世界をめぐる、銀白の翼
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第三章 X《クロス》
裏目
森の中から桜の雨が立ち上っている。
それを眺めて、ブロッサムアンデットが呟いた。
「・・・・・この中でいまだ息をしているといったあたり、やはり翼人か・・・・」
下から撃ち放たれていく桜の雨で、すでに観鈴の姿は見えなくなっている。
だがしかし、ブロッサムアンデットはその中で観鈴がまだ生きていることを知っていた。
なぜならば、感じるからだ。
自分の力で打ち出された雨のすべてが、ひとつ残らずいなされているということを。
「これだけの中にさらされながらも、逸らしきるとは流石だ・・・・流石すぎる。だがその流石もここで終わらせてもらう」
ブロッサムアンデットの腕に、エネルギーが溜まっていく。
今までと同じ砲撃だ。ただ今は、それを受ける相手の状況が違う。
「ここでこいつをぶっ放されて、貴女に防ぐすべはない!!」
キュボ、ドウッ!!
ブロッサムアンデットが放つ。
砲撃が迫る。
細い桜の雨を押しのけながら、それが観鈴へと到達し――――――
バチィ!!と弾かれた。
ブロッサムアンデットの首が傾く。
「なに・・・・?」
「アアアアアアアアアアア、はぁっ!!!」
ヴォォオン!!!!
その瞬間、観鈴が最大開翼したその勢いとオーラによって、桜の雨のすべてが吹き飛ばされた。
口元を切ってしまったのか少し血が流れており、服もすすけてはいるがいまだに観鈴は立っている。
ただ、体力の方は――――――
「はぁ・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・・」
「あ、あの状況で弾くとは・・・・ふふ、面白い。しかし逆に言わねばそこまで大きく開翼しなければもう私の砲撃は弾けないということ!!もう底が見えたぞ、翼人!!」
「はぁ・・・・フゥ―――――――」
うろたえながらもそう言い放つブロッサムアンデットの前で、観鈴が目を閉じて深呼吸するように体と翼を開いた。
それはブロッサムアンデットからすれば観念したのだろう、と解釈できる。
だが、その解釈は当然のことながら違う。
全く持って、それは間違っている。
「・・・・・人を想うことに、限界ってあると思う?」
「なに・・・?」
「そんなものはないよ。誰かを思う気持ちに、限界なんてない」
真っ白な光の粒子が観鈴に集まり、まるで雪でも振っているかのように彼女を覆った。
それに応じて彼女の怪我はもちろん、体力までもが全快されていき、翼がさらに大きく開かれていく。
「だから・・・私の翼も・・・・愛情の翼にも、限界なんて、ないんだよ」
この少女は、純白
「体力を削った?うん、そうだね。でもね?今だったら――――――」
この少女は、世界最愛
「私の方が、あなたより強い。だってこれは、ここには・・・・ここに集まった人たちのあの子たちを想う愛情で満ちているんだから!!」
世界にはそういうモノが満ちている。
ゴォウ!!!
神々しいまでの純白の光を放ち、観鈴がブロッサムアンデットへと掌を向ける。
それに対し、ブロッサムアンデットが悲鳴にも似た咆哮を上げながら同じように腕を向けた。
森中の、すべての花びらがその腕に集束、圧縮されていく。
その大きさはすでに今までのモノとは一線を画するものだ。
あまりの数の圧縮に、今までは美しい桜色だったそれが、ドス黒くなってしまっているほどに。
「オオオオオオオオオオオオオおおアアアアアアアああああああああああ――――――喰らえェ、これで!!!」
ゴギュアァァァァアアアアアアアアアアア!!!!!
「衝撃波ごと、吹き飛んでいけェ!!!!」
ボッ、ギュゴォオオッッッ!!!
ブロッサムアンデットが砲撃を放ち、その反動で体が大きく仰け反った。
あまりにも強大な反動に、砲撃を撃った右腕が吹き飛んでしまい、肩から先がなくなった程だ。
だがブロッサムアンデットはそんなこと気にしていない。
これで、これで終わったのだ。
こいつが防ぐすべなどありはしない!!!
確かにそうだろう。
それが、感情を集束した翼人でなければ――――――!!!
ゴォッ、ギィィィイイイイイいいいいいいいン!!!!
