NARUTO日向ネジ短篇
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【繋がる心の軌跡】
前書き
ネジ中心の、日向家短編の詰め合わせのお話。
終わり頃、新生うずまき一家成り立ての追加文。
※ネジ9~10、ヒナタ8~9、ハナビ3~4歳くらいの頃。
日向家の道場にて。
「───父上、やめてくださいっ、ネジ兄さんは何も悪くない…!!」
ヒナタは、父である日向宗主のヒアシの着物の腕の裾を握り締め涙を浮かべながら懇願した。
……宗主とヒナタの付き人のコウが見守る中、従兄のネジとの組手中にヒナタはネジから強い憎しみを向けられ、傷つけんばかりに攻め込まれた時、宗主ヒアシがネジの額の日向の呪印の力を行使し、突如頭が割れそうなほどのあまりの激痛に襲われたネジは絶叫を上げて仰け反り、呪印の刻まれた頭を抱えて悶え苦しむその様子にヒナタは背筋が凍る思いがした。
「このままじゃ、ネジ兄さんが死んでしまうっ、やめてください…!!」
娘からの懇願に日向の呪印の行使をヒアシは止め、ネジはまるで糸の切れた人形のようにバタりと仰向けに意識を失って倒れ込む。
(また、わたしのせいで……今度は、ネジ兄さんが──)
ヒナタは以前にも、自分のせいでネジの父ヒザシが日向の呪印で苦しむのを目にしたため、強く自責の念にかられた。
「コウよ、後の事は任せる」
「は、はい、ヒアシ様……」
宗主はヒナタの付き人に命じて、その場を後にした。
「ヒナタ様、後は自分に任せてお部屋へお戻り下さい」
「いやです……わたし、ネジ兄さんのそばにいたい」
「しかし、目を覚ました時にあなたが傍に居ては、何を仕出かすか──」
「いいの……悪いのは全部、わたしだから……」
「とにかく、休ませる部屋へ移りましょう」
コウはネジをそっと背負って、ヒナタと共に休める部屋へ移動し、布団を敷いて意識の無いネジを寝かせた。
「コウさん…、ネジ兄さんのことは、わたしに任せて下さい……」
「いえ、ですが」
「お願いします。……何があっても、わたしの責任だから」
「──判りました、部屋の近くに控えておりますので、何かあればすぐお呼び下さい」
……ヒナタ一人が見守る中、暫くしてネジが微かに身じろいだ。
「ん……ッ」
「──あ」
「………? ───ッ!」
顔をのぞき込んできたヒナタと眼が合った瞬間、ネジは驚きの表情を浮かべて弾かれたように上体を起こす。
「うッ……!」
その直後、ネジは片手で痛む頭を押さえる。
「ね、ネジ兄さん、急に起き上がったらダメです…。まだ、横になってないと……」
「何故、お前が──・・・あなたが、俺の傍に居るんです」
キッ、とネジに鋭い視線を向けられ、怯えたヒナタはつい目線を下向かせる。
「わたしの……わたしの、せいだから……」
「出て行ってくれますか。あなたが傍に居ては、俺は何を仕出かすか分からない」
「構いません…。悪いのは全部、わたしだから……」
「──あなたの付き人が近くに控えているならば、俺があなたに何をしようとした所で、すぐに飛んで来るのでしょうね」
ネジは眼を閉じて自嘲するように口元に笑みを浮かべる。
「あなたが出て行かないのなら、俺が出て行きます」
布団から立ち上がったネジは部屋を出て行こうと歩き出したが、目眩を起こして前のめりに倒れかかった所を咄嗟にヒナタに抱き支えられる。
「ネジ兄さん、大丈夫──」
「……ッ、触るな!」
「っ!」
嫌悪感を覚え、すぐヒナタの両腕を払い除けたネジは、憎しみの一瞥を向けて足早に部屋を後にする。
「……ネジ、お前ヒナタ様のお気持ちを──」
部屋を出てすぐ、ヒナタの付き人のコウと出くわすが、ネジはそれを無視して顔をしかめたまま通り過ぎる。
(あんな小娘など、知った事では───)
「……あ」
注意力が散漫になっていた為か、気配を察する前に廊下の突き当たりで小さな女の子と鉢合わせる。
