とある世界の物質破壊≪ディストラクション≫
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僕が殺される日 前編
前書き
湊『遂にこの日か……』
美琴『私も、記憶を取り戻した今なら覚えてるわ。』
湊『その説は本当に……』
美琴『い、いいわよ!ここで、しんみりするのは辞めましょ?』
湊『あぁ。』
美琴『湊のお母さん、凄くいい人だったわね。』
湊『そうだね、優しい人だったよ。』
美琴『それじゃあ本編に行きましょ。』
湊『うん、では本編へ!』
「みーな兄。」
聞き慣れた声が後ろから聞こえた。
「久しぶりだね、美琴。」
「久しぶりって一昨日会ったよ?」
小学3年生になり、level3になった美琴。
levelが高くなるにつれて周りからの視線もあってか、少し大人っぽくなったが幼さの方が圧倒的に勝っている。
「まぁ、そうだけど。」
僕は微笑みながら美琴と母さんと待ち合わせしている場所に向かった。
「みな兄のお母さん、どうしたんだろうね?」
「さぁ、僕も急に呼ばれたから分かんない。」
美琴は「そっかぁ…」と答えてから、考えていた。
そんな美琴を見ていたら、目が合ってしまい僕は微笑むと美琴は顔を赤くして逸らした。
──僕、変なことしたかな?
僕と美琴は、昨日僕の母さんからメールが届いた。
『明日の午後4時頃に第4学区のいつもの喫茶店に来てちょうだい、美琴ちゃんと一緒にね。美琴ちゃんにも連絡しとくから待ってるよ。』
との事だった。
何で美琴も?と思ったが、明日になって会えば教えてくれるだろうと思って聞かなかった。
──何かあっても僕が守ればいい話だしね。
「あのね、私level3になったの!」
「凄いじゃん、level1から良く頑張ったね。」
そう、美琴は最初level1の電撃使いだった。
ごく少量の電流を流すので精一杯だったが、僕に「能力の使い方教えて!」と毎日寮に来ていた。
僕は電撃使いでは無いが、電気も物質の一つ。
なるべく分かりやすいように説明し、教えた。
今となってはある程度使いこなせるらしい。
「みな兄には、まだまだ教えてもらうからね!」
「もう僕が教えられる事は無いよ。」
僕は苦笑しながら言うと、美琴は首を横に振って否定した。
「あるの!私はみな兄と同じlevel5になるまで教えてもらうから!」
「そ、そんなに無いような……」
美琴とそんな会話をしていると、待ち合わせ場所の喫茶店に着いた。
「湊、美琴ちゃん。」
窓側の1番奥の席に座って、僕達の事を手招きしたのは母さんだった。
「みな兄のお母さん、こんにちは!」
「久しぶり母さん、今日はどうしたの?」
「こんにちは、美琴ちゃん。その話は、座ってからね。」
ということで、奥に母さんが座り反対側の正面に僕、その隣に美琴が座った。
飲み物を注文し、各自の飲み物が来てから母さんは話し始めた。
「今日はね、これからお父さんの所に行こうと思うの。」
「は?」
僕は訳が分からなかった。
──化け物扱いされ、距離を取っていたのに何故会いに行くんだ?
美琴も何となく僕が殺意を抱いてあるのが分かったらしく、服の裾を引っ張ってきた。
「みな兄……?」
「あ……ごめん。」
母さんはアイスコーヒーを飲んで、テーブルに置いてあるコースターの上に置いてから、ゆっくりと理由を話し始めた。
「お母さん、お父さんに話して湊と仲直りして欲しいって言ったの。やっぱり最初は反対したわ、でも条件付きで湊とちゃんと話すのは了承してくれた。」
「条件?」
「そう、美琴ちゃんと私が一緒にいるなら話してもいいってね。」
美琴は静かにオレンジジュースを飲んでいた。
──母さんが一緒なのは分かる……けど、何で美琴まで?