高音速の音がする。
それは観鈴の腕からしていた。
衝撃波の渦。
力を受けるのではなく、流し、巻き上げるようなそんな形。
それを以って、彼女は砲撃のすべてを腕に吸収していっていた。
「な・・・ん・・・・」
「あなたの振るってきた力・・・・」
そして、その吸収されたエネルギーがキラキラと光りながら純白へと色を変えていく。
まるで邪なる意志から解き放たれ、浄化されていくかのように。
「そのまま・・・じゃないけど、きれいにして、返すよ!!!」
ブンッ、ドォッ!!!
観鈴がそのエネルギーの塊を投げ放ち、猛烈な勢いでブロッサムアンデットへと突っ込んでいった。
その威力は彼自身が一番知っている。
森と呼べるほどの大量に生やした桜の木。
その花びらすべてをエネルギーとし、砲撃にした。
邪神が復活した時の切札にとっておいたそれを、そのままそっくり、更には彼女のエネルギーまで上乗せされて、放たれたのだ。
放つのにも右腕一本代償にしたというのに、受け止めるすべなどあるはずがない・・・・・・!!!
「オオオオオオオオオオオオオ!!」
だから、躱す。
ブロッサムアンデットは全力で動き、その砲撃から回避しようと全身の筋肉をフル稼働させた。
しかし
パァンパァンパァンパァンパァン!!!!
砲撃の横脇から衝撃波の薄い膜による先導で、その向きが修正される。
回避したブロッサムアンデットに向かってそれは確実に突き刺さり・・・・・
「ひ・・・・いアアアアアアアああああああああああアアアアアアア!!!!」
彼の視界を白く染め上げ、さらにその全身を包み込んで吹き飛ばした。
バキリとベルトが砕け、砲撃が撃ちきられた跡にはなんだかよくわからない塊が転がっているだけだった。
それに観鈴が近寄って、カードをえい、という声を出しながらトスリと刺すとその塊はカードに吸収され、さらに絵柄も消滅した。
「ふう・・・・やった、観鈴ちんいぇい!!」
周囲はプスプスと煙を上げているが、その中で観鈴がだれにするわけでもなくピースをして勝利を謳った。
残りは、あと二体。
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「ホントに行くつもりなの?」
「今ならいけますし、この「旅の鏡」なら一発、ですよね?」
「そうだけど・・・・この人もついていくなんて・・・」
「彼は石版の解析にはどうしても必要な人物です」
「それに僕もついている。大丈夫さ」
瞬風
そこの一室で、新たに来たフォワードとイマジンにコックローチアンデットを任せて海東を運んできた翔太郎とフィリップは、長岡達がこれから何かをしようとしているのを見て、話を聞いた。
なんでも石版のもとに行き、大本から断ってしまおう、というつもりらしい。
その為に石版を解析する役目を受けてスカリエッティも同行するそうだ。
そして後は誰かが回復し次第、同行を頼むつもりだった、という話である。
それを聞いてフィリップは自分が行くと手を挙げた。
確かにコックローチアンデットとの戦闘で疲労はしているものの、エクストリームになったのは途中からだったので比較的ダメージは低く済んだのだ。
だから自分が変身して、ファングジョーカーならついていける、ということだ。
それを断る理由など何もない。
そういうわけで今、シャマルの「旅の鏡」で石版のもとに直行するつもりなのだ。
「でも石版の目の前は危険すぎるわ。少し離れたところに開くから、そこから先は・・・・」
「解ってます。それだけでも十分ですよ」
「出来れば私も行きたいのだけれど・・・」
シャマルも当然行こうとしたのだが、ここには次々と負傷者がやってくるので彼女がいなくなればかなりの負担になる。
向かうのは長岡、スカリエッティ、フィリップ(Wファングジョーカー)、そして長岡に凩がついていく。
これ以上いると気付かれるし、石版の破壊だけならばフィリップだけで十分すぎるからだ。
「気を付けて」
「はい」
そういってシャマルに手を振り、彼ら三人と一匹がシャマルの開けたゲートをくぐって外に出る。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そうして、たどり着いたのは穴の近くの木の根元。