「ハナビ……様…?」
「ね、ネジ、兄……だいじょうぶ、なの?」
「──何が、ですか」
「だって、その……すごく、痛そうだったから」
ヒナタの実の妹のハナビは、6歳上の従兄を心配そうな表情で見上げている。
「盗み見ていたのですか。姉妹揃って、余計な──」
「なんで、父上に呪印、使われたの? 日向の、呪印は……分家の人をしたがわせるためって、聞いてるけど…」
「あなたにはまだ、憎しみという感情は分からないでしょうね」
「にくしみ……?」
ネジは冷たい表情で、もう一人の従妹のハナビを見下ろす。
「俺は…、あなたの姉君に憎しみを向けたんですよ。簡単に言えば、組手以上に傷つけようとした」
「なん、で?」
「先程から言っているでしょう。憎いからですよ、あなたの姉君が。…今のハナビ様に分かりやすく言えば、嫌いなんです」
「どうして…? なんで姉さまのこと、キライなのっ?」
「聴かされていないのなら、話す気はありません。それとハナビ様……、分家の俺などに気安く声を掛けるべきではない。姉君があの調子では……あなたが次期日向宗主に相応しくなるでしょう。──ハナビ様に、日向の才がおありなら」
「ヒナタ姉さまは、つよいもん…っ!」
「フ……そう見えているなら、あなたの眼は曇っている」
「なんなの、ネジ兄っ。ヒナタ姉さまキラってるあんたなんか、あたしもキライっ!」
「ヒナタ様の妹君に好かれようなどとは思いませんよ。…先に失礼させて頂きます」
ハナビに恨みがましい眼で見られようと、ネジは微塵も気にせずその場を後にした。
※一部、中忍試験予選試合の数日後、供を連れていないハナビに一人呼び出されるネジ。
「───ヒナタ姉さまが分家のあんたなんかに殺されそうになったのに、中忍試験にはあくまで口出すつもりはないって日向の呪印の力を使わないなんて、父上はどうかしてる……。あたしがその術を知っていたら、今この場であんたを死ぬほど苦しめてやるのにっ」
「まだ、伝授されていないのですか? 今すぐにでも教わり、宗家としてのお力を存分に行使すると良いでしょう。それによって俺が死んでも、誰も不思議には思いませんよ」
「教えてくれないのよ父上が……! 姉さまだって教わるつもりも使うつもりもないって…っ」
「───。それなら、あなたのお父上自身が呪印を使うよう仕向けましょうか。俺がハナビ様まで殺しかけたなら、さすがにヒアシ様も黙ってはいられないでしょう」
「………。それ、いい考えだわ。ひと思いにやったら?」
「フン……怯えている子供相手にやる趣味は無い。ヒナタ様の時は、あくまで試験に沿ってやりましたから」
「…! あたしは怯えてなんかないっ!」
「どうでしょうね、身体が震えていますよ、ハナビ様」
「これは…怒りで震えてるのよ……。あんたなんか、あんたなんかいつか犬死にしてしまえばいい!!」
この直後ネジに柔拳を向けるハナビだが、ネジは躱すばかりで相手にせず、その内ハナビは疲れ果て、ネジはその場を後にするだけだった。
※サスケ奪還作戦後のネジの病室にて
「───俺の意識が戻るまで、ヒナタ様はずっと付き添っていたというんですか? 一度も、帰らずに」
「うん、着替えとかはハナビがコウさんと一緒に持って来てくれたりしてたの。父上も、許して下さったし」
「……何故、です」
「え?」
「何故、俺などにそこまで……。俺は、あなたに理不尽な憎しみを向けて、あなたを……殺そうとまでしたのに」
「わたしなら、大丈夫です。ネジ兄さんもこうして意識を戻してくれたから」
ヒナタは心底安堵した表情で微笑みを向けてくる。
「いや、そういう事では───」
「あーっ、ネジ兄起きてる!?」
「あ、ハナビ、父上も」
「ちょっとネジ兄、ヒナタ姉さまをどれだけ悲しませれば気がすむのよ、この死に損ない! これでも一応あたしも心配してやったんだからっ!」
ハナビはネジの病室に入って来るなり声を上げた。
