世界をめぐる、銀白の翼
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第三章 X《クロス》
決着
クラウドが剣をかざす。
空の頂点に太陽が差し掛かり、まるでその決起を祝福するかのように光が彼を照らす。
赤い粒子を見にまとい
黒でありながら美しく輝く翼をはためかせ
クラウド・ストライフが長年の敵に、牙を剥く。
「ウォァァァアアアアアアアアアアア!!!!」
いつもの彼とは違う、そんな咆哮を上げてクラウドがセフィロスに切りかかってゆく。
ゴガッ!!
上段から振り下ろされるその剣を、セフィロスが難なく受け止めた。
しかし、その足元がガボン、という壮大な音を立ててめり込みクレーターを作り出す。
「なに・・・・!?」
その予想外の力に、らしくもなくセフィロスは困惑した。
一体どこにこんな力が?
そのセフィロスに対し、クラウドが一言一言紡いでゆく。
「絶望は確かに大きな力かもしれない。しかし、人はそれを乗り越える」
オォッ・・・・
「誰かを護りたいから、誰かと繋がっていたいから。その思いが、立ち上がる力になる」
ギチッッ
「想いは、決して個別の物じゃない。あんたが絶望を糧にするなら、オレはそれも越えてすべてを力にする!!」
ズ、ガォッッ!!!
クラウドが上から振り下ろした剣を、グルリと下に回して打ち上げ、セフィロスの剣を弾きあげる。
連動する想い
理解した翼人に、負けはない。
クラウドが剣を一層握りしめ、合体剣の中心であるファースト剣を除くすべてが真上に向かって飛び出していった。
そして、そのうちの二本がセフィロスの膝を貫き砕く。
崩れ落ちるセフィロスの、上を向いていく上体の肩に向かってさらに二本が落ちてきて突き刺さり、地面と身体を縫い付けた。
「ッア!!」
「ッッ!!」
そのセフィロスに向かってクラウドが剣を突き立てようと両手で握り振り上げ降ろす。
が、セフィロスは肩がブチブチという音を立てるもかまうことなく、剣が肩と膝に突き刺さったまま無理やり起き上がってその剣を回避、真上に跳躍した。
そのセフィロスを見やって、クラウドも跳び剣を下段に構えて上空のセフィロスへと突撃してゆく。
それに対し
「落ちろ」
と一言いい、セフィロスの翼に、恐ろしいほどの輝きを放つ銀色の粒子が集まっていき、その間を稼ぐかのようにセフィロスの体に刺さった四本の剣を抜き、自らの長刀でクラウドに向かって弾き飛ばした。
猛烈な勢いで主に迫るクラウドの剣。
が、開翼したクラウドはそれを回避しながら自らの剣に打ちつけ、次々と結合、合体させていく。
その対処に、セフィロスは驚くこともなく淡々とクラウドを見る。
まるでありきたりの展開に、飽き飽きしたという顔をして
しかし、ありきたりというものは
正しいからこそ、幾度も幾度も取り扱われる事項なのだ。
「セフィロス。あんたにその翼は使えない」
目の前に巨大なエネルギーの塊が出来上がっていく。
この世界には、絶望などどこにでも転がっている。
いくらでもその力は集まる。
「「判断」はお前に必要ない・・・・与えられた使命をただ全うしろ」
ゴオオオオオオオ――――――――――
「だが・・・・たまには果てなき絶望に潰れ、這いつくばって眺める世界というのもいいものだろう?」
セフィロスはわかっていない。
確かに、この世に絶望はいくらでもある。
それは正しい。この世界は、悲しいことばかりだし、絶望するには十分すぎる要素で詰まっている。
しかし
この世界にあるのがそれだけしかないと言うならば、この世界はとうの昔に破滅している。
それを乗り越えてきたからこそ
数多くの絶望を踏み越えてきたからこそ
この世界は今もこうして、誰の手にも落ちることなく存在している。
この男はこの世界を手に入れることはできず
そして、この世界の護り手にもまた、勝つことはできない
その証拠に
「あんたにその輝きは似合わない・・・・・!!!」
翼の輝きすら、彼に順応していなかった。
セフィロスがため込んだ絶望の粒子をクラウドに向かって放つ。
が、クラウドが剣を振ってゆくとそれは綿毛に息を吹きかけたかのように軽く消えていってしまった。
「その程度か、絶望」
斬ッッッ!!!
