先程逃げていった二人の男が、人質として捉えた人物のものだった。
「そこで止まれ!!」
「こいつがどうなってもいいのか?」
「「「「「なっ・・・」」」」」
人質を取られて動けなくなる評議院。彼らは説得を試みるが、それこそが彼らの狙いだった。
「はい、お疲れさん」
「お休みぃ」
「「「「「!?」」」」」
後ろから聞こえた二つの声に動揺し、振り返る。すると、そこには二人の少女たちが立っており・・・
「ガッ!!」
背を向けていた評議院たちを次々になぎ倒していく。
「グラン!!もういいよ」
「早いとこ逃げよ!!」
全員倒されたタイミングで人質だった女性が別の姿へと変化していく。それは、先程彼女たちを連絡を取っていた紫髪の男だった。
「まさか・・・」
「騙された・・・」
彼らは初めから人質を奪ったように見せかけて、後ろから敵を奇襲するつもりだった。彼らの手のひらで踊らされていたことに気付き、奥歯を噛みながら、離れていくその背中を見ているしかできなかった。
「いやぁ、今日も大量だったな」
「そうだな」
山賊や海賊とは異なり、自らの領域で戦うのではなく、街に降りていき標的を襲い奪い取る。そのスタイルができる彼らは、わずか五人ではあるが、皆洗練された実力者たちであった。
「でも、この作戦はしばらく使えないな」
中でも紫髪の青年・・・グラシアンは一番の実力者であり、この一団の中心的役割を担っていた。
「大丈夫だよ。策なんかいくらでも思い付くし」
「忘れた頃に使えばいいじゃん」
彼と同い年くらいの二人の少女たちはあっけらかんにそう言う。
「それに、これだけあれば当分働かなくても大丈夫だろ」
「その間に新しい策を考えようぜ」
少女たちと同じように楽観的に言葉を放っているのはグラシアンよりも年上と思われる二人の男。それを聞いた中心人物である青年は、大きくため息をついていた。
「グラシアン!!街でご飯買ってきて!!」
「また俺かよ!!」
「だって俺らじゃ顔バレてるし」
他者へと変化することができるグラシアンはこうやって雑務を頼まれることが多い。ただ、その分街に降りる機会も多くなるため、自分なりに楽しむこともできるから本人も悪い気はしていない。
「これとこれを買って・・・」
先日別の街で見掛けた女性へと変化して買い物を進めていく青年。頼まれたものもほとんど終わりかけたその時、目の前に進路を阻む者が現れる。
(なんだ?)
メモを見ていたため顔は見ていなかったが、誰かが前に立っていることは気配でわかった。なので、道を開けようと脇に避けると、相手も同じ方向へと動いて、さっきと同じ状況になってしまう。
(邪魔だよこいつ!!)
思わずイラッときた彼は睨み付けるように顔を見上げる。すると、そこには自身を鋭い眼光で見据える、長い黒髪におだんご頭の女性が立っていた。
(こいつって確か・・・)
彼はその人物のことを知っていた。以前、同じように街で買い物をしていた時、その街に備え付けられていた魔水晶ビジョンで見掛けた顔。
(剣咬の虎のミネルバ・・・だっけ?)
その当時力を付け始めていた魔導士ギルドの中心的人物。その人物が目の前にいることに、ちょっと驚いたが、自分には関係ないと関わらないようにと避けて通ろうとする。
「幻竜のグラシアンだな」
「!!」
脇を通り抜けようとしたその時、肩を捕まれるグラシアン。彼は名前を呼ばれて驚いたが、ミネルバは動じることもなく話を続ける。
「妾は剣咬の虎のミネルバ。そなたを勧誘するためにここまで来た」
「勧誘?」
一体何のことを言っているのか、訳がわからずに入るとミネルバが詳細を説明し始める。
「妾は最強のギルドを作りたい。そのためには、そなたの力が必要なのだ」
「お断り」
ようやく状況を理解したところでの即答。彼には他に選択肢などあるわけがなかった。犯罪者である自身が正規ギルドに所属することなど、できないとわかっていたから。
それに、今一緒に入る仲間たちを裏切ることなど、その時の彼には絶対にできなかった。
「・・・んん」
その日の夜、食事を終えて眠っていると、不意に目が覚める。辺りはまだ暗く、もう一眠りできそうだったが、一度水が飲みたいと川へ下っていく。
その時に彼は出会った。ある生物に。
「なんだあれ?」
川の付近で翼を広げ、空中に浮いている動物。一瞬鳥かとも思ったが、シルエットが明らかに違うことから、興味を持った彼は駆け寄ってその正体を確認しようとする。
「猫?」
そして姿を確認すると、思わずそう呟いた。その正体は、どこからどう見ても猫だったからだ。
「トラみたいな模様だけど・・・猫でいいんだよな?」
黄色と黒の縞模様になかなか確信を持てなかったが、気になって仕方がない彼はバレないように接近し、両手でガッチリと掴まえる。
「ギャッ!!」
捕まえられた猫と思われる生物は、グラシアンの姿を見てビクビクとしている。
「お前・・・猫なの?」
「猫だよ!!たぶん・・・」
なぜ何事もなく会話をできるのか自分でも不思議で仕方がなかったが、その時の彼は何かを感じ、その生物に色々と質問したりしていた。
それから、しばらくするとあることを思い出す。
(そういえば妖精の尻尾の火竜って、こんな感じの猫連れてるんだよな?)
