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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第三章 X《クロス》
  襲来



「本当に・・・・舜君なの・・・・?」

「この姿を見忘れたのかい?なのは」

「ほ、本当に・・・・・」




そういって、なのはがいまだ信じられないといった風に蒔風へと近づいていく。

一方蒔風の手も、そのなのはの方へと伸び、そっと頭を撫でようとして、言った。



「お前が大好きな蒔風さんだぜ?ほれ、おにーさんに飛びついてきなさい」



その言葉になのはが涙をこぼし、目を見開き、そして




「いけません!!」


「EARTH」ビルの廊下から眺めていたアリスが、窓ガラスをすり抜けて飛び出し、なのはとヴィヴィオの体を抱え込んでその場から後退させた。

その早業たるや、二人を抱えた一瞬で蒔風の手を後ろ蹴りし、衝撃波のような気迫を飛ばして一歩後退させるほどだ。





「おぉ~う。手荒い歓迎だねぇ、アリスさん」





そう言いながら、蒔風が手をプラプラと振って笑いかける。


が、当のアリスとなのははそんなこと聞いていない。
ヴィヴィオをビルの方へと帰し、避難しているように言ってからアリスがなのはを諭すとように言う。


「なのはさん、あれは・・・あの男は・・・・」

「・・・・わかってるよ」



アリスの言葉に、なのははすでに気づいていた。



この男は蒔風ではない。断じて違う。



蒔風舜という男は一度たりとも、なのはが彼に対して思いを抱いているのを良しとしたことなどなかったのだから。

なのはの目にたまった涙は、そこから来る悔しさだった。
待ち焦がれていた言葉だったはずなのに、いまはそれがこんな否定の証明に使われるなんて、悔しくてしょうがなかった。



「戻って・・・・来たんですか」

「おいおい、ひどい言われようだねぇ。あんたは俺の正体知ってんだろ?なら、ここは総じてオレの帰る場所じゃないのかい?」




アリスの双眸がグッ、と引き締まる。




かつて、蒔風と幾度となく死闘を繰り返し、そして一時は消えていた男。


「奴」と呼ばれていたその男が、蒔風の皮をかぶって今、ここに復活していた。






「どうやって・・・・」


アリスの疑問。
確かに、「奴」にはかなり優れた再生力がある。

しかし、流石に一年と少しでは全消滅した身体は戻らないはず。
彼が今までやられてもやられても再生していたのはあくまでも世界を超えた際にのみだ。

この世界の中では、そんなに早く戻るとも思えないのだが・・・



その疑問に、「奴」が蒔風への変装を解いて答えた。


黒い影の男曰く


「あんたは蒔風が消える時、“LOND”の力をあいつに流し込んでたろ?が、あいつの体をすり抜けて行ってしまった・・・・そうだろ?」

「ええ・・・・」

「だけどな、俺の方はどうだ?こっちにその力が流れてしまっていたら?」

「・・・・まさか・・・」

「そのまさか♪・・・さぁっ!!」






ボウッ!!と「奴」の身体からオーラが吹き出し、凄まじい風が巻き起こる。

そして、その気の中には知った気配もあった。





「これは・・・“LOND”の力!?」

「そ、助かったぜ?おかげで予定より早く戻ってこれた」





「奴」が復活の種明かしをしているが、理解しているのはアリスだけだろう。

「奴」と蒔風のつながりなど、知っている人間は少ないのだから。






「アリス!!」

「一体これは・・・・!?」



と、そこに一刀や数名のメンバーが駆け寄ってきた。
そして、目の前の男に気付き驚愕する。


「「奴」・・・だと!?」

「お前・・・あいつに消されたんじゃ!?」



各々リアクションを取るメンバーだが、いまさらめんどくさいというようにひらひらと手を振る「奴」は、さてさっそくと言わんばかりに魔導八天を抜き放って首をゴキリと鳴らした。



「いまさら説明はいらないよなぁ?お前らは知ってんだろ?」



「ッッッ!!!」

「オレの目的、知ってんだろ?前置きは・・・・」



ダウッッ!!