そして、剣がセフィロスの体をすり抜けた。
セフィロスが驚愕するよりも、早く。
だがセフィロスも当然それをガードした。
しかし、セフィロスの長刀は魔晄と勇気で発光した剣の前にはもろくも砕け、そこから十の光が飛び出していってしまったのだ。
背中の翼までが切断され、それが無数の羽となって消えていく。
セフィロスの体は斬られたにもかかわらず、血は流れていなかった。
しかし、そのコートの下の服は避け、通過した部分は真っ赤に焼けただれ、今まさにさらに発光していっている。
「・・・・ここまでか」
ボロボロと塵芥のように崩れていく自分の手を見、セフィロスがつぶやく。
そして、地上に降り立ったクラウドを一瞥し
「お前がいる限り・・・終わらないさ」
そう一言だけ言って、セフィロスは消えた。
あたりには、キラキラと光る羽根が、まるで祝福のようにきらめいていた。
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そして
戦いから、数時間後
「EARTH」の医務室はまだ、負傷したメンバーを収容出来るほど復興していなかったために、メンバーは聖王教会付属病院を訪れていた。
その一室。
そこで、クラウドは別途に横になり、体中に包帯を巻いていた。
窓の外を眺めると、そこには広々とした中庭があり、そして・・・・・
「あぅあぅ~待つのですよー」
「まったく・・・あんたら病み上がりなんだから大人しくしてなさいよー?」
「にぱー。わかりましたですよ、胸の小さなおねーさん」
「今なんつったコラァ!!」
「ん、ハチミツ」
「わ、ありがとう!おいしいんだよー、あまいんだよー♪」
「こっちだよー!イクスー!」
「せ、聖王殿下・・・」
「もー、その呼び方は禁止ー!」
はしゃいで駆けまわる、少女たちがいた。
中には座って休んでる者もいれば、芝生で眠っている者もいる。
しかし、そこには平和な、いつもの光景が広がっていた。
「こいつがうまく効いてよかったよ」
と、クラウドの部屋にやってきたのは上条だ。
セフィロスを倒し、彼女らが解放された瞬間に魂はその身体へと向かって復活した。
彼女らはすぐに目を覚ますことはなかったが、ただ一人だけ、イクスヴェリアだけはすぐに目を覚ました。
そして、言ったのだ。
自分の中のマリアージュを作り出す機能は止まってはおらず、またいつ暴走して吐き出し始めるかわからない、と。
だが、そこに現れたのがこのツンツン頭の幻想殺しだ。
その胸にポンと手を当ててただけでその機能は簡単に消滅した。
副作用として、いきなり触った彼がイクスとスバルに張り倒されただけだ。
その現象に驚いたイクスだが、スバルからの言葉を思い出し「生きていこう」と思ったらしい。
彼女の人生は、ここから始まる。
「・・・・いい光景だ・・・な」
「まさかあんた・・・・小さな子が・・・好きなのか?」
ドンッ、パキュィン!!
クラウドが魔法を放ち、上条がそれを消した。
高度なツッコミとボケである。
ちなみに両者とも見ていない。シュールだ。
「でも・・・戦い、手に入れたかいはある・・・そう思える光景だよな」
「ああ・・・・この小さな窓から見える光景の為に、俺たちはいつでも命がけで戦ってきたんだ」
太陽は頂点に差し掛かってから少し傾いたところにある。
その日光は明るくともやわらかなもので、彼女らをやさしく照らしていた。
・・・・彼らは気づいていない
今見えるこの光景がどれだけ得難いものだったかということを、彼らは知らない。
「彼」が「この世界」に勝ったのは、二度の敗北の後、三度目の戦いでであった。
しかし、彼らは一度で救いきったのだ。
救えるものを、根こそぎ救う
彼らはまさに、彼以上のことをやってのけていたのだった。
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『・・・・乗り越えてきた・・・だと・・・・?笑わせる・・・・その障害を、誰が与えてきたと思っている・・・・』
この世界の、物質に存在を頼らない空間。
そこは広い広い空間で、上下前後左右すべてが真っ白だが、足元数メートル下には蒼緑の光が流れている。
立っているのか、浮いているのかもわからないその場所で、セフィロスは静かな怒りを覚えていた。
『お前が強くなれたのは私がいたからだ・・・・それをさも自分の力であるかのように言っている貴様は滑稽だ・・・・』
まるで負け惜しみ。
しかし、彼自身にしてみれば、それは重大なことなのだろう。
足元の光―――ライフストリームを見て、セフィロスの体が少し引かれる。
『・・・私は呑まれん』
しかし、その引力を引き千切るかのようにコートを翻し、その真逆へとセフィロスが歩いていく。
『個を失い、世界の循環器の一部になど私はならない。私には、母の願いを全うする必要がある』
星を我が手に
そして、新たなる土地へ
この星がどうなろうとも、必ずこの世界は私のものに
それは思考だったのだろうが、この空間においては声と変わらない。
次はどうした手でいってやろうか。
そういえば、前に復活した時に利用した「あいつ」は記憶を・・・・
そこまでセフィロスが思考した瞬間
ザッ、ギィ!!