「──ハナビ、鎮まれ。ここは病院だ、場をわきまえなさい」
「す、すみません、父上……」
「ネジよ、重傷からの意識が戻って何よりだ。…とはいえ、今しばらく入院の必要がある。とにかく今は、身体を治す事だけを考えよ」
「はい……ヒアシ様」
「退院の際には、体力が回復するまで本家に居ると良い。離れのお前の家は、他の者に管理させよう」
「……お心遣い、痛み入ります」
「では、私はこれで失礼する。…行くぞ、ハナビ」
「えっ、もう…!? 父上、わたしはもう少し、ここにいたいです」
「そうか…、好きにしなさい」
ヒアシは病室を出る際、ネジに一瞥を向けたその眼差しは、一瞬ネジの父ヒザシのように優しげだった。
「──・・・」
「……ヒナタ姉さま、ちょっとの間ネジ兄と二人きりにさせてくれない?」
「うん、いいけど……。じゃあネジ兄さん、ちょっとの間わたしも失礼しますね」
「あぁ、はい……。それでハナビ様、俺に何か御用──」
ハナビはヒナタが病室を出て行ったのを見計らって、急にネジの横たわるベッドの上に身軽に乗っかった。
「……!? 何のつも──」
少し驚いた様子のネジに構わず、ハナビはほとんど馬乗りの状態からネジの左肩に右手を押し当てた。
「──・・・ッ」
「痛い? そうだよね、左胸近くに大穴空けられたんだもの。…そんなに強く押してないけど」
「………」
「日向の天才が聞いて呆れるよねぇ、まぁ特別上忍クラスが相手じゃ仕方ないかな」
痛みで少し顔を歪めているネジに、ハナビは冷たい無表情でネジの左肩を軽く掴んだまま続けて述べる。
「ネジ兄が里の仲間のために命かけるとは思わなかったけど・・・──どうせなら、死んで帰って来てもよかったんじゃないの? ネジ兄にあんな事情があったにしても、あたしはまだヒナタ姉さまにしたこと許したわけじゃないから」
「そう思うなら……、今この場であなたが俺を殺せばいい。簡単なものですよ、今の俺を殺すのは……」
「見くびらないでよね。弱ってるあんたをこれ以上どうにかする趣味なんてない」
不敵な笑みを口元に浮かべたネジに、ハナビは眼を逸らさないまま左肩から右手をふと離す。
「……ごめんなさい、言い過ぎた。ちょっとイジワルしたかっただけ。大体、ネジ兄をどうにかしたって姉さまが喜ぶわけないし。これ以上……ヒナタ姉さまを悲しませてどうするのよ。ネジ兄が瀕死で運ばれて来てからずっと涙流して、助かるように祈ってたんだから」
「────」
「そう簡単に死ぬのは許さない。生きて姉さまとあたしのこと守り続けてみせてよね」
「……言われるまでもありません。それはそうと……そろそろ俺の上から降りてくれませんか。右の腹部が圧迫されて、少々痛むんですが」
「あ、ご、ごめんっ。……とにかくそういうことだから! じゃあネジ兄、またお見舞いに来てあげるねっ」
ハナビはネジの上から素早く降りると、それまでの無表情から子供らしい笑顔を見せて病室から出て行った。
※ナルトがジライヤと共に修行の旅に出てから、ヒナタがネジに頼み修行をつけてもらうようになってからの話。
日向家敷地内にて。
「───ヒナタ様、今日はここまでにしましょう」
「はい、ありがとうございましたネジ兄さん。また、よろしくお願いします…!」
「……ネジ兄、ちょっといい?」
「何でしょうか、ハナビ様」
「あたしにも、修行つけてくれないかな。時間、ある時でいいから」
「……良いのですか、俺で」
「ヒナタ姉さまに、ちゃんと修行つけてあげてるじゃない。あたしも日向の天才のご指南、受けようかなって」
「妙な姉妹ですね、あなた方をあれだけ遠ざけた俺に修行を請うとは」
ネジはふと眼を閉じて微笑する。
「少なくとも、前よりは話しかけやすくなったと思う。やっぱりあの、うずまきナルトのおかげなんでしょう?」
「──実際、それだけではないですけどね」