「……何で美琴も?」
「お父さん、美琴ちゃんの事は凄く気に入ってたじゃない?だからじゃないかしら。」
──何でだろ……嫌な予感がする。
僕は、父さんが素直に僕と話すはずがないと思っていた。
あんなにも嫌っていた僕を美琴と母さんが一緒なら話すと言うだろうか?
まさか……な。
「今回だけなら……美琴はどう?」
「みな兄が行くなら行くー。」
「ありがとう、湊。美琴ちゃん。」
──年のため力を使えるようにしとこう……。
僕はこの時予想していた事が、起きないことを願った。
まさか、湊の予想した事が起きるなんてこの場にいる3人は思わなかった。
「ここよ。」
母さんについていきながら向かったのは、第23学区にある研究所の一つだった。
「けんきゅうじょ?」
「そうみたいだね。」
美琴はあっているのか確認するかのように言った。
「お父さん、今ここで仕事してるの。」
僕は「ふーん。」と返して、母さんの後ろを美琴と一緒についていった。
「すごい広いね……」
美琴があまりの広さに驚いたらしく、僕の背中に隠れながら言った。
「研究所は大体こんな感じだよ。」
level5になると能力開発の手伝いーとかで、一人ひとつの研究所に割り振られるので、僕はそこまで驚かなかった。
「こっちよ」
そう言われ、僕と美琴はある部屋の前に来た。
「ちょっと待ってね」と言ってから、母さんは部屋にノックして入っていった。
それから数分後、中から「入っていいわよー。」と聞こえたので、僕達も入った。
「こんにちは、みな兄のお父さん。」
「……久しぶり。」
父さんはキーボードを叩く手を止め、僕達の方に向き直った。
「こんにちは美琴ちゃん、久しぶりだな。」
──なんなんだ、この違和感……
美琴も何かに気づいたのか、少しだけ肩に力が入っていた。
僕は「大丈夫。」と言うように、美琴を父さんから隠すように背中にかばった。
「そこに座りなさい。」
そう言って、父さんは僕達の後ろにある椅子を指さした。
あれから何分経っただろう。
座ってから、父さんは再びパソコンに向き直りキーボードを叩いている。
母さんはコーヒーを持ってくると言って部屋から出た。
美琴も手伝うと言って、母さんについていった。
今この部屋は僕と父さんだけで、部屋に響くのはキーボードを叩く音だけだった。
──警戒してはいるけど考えすぎた?
そう思った時、父さんのキーボードを叩く音が止まった。
「湊。」
「……なに?」
父さんはパソコンの方を向いたまま僕に話しかけてきた。
「お前は、自分の力がどれほど危ないものか分かっているのか?」
「知ってるさ、僕がもし戦争に参加したら参加した側が圧勝できるって言われた。」
僕は能力検査でlevel5だと言われた時に言われたことを思い出した。
『城崎くん、君の能力は凄く危険な物だ。戦争なんかしたら、君がいる側が圧勝してしまう程にね。だから使う時は気を付けなさい。』
ガタッ
父さんが立ち上がり、ガサガサとデスクトップを漁り始めた。
「そうだ、そして。」
父さんは束になった書類を僕に投げてきた。
「物質破壊暗殺計画……?」
僕はその書類の表紙に書いてある文字を読んでから、椅子から立ち上がり後ろに下がった。
「やっぱり、貴方は……!」
「そうだ、私はお前のような化け物を殺すために今日呼んだのだ。」
──予想が当たるとは…、てことは美琴とかあが危ない!
父さんは、耳元に付けている通信機に向かって命令した。
「今から物質破壊暗殺計画を始める!」
「母さんと美琴は関係ないだろ!」
父さんは「何を言っている?」と言いたげな表情をした。
「お前の味方に付く奴を私が野放しにするとでも思ったか?」
「は…?」
──ふざけるな……!
「お喋りもここまでだ。」
「っ!?」
父さんは銀色の拳銃を向けてきた。
僕は能力で銃弾を消し、部屋から出た。
──不味い、母さんと美琴は……!