その目の前に、二本の何かが落ちてきてその行く先を遮った。
それは、大きなバスターソードと、金属製のロッド。
X字になって前を遮るそれに、セフィロスは見覚えがあった。
しかし、持ち主の気配はしない。
当然だ。彼らはすでに足元の流れの中にいる。
この空間に足場はあってないようなもの。
このように足止めされても、下や上、左右に回り込んで進めそうなものだ。
だが、セフィロスはどうしてもその前に進むことができなかった。
『これ・・・は・・・・!?』
『ようやくあなたを、星に害を及ぼさないように受け入れることができるようになったよ』
『クラウドにはメーワクかけちまったなぁ』
『だいじょうぶ。クラウドなら、何度も立ち上がるよ』
どこからか、声が聞こえる。
聞き覚えのある、その声。
一人は自分を最初に殺した男
もう一人は、自分が殺した女
姿はない。
ただ、声だけが聞こえてきた。
そして、邪魔をする二つのそれに目を見張るセフィロスの背後に、誰かが現れた。
ったくよー
せっかく静かにしてたのに、おまさんがこんなことするから起きちゃったじゃんよ
声ではなく、そんな思考が空間に響いた。
先ほどの二人とは全く違う声。
しかし、聞き覚えはある。
しかも声だけではなく、その男はセフィロスの背後にしっかりと立っていた。
響いたそれに反応し、セフィロスが振り返ろうとするがそれよりも早く後ろから頭を掴まれ、その顔を見ることができない。
《人の翼引っぺがしといてあっさり負けるとかやめてくんない?俺まであっちに連れ出されそうになっちまったじゃないのよ》
『貴様・・・・!!』
《イレギュラーな死、っつーか消滅だったからねぇ~。早かった分の時間、ここで待ってんのよ。お前の方はもう終わりだけど》
『私は・・・・消えんぞ!!』
《ああ・・・命は消えないさ》
セフィロスの体に、足元から伸びてきたライフストリームの光が絡みつき、グン、グン!!と引きずりおろしていく。
みるみる下がっていくそれを見下ろして、あとから現れた男が立ったまま一言最後に言った。
《めぐるだけさ》
『・・・・・・・・・・・・・!!!』
その言葉が聞こえたのかどうかは分からない。
しかし、セフィロスは何かを叫びながらドンドン引き込まれていきそして・・・・・
ライフストリームに飲まれ、浄化、循環する命の一つへと還元されていった。
《終わらせるのは・・・やっぱ世界だったか》
男が、見上げる。
そこに何があるというわけではない。
しかし
《こぉ~りゃ・・・・もしかするとだねぇ・・・・・》
そしてその場に光が満ち、男の姿が消えて行った。
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翌日
「EARTH」の周辺に突き刺さった十五天帝のうちの一本、青龍の前に「EARTH」メンバーの大半が集まっていた。
青龍の一番前には一刀が立ち、理樹と観鈴も一緒にいる。
クラウドは少し離れたところでバイクに寄りかかってその様子を見ていた。
「なあ・・・あんたがいなくなって一年たったけどさ」
それは報告だ。
ただの活動報告。
一周年でも、一周忌でもない
彼は、いなくなってたとしても、死んだわけでもないのだから
「世界は・・・・今日も平和さ。な~んにも、なかったさ」
ニカッと笑ってそういう一刀。
何一つ変わりない世界。
何もなかった。
結局報告はこうなった。
しかし、その中には多くの想いが詰め込まれている。
太陽が眩しい。
その中に、光る羽根が見えた気がした。
to be continued
後書き
いやぁ、あっけない「ラスト」と、「その後」っぽいのです!!
セフィロスを強そうに描写しきれなかったなぁ・・・・くそぅ
そしてやっぱり戦闘後ってメチャクチャ苦手ですwwww
なんかおかしかったら言ってください。
蒔風
「そして祝、俺出演」
そうだね。
ちなみに最初の武器は言わずもがな、エアリスとザックスのです。
まあ二人はもう完全にライフストリームになっているので、あくまでも残った残留思念とでも思ってくれれば。
武器は蒔風がやりました。
流石やでぇ・・・・
蒔風
「これでセフィロスも終わりか。もう出てこないよな?」
あくまでもこの小説で出す予定はないです。
ま、必要に迫られればどうにかして出しますがね!!
蒔風
「イクスも無事この時代で生きていくことができてよかった」
そこは上条さんです。
マジパネェっす。
中でも言いましたが、彼らには蒔風を超えていってもらいたいという思いを込めていました。
蒔風
「俺は「なのはシリーズ」の話には二回も負けているからね」
そして、三度目でやっと打ち勝った。
それをたった一回でやり遂げた彼らは、間違いなくすごいのです。
蒔風
「とはいっても、帰ってくるしね」
まね
と、いうわけで次回、ついに帰って来た!?
蒔風
「ではまた次回」
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