「いらねぇだろォッッ!?」






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漆黒の波動砲が薙がれ、地面を軒並み吹き飛ばしていく。

その土煙を掻き払いながら、北郷一刀が開翼して「奴」へと切り掛かって行った。




「俺たちを殺って・・・・世界を食らう気か!!(ガァン!!)」

「(ギチッ・・・)それ以外に何がある?オレは最初から最後まで・・・・そのスタンスを崩したことはねぇよ!!!(ドゴッ)」



一刀と剣を鍔競り合う「奴」が、一刀の腹にケンカキックを入れて後退させた。
そしてその顎を狙って回転、剣を横に薙いでさらに斬りかかっていく。


「くっ・・・だがこっちにはみんなの力がある!!」


そこで一刀が一気にバックステップして距離を取り、その背後に大量の剣を出現させて一つに結合、無理やり巨大剣を作り上げて「奴」へと振り下ろした。

それに対し「奴」は、魔導八天をばらして背中に回し、まるで羽のように装着した。
そしてその巨大剣に向かって飛び出し、くるくるとその旋回をしながら一刀へと向かっていく。



「ッ!?この数の剣を・・・輪切りに!?」

「おいおいおいおい。そんな粗末な技で・・・」

ザクッ!!!

「俺に勝てると思ってんの?」



迫ってきた「奴」を一刀が流星剣で受け止めるも、「奴」の背中から魔導八天が手裏剣のように回転して飛び出してきて、一刀の肩に突き刺さった。

それを食らい、滴る血と共に一刀が落ちていく。



その一刀を愛紗が飛び出して抱え込み、その愛紗の肩を踏み台にして鈴々が「奴」へと身の丈以上の己の武器「蛇矛」を振り下ろしぶちかました。



その一撃を「奴」が受け、鈴々と共にそのまま地面に押しつけられるかのように落下していった。




ゴッゴン!!という重々しい音と共に地面が揺れ、二人が地面に落ちて砂煙が起こる。
そして、その中からユラリと姿を現したのは




「重いな。だがオレの魂を潰すにはちと軽い!!!」




蛇矛の刃と持ち手の境目に二の腕を当てて受け止め、振り下ろした体制のままの鈴々を見て、「奴」が呟く。

直後、「奴」は蛇矛を掴んでブン回し、それを「EARTH」ビルに向かって投げ飛ばした。



バゴォ!!という音がし、鈴々の小さな体が「EARTH」ビルに小さなクレーターを作り出す。

それを見てまだ死んではいない鈴々を見て、「奴」は感心したような声を出すがそれはすぐにほかの攻撃に遮られてしまった。





斬りかかってきたのはライダーとセイバー。
更にはクウガやアギトたちといった仮面ライダーたちだ。


後方からはアーチャーからの援護射撃も助け、一気に「奴」へと攻め込んでいく。



しかし




「魔導八天・・・・・フルブラスト!!!!」



魔導八天の切っ先が彼らに向き、その先端から一気に砲撃が放たれていった。

計八本の無慈悲な砲撃はジュゴウッ!!!という音を立てて次々とライダーをなぎ倒し、アーチャーの投影の八割を消し飛ばした。



が、それでも生き残った者はいる。




飛んできた剣を回避していると、そこにセイバーがエクスカリバーを振り下ろして「奴」の首を狙ってきた。

「奴」はそれを横にそれて回避し、セイバーの腹を貫いてやろうと彼女の右側から拳を突き込む。
が、それよりも早くセイバーの左掌が「奴」の胸に当てられ、そこから一気にストライク・エアがぶち込まされた。




その風圧に「奴」の体が真上にすっ飛び、そこに向かってライダーのベルレフォーンが放たれる



「ベルレフォーン!!!」



ギャゴッッ!!という空気との摩擦音を上げながら天馬(ペガサス)に跨った彼女が砲撃となって突っ込んていく。

しかし、「奴」は手に握った魔導八天を花びらのように展開し、それを回転させてバリアとして機能させた。



エネルギーが掻き散らされていき、ぶつかり合ったライダーが地面へと落ちていった。
が、その手からはジャラジャラと鎖が伸びており、彼女は落ちながらもそれを思い切り真上へと引っ張った。