この穴はクラウドが開けたもので、この下には空の洞窟と十人の少女、石版があるだけだ。
木の裏側にたどり着いた彼らは、少し顔を出して穴の周囲を見る。
どうやらほとんどのアンデットは他のメンバーとの戦闘に向かってしまっているらしく、周囲には三体ほどのアンデットしかいなかった。
それを見てWが獣じみた動きで三体をすべて、死角からの一撃で撃破、カードに封印してゆく。
そして三人と一匹が穴から内部に侵入し、石版の前にたどり着いた。
「・・・・これは・・・」
「興味深いねぇ、好奇心がわくねぇ、ゾクゾクするねぇ!!」
「ドクター、それは僕のセリフだよ?」
「おっと、そうだったかい?」
石版を前にしてスカリエッティが興奮し、できることなら邪神も見てみたいが、とつぶやきながら手元にコンソールを出現させてカタカタと叩き出した。
どうやら解析にはもう少しかかるそうだ。
周囲を警戒しながら、Wと長岡がスカリエッティを囲む。
Wは拳を握り石版側を、長岡は銃を構えて少女たちがいる方を。
しかし、二人はそれぞれ何かがおかしいことに気付いた。
Wは気づく。
自分の前にある石版がうっすらと光を放っていることに。
長岡も気づく。
少女たちの前にある光のリングが、きれいな円形を描いているということに。
「長岡さん」
「フィリップ君・・・・」
「「これは」」
「発動してる!」「安定してるわ!!」
「どうやらそのようだね」
コンソールのモニターを見ながら、スカリエッティが結論を言う。
この石板はすでに起動している。
少女たちの魂は安定し、石版に流れ込んでいた。
「そんな・・・・なぜだ!」
『俺たちが来たときには安定していたなんて反応はなかったぜ!?』
「待ちたまえ・・・ふむ・・・・なるほどこれは・・・・」
フィリップの驚きと翔太郎の質問を、スカリエッティが流して考え込む。
そして、その考えが一つの答えを出した瞬間。
ドゴォッッ!!!
そこに漆黒の拳が叩き込まれ、三人の姿が粉塵に消えた。
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少し前
「このクマ!!なんで良太郎おいてきちまうんだよ!!」
「すまんなぁ、あっはっはっは!!」
「キンちゃん笑い事じゃないでしょ!?」
「来ますよ!!!」
ドンドンドンドンドン!!!!
イマジンズが言い合っているうちにコックローチアンデットは八人に突っ込んできて次々と殴り飛ばしていく。
ティアナとキャロ、リュウタロスの弾幕を避け、スバルを投げ飛ばし、キンタロスを殴り飛ばし、ウラタロスを足蹴、踏み台にして空中二段蹴りでスバルとモモタロスを蹴り飛ばした。
そして振り下ろされた拳をティアナが腕を頭上でクロス、ダガーにしたクロスミラージュで受け止め、リュウタロスがその腹に向かってリュウボルバーを向け、キャロのブーストで強化された弾丸がぶっ放された。
その衝撃にコックローチアンデットの体がくの字に曲がり、ズザザザザッ!と地面を滑るように後退していった。
しかし少し行ったところでガッ、と踏みとどまり、まるで腹筋に力を入れるかのような姿勢から腹をさすりながら頭を上げる。
そのさする腹からはプスプスという音と薄い煙が上がるが、それだけだ。
大したダメージではあるまい。
「フゥ~~・・・・なかなかいい連続攻撃だ。だがまだ浅いな」
「ちっくしょう、良太郎と一緒ならこんなヤロォ」
「しゃーないやろ。いないもんは!!」
「置いてきたのはテメェだろうが!!」
相手の攻撃を称賛しながらもまだ余裕を見せるコックローチアンデットに、なかなか思い通りの力が出せないタロウズ。
そもそもイマジンは他人の記憶に依存する存在だ。
この四人はすでに確固たる存在としてここにいはするものの、彼らの戦いの記憶の大半は「電王」となってのモノ――つまりは誰かに憑依してのことが圧倒的に多い。
もちろん彼ら四人が弱いわけではない。
しかし誰かに憑依し心を通わせた方が、より力を発揮できるというのも確か。
例外として単独で「変身」した時も同じ効果が得られるのだが、あくまでもあれはライダーパスを持っているときのみ。
よって今の状況が、彼らが思い通りにならないのも無理はないのだ。
