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ドリトル先生と悩める画家

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第一幕その十

「霊山と言われるだけあってね」
「日本の神様がいる場所なんだ」
「つまりは」
「そうだよ、そうも思われているんだ」
 日本の人達にというのです。
「高くて登るのは大変らしいけれどね」
「そうそう、実は僕富士山に登ったことがあるんだ」
 王子がここで先生にこのお話をしてきました。
「頂上までね」
「富士山のなんだ」
「うん、登ったよ」
 先生に笑顔でお話します。
「時間をかけてね」
「大変と聞いてるけれど」
「かなりね、上の方は空気も薄いし」
「そうだね、雲よりも上の高さにあるからね」
「けれど登ったよ」
「頑張ったね、王子も」
「途中辛くて何度も諦めそうになったけれど」
 それでもというのです。
「最後までね」
「登ったんだね」
「その時の達成感は最高だったよ」
「そうなんだ、それじゃあね」
「先生もだね」
「いやいや、僕はいいよ」
 先生は王子の笑っての問い掛けに慌てて応えました。
「そうしたことは」
「スポーツだからだね」
「そうだよ、しかも僕はいつもこの服装だね」
 スーツ姿に帽子です、靴も革靴です。
「これじゃあ登山もね」
「出来ないっていうんだね」
「特に富士山はね」
 高くて険しい山への登山はというのです。
「難しいよ」
「まあそうだろうね」
「うん、本当に富士山への登山は」
「しないんだ」
「これからもすることはないと思うよ」
「やれやれだね、けれど先生は冒険とも縁があるから」 
 だからだとです、王子は先生に笑顔を向けてお話しました。
「ひょっとしてね」
「富士山にもなんだ」
「行くことがあるんじゃないかな」
「そうかな」
「先生はそう言ってこれまで世界のあちこちに行ってるしね」
「そうなんだよね、月に行ったこともあるし」
 先生も言われてこれまでの冒険のことを思い出します。
「王子のお国にも行ったし」
「そうだったね」
「日本もあちこち行ってるしね」
 北海道も愛媛も沖縄もです、京都にも行ったことがあります。
「だからね」
「富士山にもね」
「言われてみればあるかも知れないね」
「可能性はゼロじゃないよ」
「そうだね、じゃあその時は」
「頑張ってだね」
「富士山の頂上まで登ろうか」
 こう言うのでした。
「その時はね」
「僕達も一緒だからね」
「何があってもそうだから」
「困った時はお互いに助け合って」
「そうしてやっていこうね」
 動物の皆もその先生に言ってきます。
「皆一緒にいるから」
「だから頂上まで助け合っていこうね」
「いつもみたいに」
「そうしましょう」
「そうだね、皆がいてくれるんだね僕には」
 先生は動物の皆のその言葉にも笑顔で応えました。
「じゃあその時はね」
「宜しくね、先生」
「皆で頑張りましょう」
「頂上までね」
「登るのなら最後まで」
「そうだね、頑張って行こう」
 先生も富士山を登る時のことをここで考えました、そのうえでの言葉です。
「じゃあね」
「やっていこうね、その時は」
「皆で助け合って」
「いざ頂上まで」
 ここでも動物の皆に言ってもらえる先生でした、そうしたお話をしながら今は王子とその皆と一緒に美術館の中を巡るのでした。 
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