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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第三章 X《クロス》
  敗北



燃え上がるクロコダイルアンデット。

そこに向かって、クラウドのカードが投げられた。



そして・・・・


「そらっ!」

「ツッ!!」



そのカードが真っ直ぐにクラウドへと投げ返され、顔面目掛けて飛んできた。
それを指で挟んで止めるクラウド。


「ゴキブリ・・・か」

「うっせー。ほらよ、ワニのとっつぁん。大丈夫かよ」



そこに現れたのは、ほかでもないコックローチアンデット。

一刀との戦闘から離脱し、ここまでやってきたのだ。


「お互い翼人の相手は大変だねぇ」

「・・・・貴様は一人だったろうが」

「体動く?」

「見て分かるだろう。ベルトが割られた。体は動かん」



倒れるクロコダイルアンデットと話すコックローチアンデットは、その状態を聞いてふーん、と軽く頷いてからクラウド・・・というよりも、その後ろにいる観鈴と彼女の護っている少女たちをみる。

それを察知し、クラウドと観鈴が身構えるが、おいおい待てよ、といったジェスチャーをして、コックローチアンデットがズルリ、と曲がり角の向こうから何かを引っ張り出してきた。



「・・・・!!恋!!」

「恋ちゃん!!」



そこから引きずり出されてきたのは、恋だった。
ここに来るまでの間に、こいつに見つかってやられたのだろう。



「この子スゲーのな。十五体くらいのアンデットを相手取ってたんだぜ?ドーベルの犬っ子と戦った後で満身創痍だったらしいのにさ」

「・・・イリヤをどうした・・・・!!」

「んあ?ああ、大丈夫大丈夫。ちゃーんとほかのアンデットに任せてあるさね。この子も生きとる。ってわけでさ、取引しようや」

「なに?」



恋の体をぶらぶらと持ち上げて、コックローチアンデットがクラウドに取引を持ち出してきた。


その内容は、ここから自分たちを逃がすこと。
そうすれば、恋の命は助けてやる、といったものだった。


「そんな条件・・・・」

「飲めなきゃこの子はここで死ぬ。こっちはそれでも別にかまわないんだぜ?」

「・・・・・・く・・・・ゲスが」

「ところがどっこい。そんな奴だからこうして今でも生き残ってんの。しらねーの?おまえら人間の後に繁殖するのはオレたちなんだぜ?」



こんな条件は飲む以外の選択肢などない。
人質がある以上、あちらに完全に利があるのだから。

こうして、返答は決まった。
いまだ言えないのは悔しさからか。



「・・・・・」

「沈黙はイエスととるぜ。ほら・・・よ!!」

「! チッ!!」



そして、コックローチアンデットが恋の体をクラウドに向けてポーン、と高く投げ放った。

放物線を描いて落ちていく恋の体。
それをキャッチしようとし、クラウドが走り出す。




最初に行っておこう。
今投げられたこれは、恋ではない。


無論、コックローチアンデットが言っていたことも途中までは本当だ。


恋は満身創痍の体でアンデット十五体を相手にしてイリヤを守っていた。
そしてこいつと遭遇して、負け、奪われたのも正しい。



しかし、恋はそのままそこに放置され、イリヤだけは他のアンデットに渡して離脱させている。
ではこの場にあるこの恋は何か。


正解は――――とても気持ち悪いものだが、すべてゴキブリだ。
それが固まって恋の姿になっているに過ぎない。



こいつの考えとしては、こうして放ればクラウドは必ずこのように駆け込んでくる。

しかし、これはゴキブリの塊。キャッチした瞬間にザーーーーッ、と一気にぶちまけられるだけだ。



それによって全員の体がコンマ一秒でも止まれば、観鈴から少女たちを奪える。
クロコダイルアンデットに至っては最悪見捨てても構わない。


そしてその思惑通り、今クラウドは恋に向かって駆け出した。
後はキャッチさえしてくれれば、それで終わりだ。



そう思っていた。



だが




「翼人に人質は効かない」


スッ、と



その言葉を発しながら、クラウドがその恋を素通りし、まっすぐにコックローチアンデットへと突っ込んで向かってきた。

恋の体はというと、観鈴の衝撃波でうまくふわりと浮かされたのち、そのすべてがグシャリと潰されて一匹残らず駆除されてしまっている。



「なぁ!?」

「それが恋でないことは――――」

「最初からわかってたよ!」



翼人に、人質は効かない。
あくまでも基本的に、だが。


二人は、コックローチアンデットがこの恋を出した瞬間こそびっくりしたが、瞬時にそれが何かの擬態であることを見破っていた。


そして、あの取引。
明らかにこちらの意表を突くつもりだ。

だからこそ乗り、こうして裏をかいた。



翼人に、このようなコスイ手は通じない。



「終わり・・・・だ!!」

「ちょ、勘べn」



ドゴォァ!!!!