ナルトとの試合後、日向宗主のヒアシから父ヒザシは影武者として殺されたのではなく、父自身の意思で家族や里を想い自ら死を選んだという真相を知り、日向宗主とはいえ伯父であるヒアシから床に擦り付けるほど頭を下げられた事を、ネジは顔色一つ変えず無表情のままふと思い出す。
「ふぅん……まぁ姉さまが自主的にネジ兄と修行するようになったのは、いいことだと思うけど」
「ナルトが修行の旅に出た事で、自分も厳しい修行を重ねて強くなりたいと述べて来られたんです。……俺が相手でなくとも良いのではと言ったのですが、俺との修行の方が強くなれると思うからと───」
「へぇ…? じゃあ、あたしは日向の天才ネジ兄を超えるために強くなろうかなぁ?」
「フ、言ってくれますねハナビ様。そう簡単には日向の天才の座は、譲れませんよ」
ハナビとネジは、互いに不敵な笑みを浮かべた。
※二部、ネジ下忍から飛び級上忍昇格時
「ネジ兄さまぁ〜、下忍から上忍に飛び級昇格、おめでと〜っ!」
「はぁ…、ありがとうございます」
「さっすがネジ兄さまだよね! 下忍の頃からもう中忍扱いだったもんねっ」
「ハナビ様……、何故俺を様付けするんです? “ネジ兄”と、呼んでいたはずでは」
「いいじゃない、上忍祝いも兼ねて、これからは“ネジ兄さま”って呼ぶから!」
「いや…、困りますよ。それでは俺の立場が──」
「立場が何? 宗家とか分家とか関係ないよ。わたしがネジ兄さまをそう呼びたいのっ」
「………」
「てゆうか兄さまもこれを期に、わたしに敬語使うのやめてくれていいんだよ? その方が堅苦しくないし、従兄妹同士らしくていいでしょ!」
「お断りします。…ハナビ様はもう少し、宗家としての自覚を持って下さい」
「そんなの、どうせいつかナルトが変えてくれるんでしょ? ……わたしハッキリ覚えてるんだからね、あの試合会場の客席に居たから。ナルトの声、会場いっぱいに響いてた」
『日向の憎しみの運命だかなんだか知んねーがな、オマエが無理だっつーならもう何もしなくていい!!』
「───『オレが火影になって、日向を変えてやるよ』……ですか」
「そうそう、でもナルトに任せっきりにするのも不安じゃない? ほんとに火影になれるかも分かんないし。…だからわたし達で、内側から少しづつでも日向を変えて行くの。ね、兄さまっ」
「あいつなら……ナルトなら、きっと火影になりますよ。ですが、そうですね……、あいつばかりに期待するのは良くない。身内の問題くらい、自分達で変えてゆく努力はしなければいけませんね」
ネジは穏やかな表情で述べた。
「ふふ、そういうこと! ──わたしはネジ兄さまが日向当主になるべきだって、確信してるから」
ハナビは屈託のない笑顔を向け、ネジはそれに対し困ったような微笑を浮かべるにとどめた。
※大戦後のネジの生存
病室にて。
「──・・・ヒナタ姉さま、少しネジ兄さまと二人きりにしてくれないかな」
「うん、分かった。…じゃあネジ兄さんの事お願いね、ハナビ」
「ハナビ様……、あの時のようにまた俺の上に乗っからないで下さいね?」
病室のベッドに上体を少しだけ起こして横たわるネジは、苦笑気味に言った。
「しないよそんなこと…! てゆうか兄さま、敬語はもう必要ないでしょ? 分家も宗家も関係ない、あんな大きな戦争が終わって……ネジ兄さまの額の呪印も消えたんだから」
「──ヒナタにも、そう言われた。ハナビ……これからは、敬語をやめにするよ」
「うん、それでいいよ。この際だからウチの父上のこともヒアシ伯父さんって呼んじゃえばっ?」
「いや、まぁ…、伯父上ならありうるが……。ハナビは、俺を“兄さま”と呼ぶのは変えないのか?」
「そこは変えるつもりないよ。ヒナタ姉さまがネジ兄さんってずっと呼んでるように、わたしにとってネジ兄さまは兄さまだから。──・・・ネジ兄さまの呪印が消えたのはある意味良かったけど、でも一度死んじゃったようなもので、白眼も使えなくなっちゃったし……大戦の後遺症のこともあって、もう忍としてはやっていけない身体になったんだよね」