「あんのヤロゥ・・・・どっかに使える身体がありゃぁ・・・」
「先輩、それは・・・・まてよ・・・?」
「なんだよカメ公、言ってみ・・・あぁ~ん・・・・」
そう愚痴をつくモモタロスをウラタロスがなだめていると、何かを思いついたのか顎を手でさすりだした。
その様子に何かあったのかとモモタロスも同じ方を向き、彼も納得した。
そこにはエリオが槍を構えて突進し、電光の力で辛うじてコックローチアンデットについていって、それでも片膝をついてしまっているところだった。
「そういうことかァ!!トゥアッ!」
そして、モモタロスが駆ける。
身体が薄くなって光り、その体に飛び込み・・・・・
「俺、参上!!!」
そう叫んだのは、かわいらしいキャロの口からだった。
「んなにぃーーーーーー!?」
「ごめんねぇ、先輩。でも武器的にもボクがこっちでしょう?」
そういうのはエリオ―――否、エリオに憑依したウラタロスだ。
どうやらモモタロスを押しのけてこちらに入り、肝心のモモタロスはキャロの方に押し退かされてそのまま入ってしまったのだろう。
「なぁンでテメェがそっちなんだよ!!?テメェは色的にあっちじゃねェのか!!?」
「いやぁほら、僕女の子につく趣味はないからさぁ。それに・・・・・」
「こっちはオレが入ってしまったからなァ!!フンッ」
そういって顎に手を当ててゴキリと首を鳴らすスバル(キンタロス)。
目の色が何の前兆もなしに変わったので戦闘機人モードかどうかとかティアナが驚いたが、直後に紫の光が入り込んで彼女も少し変わった。
と、言うかいちばん変わったのは彼女だ。
執務官のバリアジャケットには何やらストラップがいくつもあり、ヘッドホンを首からかけているのだから。
そしていい笑顔。
「銃使いの子もーらいっ。銃が二つあるって面白いよね?」
『え?え?えぇ!?』
「すまんなぁ。だがオレはおまえさんのガッツが気に入ったんや!!」
『わ、私はいいですけど・・・・とりあえず笑顔のティアを一枚』
「僕が一番しっくりくるね。ま、少し目線は低くなったけど」
『ひょ、憑依ですか・・・なんだかおかしな気分ですね』
「な ん で 俺がこのちびっこなんだよ!!いだっ!?このチビドラゴン噛みやがった!!」
『ふ、フリード、私も痛いよ~。あ、あの、ちびですみません・・・クスン』
「な、泣くなよおい・・・・だぁー、わかった、俺が悪かった!だから泣かないでくれって!!お願い!お願いお願い!!」
何やら漫才を繰り広げる八人。
それを眺めるコックローチアンデットはポカーンとしてしまっている。
外から見ている分には四人がそれぞれ一人漫才をしているようなものなのだから。
「ったく・・・ンなことしてる場合じゃねぇ。なんのためにこうなったか、おめぇら、忘れんなよ!?」
「おう!!」
「もちろん!」
「オッケー!」
タロウズが横に並び、各自の武器を手に取る。
と言ってもキャロのみはモモタロスォードだが。
『わ、私剣なんか使ったことないですよ!?』
「大丈夫だ。お前は俺を信じてろ。あとはツッこみゃあどうにかなる!!」
『どうにかってェ!?』
「行くぜ行くぜ行くぜェ!!!」
そう叫び、ソードを振り回してキャロが走り出し、コックローチアンデットに切りかかて行った。
気合いと共に振り下ろしたそれをコックローチアンデットは受け止めもせずに、高速移動で背後に回ってその小さな体をつぶそうと拳を振り下ろす。
が、その拳は当たらない。
振り下ろし、標的を外した剣を、そのまま後ろに向きながら今度は斜めに振り上げてコックローチアンデットの胸を切りつけたからだ。
その拳を抑えてコックローチアンデットがうろたえるが、キャロは―――というかモモタロスは―――剣を眺めるように持ってすげぇと感嘆の声をあげていた。
それはそうだろう。
モモタロスの戦闘における経験、勘、そして嗅覚。
そこにキャロの探知魔法まで入ってくるのだから、見えなくったって直感で動く彼には相手がどこに逃げたかは手に取るように分かる。
「おぅ・・・・びっくり」
「こっちもいるよ!!」
『ストラーダ!!』
そして、さらにはストラーダの突きも迫りくる。
もともとウラタロスもロッド使い。そこにエリオの力も来ればそれはもう猛烈な・・・・
「なめんなや!!」
ガキィ!!!
