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二人の騎空士

作者:高村
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The fate episode
一人目の騎空士
  進行度 1/3

 
前書き
グランブルーファンタジーの二次創作です。グラン及びジータは17歳設定の方を元にしています(ルリアと会った時点で17歳なので本編中の殆どでは18歳です)
原作をプレイの方は部のタイトルでお分かりの通り、ある人物が仲間になるまでのお話です。
また今回はプレイ済みの方でないと少々分かり難いかもしれません。
この部は書き終わっているので毎日予約投稿です。コピペミス等あればすいません。 

 
 身を分つ君よ。今は何処にいるだろう。

 §

 小鳥の囀りで目を覚ました。腰掛けた大木の葉が風に揺られてさらさらと音を立てる。日の高さを見るに今は八時かそこらだろうか。私は立ち上がり、付近を見回す。昨日から変わりなく、辺りは時たま木が生えている草原しかなかった。
 装備を確認。剣よし。防具なし。食料なし。水なし。医療品なし。貴金属なし。現金なし。空腹、なれど五体満足。
 私は付近の木々を回って食べられる実を探し回る。それでなんとか栄養を補給すると、近くの村へと向かった。村へ着けば汚い身なりの私に村人達は眉を顰めるが、替えの衣類はなく金もない以上、どうしようもない事だった。付近に綺麗な水場でもあれば事は違っただろうが、生憎と綺麗な水は村の中の井戸にしかなく、私がそれを使うと村人達は文句を言ってくるので諦めるしかなかった。
 目的の家まで着くと、私は扉を二度叩く。
「はいはい、どなたでしょう」
 そう言って扉を開けたのは中年の女性だった。彼女は此方を認めてすぐに顔を顰める。それは身なりが汚いという以外にも理由があった。
「お金、そろそろ払っていただきたい」
「貴方いつまで来るのよ」
 その言い草に私は幾らか腹が立ち、扉の中へ無理やり押し入った。
「ちょっと、どういう了見よ!」
 口うるさい女性を無視し廊下を進む。進んだ先の部屋で優雅に寛いでいたのはこれまた中年の男性だった。更には彼と机を挟んで、異様な成りの男が居た。
「なんだい君は。お金なら待っ……払ったと言っただろう」
 男性の言葉を無視して、異様な成りの男を眺める。全身を黒い鎧で覆ってはいるのだが、胸部の一部と右腕一部は敢えて鎧を着けてはおらず、傍には刃渡りだけでも二米は優に超す巨大な鎌が置かれていた。
「彼が、件の男か」
 鎧の男がそう呟けば、中年の男は首を何度も縦に振る。
「そうだ! ある依頼を頼んだんだが、終わった後に法外な報酬を要求してきてな。分割で払おうにも要求額は増すばかり。だからあんたに頼んだんだ」
 鎧の男は立ち上がり此方を見やる。鎧を抜けば、背丈は凡そ二米十糎かそこらか。
「成る程。さて、そちらの男性からも話を聞きたい。少し着いてきてはくれないだろか」
 鎧の男はそう言うと、傍の鎌を携えて部屋を出て行く。狭い室内であれ程の大鎌をぶつけることなく移動させるところを見るに、相当に扱いになれているのだろう。
 私は黙って彼の後ろに続く。鎧の男は丁寧な言い草だが、意図は明白だ。依頼主に危害が及ばぬよう距離を開ける事が第一。そうして可能であれば穏便に事態を収束させるため、話し合いで済ませようとしている。
 玄関を抜け、家の前に出ればそこで若い女性が私達の事を待っていた。
「バザラガ、目標は彼?」
 鎧男、もといバザラガは女性の前で立ち止まり、此方を振り返った。
「口を慎めベアトリクス。少なくとも、事態はきちんと把握しなければならない」
 ベアトリクスと言われた女性は肩を竦ませた。
「して、話を聞きたいのだが――」
「何をぐずぐずしているか! 早く叩き切るなりなんなりしろ!」
 バザラガの発言を遮って、中年の男性が玄関口から此方へ向かってきていた。勝手ながら、バザラガという男性に同情する。彼の思惑を理解し行動してくれる人間は彼の周りにいないようだ。
「黙れ屑が。首が繋がっている内に金を払うんだな」
 私が脅すように剣を抜き男性へ向けた瞬間、場の空気は変わった。先程までのバザラガが作っていた剣呑なれど殺気はない場から突然に、害意で空気は満たされた。
 バザラガが此方の剣を弾きに一歩踏み出す。身丈も力も得物の重ささえも違う故に私は避けるしかない。私が大きく身を後ろに下がれば彼の切り上げは空を裂く。
 追撃をかけるはベアトリクス。バザラガを庇うように、なれど同時に此方を討たんとばかりに勢いをつけた上段斬りを私に放つ。……崩すならば、今。
 下がりつつある足を緩める。私の後退速度が下がった故に、ベアトリクスの前へと動く速度も下がる。それは剣の切っ先数寸の一番力が乗る部分で切るかかる故に起こる動作である。私はその極僅かな減速を見逃さず、尚半歩の半分ほど下がる。
 ベアトリクスの切っ先が、前髪を数本散らし、眼球僅か二寸先を薙ぎ、外套を切り裂きながら、しかし肉一辺足りとも傷つけず私の前を走る。凍りつくはベアトリクスの表情だ。安心しろ、殺すつもりは毛頭ない。