同じ滅竜魔導士としては、目の前に現れたかこの生物が気になる上に、説明はできないが自分の物にしたいという衝動に駆られた。
「よかったら、俺の仲間にならねぇ?」
「別にいいけど?」
お互いに何を感じたのか、ものの数分で心を開き、隣にいることを選択した。それは言うなれば運命のようなものだったのだろう。しかし、それが事態を大きく変えることに繋がっていく。
「セイバーにも、猫を連れた滅竜魔導士がおるぞ」
先日拾った猫にキセキと名前を付けて、共に生活を始めたグラシアン。それから数日経ったその日、彼の元に再びあの女がやって来た。
「よくここがわかったな」
次の行動に移すための準備のため、山の奥深くで着々と態勢を整えていた彼の前に現れたミネルバ。夜遅いこともあり、仲間たちは寝静まり、彼だけが起きているところに狙いを定めてやって来た様子だった。
「そいつは大切な存在か?」
「当たり前だろ」
膝の上でスヤスヤと眠る猫を撫でながら、聞くまでもない問いに無表情で答えるグラシアン。しかし、それを聞いたミネルバは、小さく口角を上げてみせた。
「だが、そやつが病気になったらどうする?」
「え?」
「一体どんな生物かもわからんそいつを、そなたたちで助けられるか?」
「それは・・・」
キセキが何という生物なのか彼には・・・いや、わかっているものはほとんどいない。その事実にようやく気付いた彼は、ひどい恐怖心に狩られる。
「だが、妾たちのギルドに来ればそんな不安はなくなる」
「けど・・・」
犯罪者である自分が正規ギルドに入ることはできない。それは何にも変えることのできない事実。そう思っていた。
「そなたの仲間たち、奴等を評議院に突き出せば、そなたには執行猶予がつく」
「そんなことできるわけないだろ!!」
以前も同じような提案をされ、あっさりと却下した。だが、今回はその状況が少し変わっていた。
「もし断れば、そなたも仲間たちも全員死ぬ」
「何を言って・・・!?」
ミネルバが手を挙げると、林から体格のいい黄緑色の髪をした男と、赤い帽子に仮面を付けた男を筆頭に、数十人の魔導士たちが現れる。
「妾たちはそなたたちの討伐にやって来た!!だが、ここで仲間たちを差し出すのであれば、そなただけは妾たちの仲間として歓迎しよう」
「もし断れば?」
「そなたも仲間たちも、全員死ぬ」
以前から何度も依頼を受けた強者たちが襲撃に来ることはあった。しかし、今回は数が明らかに多い。それだけ彼女が本気だということが、すぐに感じ取れた。
「・・・命だけは助けてもらえないか?」
「安心しろ。評議院に渡せば、長い牢生活が待っているが、命だけは助かる。そこは保証しよう」
「わかった」
多少の迷いはあったものの、今の状況を打破するにはこれしかないと腹をくくり、仲間たちを攻撃し、評議院へと引き渡した青年。それから彼は、ミネルバの言っていた通り執行猶予を得て、剣咬の虎の一員となったのであった。
そして現在・・・
「そういえば、お前まだ牢に入るんじゃなかったのか?」
「ホッパーさんに助けてもらった。今の私のリーダーね」
ようやく以前と同じように会話ができるようになってきた二人は、近くのベンチに腰掛け近況を話し合っている。
「他の奴等は?」
「・・・ハルとユウは死んじゃった」
「え?」
脱獄したのは一人だけなのかと確認したところ、信じられないような発言に思わず耳を疑う。それに対しイザベリーは、悲しそうな表情を浮かべていた。
「ハルは元々病気だったみたい。でも、私たちも知らなかったし、本人も言い出さなかったから・・・捕まって二ヶ月目にポックリと逝っちゃった」
「マジかよ」
あまりの出来事に罪悪感が激しくのし掛かってくる。さらに、追い討ちをかけるように彼女はメモを渡す。
「あと、これはユウのそばから見つかったんだって」
メモを受け取り、中身を確認する。そこには血の文字で、こう書かれていた。
《お前は絶対許さない、呪い殺してやる》
最後の怒りを込め、自ら命を絶ったというかつての仲間に、さらに心が締め付けられる。だが、そんな彼にイザベリーは優しく話しかける。
「私はグランのこと、全然恨んでないよ」
「は?」
彼女からは一体何を言われるのかとビクビクしていたところでのその発言に、彼は耳を疑った。
「グランにはずっとお世話になったし、あの時のグランの行動が私たちを助ける唯一の手段だったんだよね」
実はイザベリーは牢の中でこうなった経緯を聞いていたらしい。そのため、自分たちを助けるために悪役になった彼を恨むことはできないと、そう思っているらしい。
「ヒナもそのこと知ってたから、逃げた先できっとグランのことを思ってるんじゃ――――」
「だったら!!」
勢いよく立ち上がり、隣に座る少女を見下ろす。彼の拳はプルプルと震えていた。
「だったらなんでまたこんなことしてるんだ」
自分のやった行動の意味を知っていながら、またしても悪い道を突き進もうとして入る彼女に、怒りが込み上げてくる。そんな感情を抱いてはダメだと、自分でもわかっているのに。
「なんで?そんなの簡単だよ」
彼と同じように立ち上がると、青年を下から見上げるように視線を上げ、ニッコリと微笑む。
「私たちを引き裂いた、この国を変えたいの」
「引き・・・裂いた?」
引き裂いたのは自分であるのに、彼女は自分を攻めず、あろうことか関係ない国王を殺害しようとしている旧友。それを止めたいのに、彼には止める権利があるのかわからず、何も言えない。
「だって私、あなたのことを愛していたから」
胸に手を当て、頬を赤らめながら告白する少女。それに対し、グラシアンはただ呆然としているしかなかった。
後書き
いかがだったでしょうか。
オリキャラ同士の恋愛とか誰得!?って感じですが、この形が収まりが良かったので、やってみることにしました。
次はもうちょっと展開を進めていこうと思います。
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