部屋に出ると研究員らしき人が、父さんと同じ拳銃を僕に向けてくる。
「邪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
拳銃を、銃弾を能力で消していく。
「はぁはぁ……美琴と母さんは……!」
「みな兄ー…!」
遠くから声が聞こえた。
僕は走りながら、研究員の拳銃と銃弾を消していく。
「いた……な!?」
僕がついた頃には、母さんと美琴は研究員に囲まれていた。
もちろん、銀色の拳銃を持って。
「いたぞ物質破壊!」
「殺せ!」
「みな兄!」
美琴が僕の方に寄ってくる研究員を止めようと動こうとした。
「駄目だ!僕は平気だから母さんを頼んだ!」
──今美琴が動いたら間違いなく殺される…!
母さんは美琴を抑えて、研究員から守ろうとしていた。
「美琴ちゃん、私から離れちゃ駄目!」
「でも……!」
「慌てなくていい。」
僕が入ってきた入口と反対から父さんが入ってきた。
「聖さん…!これはいったい…!」
「何、化け物を消そうとしてるだけさ。夢唯も知っているだろう?コイツを生かしておいたらいけない事ぐらい。」
「みな兄のお父さん……?」
「美琴ちゃん、あの化け物が死んだあと、夢唯と君も殺してあげるから待っていなさい。」
「ひじり…さん…?」
「化け物の味方をしたんだ、当たり前だろう?」
僕は研究員を倒しながら、今すぐにでもキレそうな勢いだった。
──ふざけんな、ふざけんな……父さんは……あの人は関係の無い2人を殺そうとしてるのか?
何も悪くないあの2人を……?
「……けんなよ。」
「なんだ?」
「ふざけんな!」
僕は、研究員を倒し父さんに向かって走った。
「僕だけで十分だろ!何で2人まで殺す必要が……」
バンッ
「え……?」
僕は自分が撃たれたのかと思って身体を見た。
だが、どこにも外傷は無い。
「みな兄のお母さん……!?」
「みこと…ちゃん…大丈夫…だった…?」
──何が起きた…?
僕は当たりを見回した。
「あ……。」
一人、動ける人が残っていた。
僕が父さんの所に向かった走った時にこの部屋に来た人だろう。
ここにいる研究員は動けなくしているだけで、誰も死んでいない。
でも、入口近くにいるあの男は撃った。
──誰に?
『みこと…ちゃん…大丈夫…だった…?』
美琴を殺そうとした?
それを母さんが守った…?
「夢唯、君は本当に優しい人だ。この状況でも君は美琴ちゃんだけでなく、この化け物までも守ろうと考えているのだろう?」
父さんは僕の横を通り過ぎ、母さんのもとに歩いていく。
「そうよ…湊は…私の"息子"よ?守って…当然じゃない…美琴ちゃんだって…娘のような…存在なんだから…それは聖さんも同じでしょ…?」
母さんは呼吸を荒くしながら話す。
美琴は父さんから母さんを守るように前に立った。
「みな兄のお父さんが…何を考えいるのか私には分からないけど…みな兄のお母さんは私が守る…!」
震えながらも父さんの前に立ちはだかる美琴。
──駄目だ、今の父さんは美琴を……!
「美琴、母さん伏せろー!」
僕は右手で電撃を作り、父さんに向けて投げた。
後書き
湊の父親である城崎聖、正直作者は嫌いです(笑)
書いてる間、嫌われそうな台詞ってなんだろう…って考えながら書いていたら物凄くイライラするキャラに……(笑)
では、次回予告です!
──────────────────────
能力を使うも無効化される湊。
母の夢唯と美琴に危機はすぐ側にまで迫っていた。
聖の魔の手が2人に襲いかかる時、湊は─────。
「みな兄の……目が……。」
「俺が…殺す…!」
赤目の少年が暴れ出す。
次回『僕が殺される日 後編:研究所爆破事件』
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