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真田十勇士

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巻ノ八十八 村上武吉その五

「それが出来る」
「そうなのですか」
「そうじゃ、だからな」
「萩藩はですか」
「栄える」
 また言うのだった。
「拙者はそう見ておる」
「人ですか」
「逆にどれだけ地の利がよくともな」
「人が駄目ならば」
「どうにもならぬ」
 こう言うのだった。
「どうしてもな」
「そういうことですな」
「小城でも人がまとまっておればじゃ」
「大軍が相手でも防げる」
「しかし如何なる巨城でもじゃ」
 幸村は逆の場合も話した。
「人がまとまっておらぬとな」
「陥ちる」
「国も同じ、やはり人は城なのじゃ」
 幸村は幼い頃に知っている信玄のこと話した。武田家のことは今も残念に思っている。思っても仕方ないことにしても。
「石垣であり掘じゃ」
「人こそが最も強い守りですか」
「そして毛利藩にはそれがあるからな」
「生き残こえりそうして」
「強くなろう」
「左様ですか」
「拙者が思うにな。ではこれよりな」
 幸村は海野にあらためて話した。
「村上殿に行こう」
「わかり申した」
 海野も幸村に確かな顔で応えた。
「それでは」
「草木から聞いた通りな」
「村上殿のところに参り」
「そうしてそのうえで」
「水術を教えて頂く」
「そうしようぞ」
 こう話してだ、二人は萩の海添いの屋敷に入赴いた。そして。 
 その門を叩くとだ、大柄な潮の匂いがする男が出て来て二人に応えてきた。
「どなたか、そして何用か」
「はい、我等は旅の武者修行の者です」
 幸村は男に自分達の素性を隠して答えた。
「水術も学んでおりまして」
「水術を」
「はい、それで村上殿に教えて頂く」
「我が殿の水術を」
「そう思い参りました」
 こう話すのだった。
「この度は」
「わかり申した」
「それで村上殿は」
「この屋敷におられますが」
「それでもでござるか」
「はい、お元気ではありますが」
 それでもというのだった。
「実はです」
「実はといいますと」
「この屋敷は仮の屋敷でござる」
「そうなのですか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。 
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