その先端を握るのは、地面のセイバー。
まるで滑車のように入れ違うライダーとセイバー。

ダメージにライダーは地面に着地できず落ちるが、セイバーがそのまま「奴」に向かって切り掛かって行った。



片手でエクスカリバーを振り下ろし、更にもう一回と今度は両手で振り下ろす。



「聖剣の二刀流かい!!面白いことしてくれるね!!」



そういってその二刀を魔導八天の二本で受け止め、「奴」が手に握った剣を放した。
「奴」の二刀が落ちていき、それと同時にセイバーの腹に膝をぶちかまして回転してからのエルボーで大地に叩きつける。



《FINAL ATTACK RIDE―――DE DE DE DECADE!!》



と、そこにディケイドのディメンションシュートが地上から放たれ、「奴」に見事命中した。
が、「奴」はそれをクロスして腕でガードして弾くも、そのまま引力に従って地上に降りていく。



「オオオオオオ!!俺の必殺技ァ!!」

「紫電一閃!!」




と、その着地地点から「奴」に合わせてシグナムと電王が垂直に飛び上がって切り掛かった行った。


そのあとをほかにも剣を武器とするものが次々と切り掛かっていくが




「ラァッ!!」

「うおっ!?」

「ふゥっ!!」

「ゴアッッ!!」



「せァッ!!」

「「「うぐァ!!!」」」




その飛び掛かってくる相手を、来た順番通りに蹴り投げ殴り飛ばしていく「奴」。



電王がエネルギーをためながら斬りかかったのを捻り躱して背中を踏むように蹴り、身体を捻ったそのままにシグナムの小手を回し蹴りで弾く。

星、翠、愛紗の三人の突き込みを、縦回転することで回避し、交差した三本の武器の上に乗るような形になる。
その上で回転し、三人の顔面を蹴り飛ばしてから、真上から襲い掛かったヴィータのギガントシュラークを見上げる「奴」。



「轟 天 爆 砕!!!」

「オウッッァ!!!」



それを両腕で受け、地面に叩きつけられる「奴」。

それにヴィータはガッツポーズをとった。
ハンマーの面は確実に地面にめり込んでいる。逃げる隙間はないはずだ。


しかし



「(ボコッ!!)モグラたたきはこうやんだ!!!」

「なッ!?ガアッ!?」



背後の地面から飛び出してきた「奴」がヴィータに向かって魔導八天を思い切り振りおろし、グラーフアイゼンで受け止めたヴィータがアイゼンごと切り裂かれて倒れる。



「オオオオオオ!!」




ズンッッ!!




その瞬間、空間が重くなって毛色を変える。


リトルバスターズによる固有結界「虚構学園」だ。



その中で、理樹が「奴」に挑みかかって行った。
バリアを全身に纏い、さらに流動までさせている。


かつて蒔風を追い詰めた物のバージョンアップ版だ。



「まさか、お前が帰ってきてるなんてね!!」

「おいおい。俺はもともといたぞ?あいつにふっとばされてただけさ」

「じゃあもう一度吹っ飛ばす!!」



ギャギィ!!ギャウッ・・・・ギャリリリリリリリッッッ!!!




理樹はバリアを張っての徒手空拳。
「奴」はそれに向かって魔導八天で切りかかっていく。


一瞬触れるだけでも凄まじい火花を起こすそれに対し、「奴」は臆することなく魔導八天を振るっていく。


そして、数撃打ち合ってから「奴」が一歩下がって魔導八天を構え直し、手の中で独楽のように軸回転させて一気に理樹に向かって突きこんできた!!




ギャッッ・・・・・バァン・・・・!!!!





「んな・・・?」

「そっちが回転してんなら話は簡単だ。そっち以上の回転を以って、一気に突き込むだけだ」



「奴」の呟き。
割れるバリア。

熱した鉄棒を突っ込まれたかのような感触。



激痛の信号が、理樹の腹から脳へと届く。



「お・・・グォ・・・がぁぁァァアあああああああ!!!?」

「お前の為の固有結界だ。すぐに回復するだろう?」

「グェ・・・あ・・・・」



そう言って、理樹の腹に突き刺した剣をそのまま地面に突き刺し、標本のように縫いとめる。

あまりの激痛に、理樹が呻いて地面をひっかく。



これでは再生しようにも、剣が邪魔で立ち上がれない。




「何すんだテメェ!!」

「理樹を離せ!!」




と、そこに真人と謙吾が突っ込み、「奴」を理樹のもとから離そうとする。

その二人から大きなバックステップで距離を取る「奴」。




理樹を剣から解放し、肩を担ぐリトルバスターズのメンバー。
それ向かって、「奴」が頭上に巨大な黒球を生みだしていた。



「吹っ飛びなぁ!!」

「まずい!!」

「下がれ!!」





ゴギュッッッ、ギャッゴォォォオオオオオ!!!