「なに!?」

「おぉう!?」



が、そこに巨木が床から飛び出してきて、二人の間を遮った。
おそらくはブロッサムアンデットによるものがここまで侵食してきたのだろう。


だが、そのいきなりの登場に対し、クラウドらとコックローチアンデットの頭の中は違った。



どちらも同時に考えた。
これはなんだと。

そこまではいい。掛かる時間は同じだ。


しかし次に、クラウドはこれは一体どういう攻撃なのかを考えてしまった。
それに対しコックローチアンデットは瞬時にブロッサムアンデットによるものだということがわかっていた。


その差。



その差が、ここからの一連の動きでの、勝敗を分けた。




(いただきっ!!)



コックローチアンデットがその巨木の脇をすり抜け、クラウドを追い越して観鈴を乗り越え、少女たちの元へと辿りついた。
クロコダイルアンデットはそのついでで最初に外に向かって蹴り飛ばされていた。運が良ければ、他のアンデットが拾っていくだろう。


そして彼女らの意識を瞬時に刈り取り、二本の腕と二本の鉤爪で四人をかつぎあげ、その場を瞬時に離脱した。




「待てェっ!!」

「おうおうオレを攻撃すると、この子たちだってただじゃすまないぜ!!」

「当てなければどうということはない!!」



クラウドと観鈴を越えて、その背後で少女を奪っていたコックローチアンデットが、そのまま壁を破壊して外へと飛び降りた。
それを追って、クラウドも飛び降りながら剣を投げ、その背中に命中させていく。


「(ドドドッ)オグッ!?が、ハッ!!」

「お前たちはその子たちの魂を狙っている。この場では死なせないだろう?」

「ち・・・コスいのはどっちだよ!!」



背中に三本ほどの剣が突き刺さっても、いまだ腕から彼女らを放さないコックローチアンデット。

クラウドが最後の一撃だと言わん掛かりにファースト剣を振りかざして突き構え、開翼して真っ直ぐに落ちていく。



「雑魚は雑魚なりに役に立ちやがれ!!」

「なに!?」



が、そこでコックローチアンデットが梨花たち四人をバラバラに投げ放ち、ほかの箇所で戦っていたアンデットにキャッチさせて離脱させた。

しかも、今度も擬態による偽物を織り交ぜている。


すぐに判別できるとはいえ、その一瞬は大きい。



「はっは!!一匹見たら、あと二百万匹はいると思いなァ!!」


そういって、クラウドがアンデットを追っていく。
だがしかし相手が多い。

こっちは一人、逃げるあっちは四体。三体が鳥系で、一体が獣系だ。

他にも偽物が多くいるが、どれが本物かはわかっている。
しかし、どれを追おうか、というのが問題。


だが


「ブリザガッ!!!」

「ギッ!?」「ガッ!?」「ギェッ!!」


そこでクラウドは鳥系三体の翼を瞬時に凍らせ、自分は獣形のアンデットを一撃で排除、そいつの抱えていたアルルゥを奪い返して、即座にほかの三体のもとに向かっていく。

今はいたるところでアンデットとの戦いが行われている。
上級でない相手ならばそう苦戦もさせられないが、いかんせん数が多いのだ。下手なところに落ちて巻き込まれては大変だ。



上空から落ちてくる三体の鳥系アンデットに向かって、クラウドが飛び上がる。

しかし、十分に間に合うであろうそれを、邪魔するものが一体・・・・




ドォウ!!