しかし、その突きをコックローチアンデットは肘と膝で挟み込み、引き寄せてエリオの動きを止めた。
エリオの持ち味は速さだ。
内部にウラタロスがいる以上、雷の力での運動神経増加などできないのだから、技術は上がってもそこが足りなくなってしまう。
そこにキャロ(モモタロス)が斬りかかるが、あっさりと剣は掴まれてキャロの小さな体ごと投げ飛ばされてしまう。
「ちょっと先輩!!その子のことも考えてよ!?」
『キャローーーーーーーーーー!!??』
「わりぃ、怪我ねぇか!?ってか俺がこっち入ったのはオメーのせいだろうが!!!」
『ふぇえ~~~、だ、大丈夫ですぅ~~~~』
精神面で(どうなってるのか知らないが)目を回すキャロに、ウラタロスに文句を言うモモタロス。
それを見て、スバル(キンタロス)が大きく四股を踏んで気合を一発。
リボルバーを回して、その拳をコックローチアンデットの脳天に向けて振り下ろした。
が、それをコックローチアンデットはすんでのところで回避し、拳は地面に叩きつけられる。
すると円形にピィン・・・と力が浸透していき、そこを中心に地面がざらざらと崩れていくではないか。
「わー、クマちゃんスゴイ!」
『ちょ、これ流砂!?』
『こんなこともできるんだ・・・』
そのあまりの威力に、全員が絶賛。
これがイマジンとの・・・・
「殴ったら地面も壊れおったで!?」
なんでもありませんでした。
「おいおい、足場あんなにされたらさすがに・・・・」
「いえーい、バンバン!!」
「ぬお!?」
と、回避したそこにティアナ(リュウタロス)がクロスミラージュでコックローチアンデットを狙い撃ちしてきた。
むちゃくちゃなフォームで撃ってるくせに狙いは的確。
中のティアナはクロスミラージュの制御をしながら泣きました。
「ち・・・数が多くてもあのレベルならよかったが、質が上がっての四人じゃチト手こずる・・・・」
その弾丸を腕で顔を覆うようにガードするコックローチアンデット。
その両足がメキメキと音を立てて最高速度で瞬時に片づけに入るか、とした瞬間。
「・・・・・?・・・・はぁん・・・・そういうこと!!」
何かを感じとったのか、コックローチアンデットが弾丸を背中に浴びながら、その場から逃走。
それを見た四人が追いかけ始めた。
「みなさん!!フリードに乗ってください!!」
その後を追おうと、キャロが憑依を解いてもらってフリードを巨大化させる。
イマジンの憑依は慣れないと非常に体力を食う。
実際四人の体は汗だくだ。
コックローチアンデットの後を追っていく。
その後を、フリードに乗った八人が追う。
そして、時間が追いついていく。
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洞窟、石板前
ドゴォッッ!!!