その黒球がメンバーを呑みこみ、空間を削り取るような音を起こして全員を地面に伏せさせた。
それと同時に固有結界が切れ、世界の毛色が戻る。



そこで生き残ったライダー数名によるライダーキックがいっせいに放たれてくる。
だが、それすらも「奴」は一人ひとりの足を掴み、後続のライダーに投げつけて衝突させたり、なぎ倒したりして一人残らずたたき落とした。

最後に、掴んでいたクウガを向かってくるランサー、アーチャーに向かってブン投げて飛ばす。



クウガはランサーに向かって地面と水平にすっ飛び、よけるわけにもいかないランサーはそれを受け止め、壁に叩きつけられてしまう。


アーチャーはそれを見ながらも止まることなく干将・莫邪を取り出し、円の動きで振るって「奴」へと攻撃を試みる。
が、その隙間を縫うように放たれた「奴」の拳がアーチャーの顔面を捉え、さらに背後に現れたディエンドを後ろ回し蹴りでなぎ倒し、波動砲でアーチャーを吹き飛ばした。








次々とメンバーを戦闘不能へと陥らせていく、「奴」



かつて、銀白の翼人もこのメンバーを相手取り、勝利を収めた経験がある。
しかしそれはあくまでも相手の裏をかき、非道を極め、勝つためなら何でもするという、おおよそまともとは言えない手段を用いたものだった。



それに対し、この男はどうか。
真っ向から立ち向かい、そして次々と連続で仕留めていくこの男。





やってることは悪役のそれにもかかわらず、勝ち方はかの男よりもはるかに正統派じみていた。





「俺は実を言うとこう言った真っ向からのガチが得意なんだよなぁ・・・・好きなのは静かに隠密なんだけどね!!」



まるであの男と逆。

暗殺を得意として、派手にやり合うのが好きな男
派手にやり合うのを得意として、隠密を好む男



実は「奴」というのは正統派だった。


しかし、「正統派」だからと言って、許されるかどうかは、また別の話。







to be continued

 
 

 
後書き

と、いうわけでやってきたのは「奴」でした!!
久しぶり!!良く帰ってきた!!

「奴」
「いやまぁそれほどでも///」


だが数話以内にやられていただきます。


「奴」
「うをいっ!?」


だーってお前がいるってことは当然あっちだって・・・ねぇ?

「奴」
「ねぇ?って・・・・」




蒔風ですらあれだけかかった「EARTH」メンバーつぶしを、こうしてとんとんと進めていくあたりやはり奴と蒔風の力の違いが分かるというものです。


「奴」
「それにあいつコスい手段使ってたしな」



そう、そこも違い。

同じだが、真逆。
戦闘方法とかももうこいつの方が主人公っぽい


ではなぜ今までそうではなかったのか。
こんなまともに戦っちゃって、「奴」にしてはちょいと大人しい方ですよ?


「奴」
「ま、途中に出した黒球で一気になぎ払ったりもできるしな」




でもそれをしない。
至って理性的。

あの狂気はどうしたんだ!?


というところで次回なんですよ!!


「奴」
「次回はメンバーつぶし後編!!11eyesメンバーとかもう空気だったな」


・・・・・・


「奴」
「忘れてただろ」


・・・・もう出てこないかも


「奴」
「ファンに殺されてしまえ」



だってだって!!あのときはこう・・・間隔が短くなっちゃうと思ったんだよ!!

だから場つなぎとして入れただけの世界が結構あったりしたり・・・・・




「奴」
「わかった。俺の敵は主人公じゃなくて作者、お前だ」



今更気付いたかウスラトンカチめが!!




じゃ、今から「奴」とバトってくるんでこの辺で!!



ではまた次回

 
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