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真田十勇士

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巻ノ八十八 村上武吉その七

「是非お通ししてくれと」
「では」
「お入り下さい」
 こうしてだ、幸村と海野は屋敷の中に案内された。そして村上のところに案内されるとだ。
 村上は二人を見てまずは笑みを浮かべた、そのうえで案内した者に言った。
「席を外せ」
「はい、それでは」
 若い男も応えてだ、そしてだった。
 村上は三人だけになるとだ、二人にあらためて言ったのだった。
「よく来られた」
「お久し振りです」
 幸村も村上に頭を下げて応えた。
「もう十数年になりますな」
「そうじゃな」
「あれから多くのことがありました」
「わしもじゃ、しかしな」
「はい、この度はです」
「わしに水のことで教えを乞いたいか」
 村上は自分から言った。
「左様か」
「おわかりですか」
「何故わしのところに来たか」
「そのことを考えればですか」
「答えは一つじゃ」
「村上殿ならばですか」
「わしは水のことなら何でも知っておる」 
 それこそというのだ。
「伊達に海賊ではない」
「ですから」
「それがしがです」
 海野も村上に話した。
「水術を極めたいと思いまして」
「それがしが話しました」
 幸村が事情を話した。
「それで、です」
「来られたか」
「左様です」
「そうなのじゃな」
「それでなのですが」
「わかっておる、わざわざここまで来てくれたのじゃ」
 村上は豪快な声で応えた。
「教えさせてもらおう」
「有り難きお言葉、それでは」
「うむ、早速水術を授けよう」
「さすれば」
 海野は村上の言葉に笑顔になった、喜びでその場で飛び上がらんばかりだった。
「これから」
「でば三田尻に向かおう」
「三田尻ですか」
「わしは今そこに屋敷がある」
 本来の住む場所はというのだ。
「だからな」
「まずはですか」
「そこに行こう、しかしな」
 ここでだ、村上は二人にこうも言ったのだった。 
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