「…………」
「修行、つけてもらえなくなっちゃったな。それは姉さまも同じだけど。これじゃあ……わたしとヒナタ姉さまがネジ兄さまを守れちゃうね。それに…、わたしの方が日向当主になっちゃうよっ?」
困ったような笑みを浮かべるハナビに、僅かに寂しげな表情でネジは視線を逸らす。
「我ながら、情けないものさ。使いものにならない身体になって戻って来るくらいなら……、いっそ戦死した方が良かったのかもしれない」
「……っ!」
ハナビはネジのベッドに乗っかりはしないものの、ネジに出来るだけ顔を近づけた。……その瞳には、今にもこぼれ落ちそうな涙を浮かべている。
「ネジ兄さまのバカっ、冗談でもそんなこと言わないで」
「俺の為に……泣く必要はないよ、ハナビ。ヒナタとハナビを守れなくなる方が……俺にとってはつらいから」
儚い微笑をハナビに向けるネジ。
「いいの、そんなこと…! 今度はヒナタ姉さまとわたしが、ネジ兄さまを守っていくから。わたし……強くなる。ネジ兄さまを、守り続けるために」
「ハナビ……」
「───そうだよ、ネジ兄さん」
ヒナタが音もなく病室に戻って来ていた。
「私達は、日向一族の家族なの。家族を守る為なら、どんな事だって厭わない。ネジ兄さんのお父上……私とハナビにとっては叔父上のヒザシ様がそうしてくれたように、自由な心で家族を守って行くの」
ひたむきな眼差しをネジに向けるヒナタ。
「姉さまの言う通りだよネジ兄さま。ヒザシ叔父上が守ってくれた家族と……これからも生きて行こう。ずっと一緒に、ねっ」
ハナビとヒナタはネジと離れまいとするように、ベッドの両脇に寄り添う。
「ヒナタ、ハナビ……二人共、ありがとう」
※ナルトとヒナタが結ばれ、子供が生まれた時の話。
「第1子の男の子誕生、おめでとうナルト、ヒナタ。これでうずまき家の家族が増えたな。……どちらかというと、お前によく似ているな、ナルト」
「おう、ありがとなネジ。……この子はな、ボルトって名付けようって、ヒナタと決めたんだ。なぁ?」
「うん、そうなんだよネジ兄さん」
「ボルト……?」
「あぁ、ボルトの名前にはな……ネジ、お前の名前に繋がってるんだってばよ」
「俺の……? 何故だ。ナルトとヒナタの子なのに、俺は特に関係はないだろう。ヒナタと、従兄妹という以外は」
「お前が、オレとヒナタの命を繋いでくれたんだぜ。あの大戦で……命懸けでオレとヒナタを守って、死にかけちまっただろ。いや、実際一度死んじまってから奇跡的に助かって───。ボルトの名には、繋ぎとめるって意味がある。お前が……ネジが生きてくれてる上で、ボルトに命を繋いでくれた。だからこの子は、ネジの名に由来したボルトなんだってばよ」
「そんな、大袈裟な……。ナルトとヒナタの子に、俺に由来した名を背負わせるのはどうかと思うんだが」
「さっきも言ったでしょう? ネジ兄さんが命懸けで私とナルト君を守って命を繋いでくれたから、この子も生まれて来てくれたって。ほら……抱いてあげて、ボルトを」
すやすやと眠っているボルトをヒナタから受け渡され、緊張した面持ちで恐る恐るそっと抱き上げるネジ。……仄かに、甘い香りがする。
「ボルト……、うずまきボルト、か。──ナルトとヒナタの元に生まれて来てくれて、ありがとう」
ネジがそっと抱いている赤ん坊のボルトに微笑んで囁くように言うと、眠ったままとはいえ小さな手がネジの長い前髪に触れて、ほんの少し軽く掴んだようだった。
「……ネジ、オレ達と一緒にこれからボルトの成長をすぐ傍で、ずっと見守っていってくれってばよ。ネジおじさんとして、なッ」
「フフ……、もちろんだ」
《終》
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