 踏み込みつつ、ベアトリクスの水月に掌打を放つ。僅かながらにも魔力を使った身体強化のお陰で普段の数倍の威力を伴ったそれは、ベアトリクスの体を浮かせ背後のバザラガの元まで飛ばす。バザラガはそれを受ける事なく、鎌の柄で横へ払った。
「がっがあ」
 地に落ちたベアトリクスが呻き声を上げる。常人ならば即死の威力だが、彼女自身に強い加護がかかっていた故に内臓破裂などは起きてはいないはずだ。それくらいに調整してある。
 バザラガは隙を見せないようにゆっくりとベアトリクスの前に移動する。この男、一筋縄ではいかないか。
「バザラガ、と言いましたか。話をしましょう」
 私は中段に構え直していた剣を下げ、無構えとなる。
「……分かった」
 バザラガの返答に安心する。至近距離、秒の十分の一の足りとも無駄に出来ない殺陣の中で、相手の顔、特に視線や口元が見えないのは不利だ。息を吸いながら攻撃なんてできる訳がなく、喋るなんてことは以ての外。敢えて此方がそうしたことにより信頼を得ようとする腹積もりだったが、うまくいったようだ。
「まずは謝罪させて頂きたい。そこのベアトリクス嬢とやらは暫くは立ち上がれないでしょう」
「此方とて武器を携え剰え先に剣を振るった身である。謝罪など求めてはいない」
「ならば一安心です。さて、そもそもその依頼主ですが……」
 私は今一度一歩下がり、剣を鞘へ戻した。それを見たバザラガは漸く警戒を解き中年の男性の方を伺った。男性は腰を抜かして地面を這いずりながら家の中に戻ろうとしている。彼の這った場所が濡れているのは小便でも漏らしたのだろう。
「彼の言ったことは半分本当です。彼の……彼を代表としたこの村の人々の依頼を受けて私はその依頼を成功させました。だけれど、彼はいつになっても報酬を払うことはなく終いには報酬なんて渡さないと言い始めた。それにこの村人達は同調した」
「つまり、彼は報酬を踏み倒していたと」
「はい。あなた方もそうなる予定でしたでしょう」
 私がそう答えればバザラガは鎧の下へ手を伸ばす。顎でもなでているのだろうか。
「よしんばそれが本当だとして、なぜ貴方はここにいる。さっさと去ればいいじゃないか」
「路銀が尽きたのですよ。他の島に行こうにも騎空艇に乗る駄賃さえもない。この島は皆彼らと同じです。島の外から来た人間を使って楽し後は知らぬ存ぜぬを決め込む。もう五度目ですよ」
 バザラガは右手で持っていた大鎌をとうとう構えるのを止め、地面につけた。戦闘の意思はもうないということか。
「今は貴方の言葉を全て信じるわけではないが、確かにこの島は以前から評判が悪かったのは事実であり、我々が最初に受け取るはずだった前金が支払われなかったのもまた事実。此後、貴方との戦いで我らが得るものは何もないと見える」
「武器を収めてくださり感謝致します。では、私は少々手荒ですが報酬を、頂きに、参りましょう」
「待て」
 私が歩きだそうとしてすぐにバザラガは声を放った。
「なんでしょう」
 足を止めバザラガを見やる。彼が此方に命令したのは、此度が初めてだ。
「殺すのか」
「報酬の為であれば如何な手段であろうと講じる、そう確かに契約時に言っています」
 四度騙された私は五度目の契約の際、そう念押ししたのだ。それでも首を縦に振ったのだから、それ相応の覚悟を持っていたと私は解釈する。
「過ぎた真似をすれば、俺達は後日正式な依頼を伴ってお前を討たねばならぬかもしれないぞ」
 成る程、この口調が彼の普段の話し方か。
「自身の命の為であれば如何な手段であろうと講じます」
「それが答えか」
 バザラガの声音に殺意が少しだけ混じる。
「全員を殺害すれば誰も依頼は出来ませんよ」
 脅し文句は、何もバザラガしか言えないものではない。
「ベアトリクス、起きろ」
 バザラガがそう言えば、寝そべったままのベアトリクスは上半身を持ち上げるが、それ以上の事はなにもしない。いや、出来ないと確信しているのだろう。無理に立ち上がろうとして怪我の程度がばれるのが怖いと見える。
「命乞いをしなければならないのは此方と見えるな」
 バザラガが自嘲気味に笑う。そう、誰もが私の討伐に来ないようにするには、凶行を起こしたのが私と知っている全員を殺さなくてはいけない。当然彼らも含まれる。
「俺達がお前が当分不自由ない生活を送れるだけの金を払う。それで収めてくれないか」
「……先程の言葉は冗談ですよ。全員を殺すのであれば最初から強盗でもしています。軽いお痛ですませますよ、ええ」
 そう言って私はバザラガを置いて、中年の男がいる家の中へ入っていった。 
 

 
後書き
Q,何故ベアトリクス?
A,バザラガの苦労人感とベアトリクスのお調子者感を出したかったんですが、結局はベアトリクスが空気よめないやつだけになっちゃいました。反省してます。バザラガさんは今後「The fate episode」以降を書く機会があればもっと起用したいですね。
Q,ゼタは?
A,今後「The fate(以下略
Q,主人公の職等は?
A,武器は決めてありますが職業は……ファイターなんじゃないですかね 
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