そこに漆黒の拳が叩き込まれ、三人の姿が粉塵に消えた。
その拳の持ち主はコックローチアンデット。
石板で何かが起こっていると感じ取り、即座に戻ってきたのだ。
「・・・・・避けるか。だが犬一匹死んでないのはショックだぜ?」
そのコックローチアンデットが上をクイ、と見上げると、そこには背中に長岡たちを乗せ、壁にしがみつくファングジョーカーがいた。
そのままWは天井の穴から地上に出て、コックローチアンデットもその前に躍り出す。
「陽動作戦・・・・ま、来るとは思ってたけど」
「そもそも、もとから考えていた作戦じゃなかったしね」
コックローチアンデットの言葉に、フィリップが返す。
こいつの力は知っている。知ってはいるが、とても相手にできるかどうか・・・・・
と、そこにスバルたちも到着した。
結構な数のメンバーに囲まれ、コックローチアンデットが面白い、とでもいうような仕草を取った。
ちなみに、モモタロスたちは途中で良太郎を見つけて飛び降りて行ってしまった。
今頃は楽しく(?)ジークと言い合いをしているだろう。
が、彼らにとってそれは今どうでもいい。
今聞くべきことはただ一つ・・・・
「何故あの石板が発動している!!」
そう、そこだ。
彼らが突入する前に見たサーチ映像では、あの中ではどのようなエネルギーも(アンデットのもの以外は)観測されなかったし、石板もあんなになっていなかった。
それが今は発動している。
一体どういうことなのか。
「は・・・・なんで桜の大将があんたら呼ぼうって言ったと思う?」
『なに?』
「・・・なるほどねぇ」
その言葉に翔太郎が聞き返すが、ただ一人スカリエッティだけが理解していた。
「何かわかったの?」
「ああ、わかるさ。というかなぜわからないんだい?ゼロセカn――――」
「スバルです」
「おや、それは失礼した。そういえば君にはチンク達の面倒を見てもらっていたね」
「それはそうと、どういうことなんだ?」
勝手に話すスカリエッティに、エリオは少しイラついたように聞く。
それに対しスカリエッティは軽快に答えた。
「君らは捕まった人間が何を求めると思うかね?」
「・・・・・助け・・・まさか!!」
「そして、まさに君らがきた。おそらくその瞬間だろう。少女たちは安心した。それでさ」
『俺たちが来て安定して・・・・邪神復活に導いてしまった?』
「そうなるね」
「その通り!!あんたなかなか頭の回転速いねドクター?」
邪神に魂と捧げるための、十人の少女の心の安定。
しかし、それはいくら待っても無理だった。アンデットも三日でやれると見込んでいたのだが、どうしてもそれで出来る気がしていなかった。
だから安定させるために、彼女たちが何を望んでいるのは何かを考えた。
自由?
それはできない。ここから出すわけにはいかない
家族?
連れてくるには骨が折れる
助け?
まさにそうだ。助けが来れば、こいつらは必ず安堵する。
石板はその瞬間を見逃さない。
そして、ブロッサムアンデットが桜の森を出現させ、彼らをこの地に呼んだのだ。
果たしてそのもくろみは果たされた。
いま、石板は少女たちの魂を吸っている。
「させるか!!」
「おっと行かせねぇ!!!」
Wが穴へと駆けながらベルトのホーンを押す。
透かしそれが二回鳴らされたところでWは見えない程に速く動くコックローチアンデットに殴り飛ばされて地面に倒れた。
「な・・・!?」
「は、速い・・・」
「見えなかった・・・・」
この場の誰一人。
エリオですらもとらえることのできない速さ。
それを以って、コックローチアンデットはたった一人で石板の防衛網を築いていた。
「さて・・・どうしてくれるかなぁ?とりあえずなんか起こされるとまずいんで・・・・」
ゴッ、ォオ!!!
「あんたから消えてもらおうかな!?巫女よ!!!」
コックローチアンデットが遊び口調で、しかし気配は本気で、そう言って姿を消す。
そして直後、その黒い姿は長岡の目の前に現れて・・・・・
一つの身体を大きく殴り飛ばし、その体に鮮血を浴びた。
to be continued
後書き
どうも、武闘鬼人です。
武闘鬼人 of the 武闘鬼人
武闘鬼人の中の武闘鬼人。
実を言うと「2010年度武闘鬼人オブザイヤー」に輝いた武闘鬼人はこの武闘鬼人なんですよ!!
蒔風
「何を言ってるかさっぱりわからん。とりあえず内容いけ」
ブロッサムアンデット撃破!!
そしてやりたかったフォワードでのイマジン憑依ができて僕満足!!
もう思い残すことはない・・・・
蒔風
「こらこらこらこら!!!」
イマジンたちと絡ませたのは本当にそのためだけです!!
良太郎は犠牲になったのだ
蒔風
「まさか観鈴ちんが一人でやりきるとはなぁ・・・・」
ものはやりよう、ということです。
これがクロコダイルアンデット相手だったら勝ち目なんてありませんよ。
砲撃で、しかもあんな方法使ったからです。
蒔風
「翼人による、感情の集束か。俺も何回かしかやってないなぁ・・・・」
あとはお前相手にしたクラウドと理樹だな。
実はすでに始まっていた邪神復活。
すべて後出しの「EARTH」に、勝ち目はあるのか!?
蒔風
「次回、今こそ真の姿を!!」
ではまた次回
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