「ッ!?砲撃!?」

「ゼァッ!!!」


両肩にイリヤとヴィヴィオを抱えたブロッサムアンデット――おそらくは地下訓練場から地上に出たところでイリヤを拾ってこっちに来たのだろう――が、クラウドに向かって砲撃を放ち、一発蹴りを放って一瞬だけ足止めをする。


クラウドがそれに対して蹴りを剣の面で受け、逆に二人を取り返そうとするが



「サンキューだ、桜の大将!!もういいぜぇ!!」

「な・・・」

「背中に三本突き刺さったくらいじゃあ、オレァやられん!」

「しっかり潰してもピクピク動くくらいだもんな」

「桜の大将、ちょっと黙っててくんねぇ!?ってか早く行け!!」



そこにとびかかってきたコックローチアンデットがブロッサムアンデットの皮肉に突っ込みながら、クラウドに向かって打ち下ろしの拳を命中させて地面にたたき落とした。

その隙にブロッサムアンデットは完全に離脱。
さらには落ちた鳥系の抱えていた梨花、羽入、インデックスも植物系アンデットが抱えてその場からいなくなってしまった。




落ちたクラウドはしゃがみ、片手をつきながらもしっかりと着地していたが、頭を上げた瞬間にコックローチアンデットが目の前に着地、蹴りを放ってきた。
それをガードするクラウドだが、勢いに体が後退させられる。

そしてその先で三体のアンデットに右足、左足、身体を掴まれ、(はりつけ)のように動きを止められ、コックローチアンデットの追撃の拳をまともに喰らってしまった。


「がっ・・・!」

「へぇ、これで壊れないとは凄い。でも・・・」

ガシッ

「こいつはもらったぁ!!」

「まて・・・ッッ!!」


クラウドからアルルゥを奪ってその場から離脱するコックローチアンデット。
クラウドは自分を押さえる三体のアンデットを即座に殴り飛ばし、コックローチアンデットを追おうと開翼した。


「レーダーでコックローチアンデットを追えるか!?」

『だ、ダメです!!今日強力な磁場が働いていて、レーダーが使い物になりません!!』

「磁場・・・・だと!?」



クラウドが膝を落とし、地面に拳をめり込ませた。

コックローチアンデットはすでに遠くだ。
いまさら加速開翼しても、追い付くことはできない。





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「ハナ・・・・さん・・・」

「翼人でもなく、一介のライダーがよくぞここまで頑張った。しかしまぁ・・・無謀だったな」



ハナの体を抱えあげ、エレクトリックエェルアンデットがその場から離れていく。

その場には良太郎や侑斗、モモタロス達イマジン、が倒れており、デンライナー、ゼロライナーは脱線、横転して転がっていた。



「さて・・・急いで戻るか。思いのほか時間がかかった。美琴嬢が癇癪を起してなければいいが・・・・・」




そういって、その場からエレクトリックエェルアンデットが走って行き、近くの川に飛び込んだ。




こうして、すべての少女は奪われた。
こともあろうに、この「EARTH」本部で。








真の意味で、「EARTH」初めての敗北であった。








to be continued

 
 

 
後書き

奪われる少女たち。
すべて、回収されてしまった敗北の話です。



蒔風
「さて、そろそろ彼女らがどんな力を狙われたのか、って言う内約を教えてくれ」



そうですね。ではお教えしましょう


御坂美琴
純粋に電撃の力を求められて

インデックス
その身におさめた膨大な魔術所、そしてその知識

古手梨花
時読みの力、カケラの魔女としての魂

古手羽入
時間干渉の力、神の魂の取り込み

高町ヴィヴィオ
古代の王たる者の魂。特異なる七色の魔力

イクスヴェリア
兵器となる兵の製造。炎熱系の力を求めて

ルーテシア・アルピーノ
召喚の力を求められて。あらゆる兵や自分を送り込むための力

アルルゥ
全ての生物を統べる力。

ハナ
未来の特異点としての特性。全ての時間軸においての自分の存在の確立

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
以上の力を取り込むために、聖杯の器(すべてを内包しうる器)として許容量を増やすため



ですね。




蒔風
「じゃあ過去に戻って阻止しようとしても」

ハナの特異点で聞かない。

蒔風
「相手の行動は」

梨花ちゃまのカケラで読まれる。
まあ、そうホイホイできるものじゃないけど。

蒔風
「しかも最悪」

羽入の力で止められたり巻き戻される。
これもホイホイできるもんじゃないね
三回くらいかな?

蒔風
「ルーテシアの力で何か呼び出して・・・」

アルルゥで操れる。

蒔風
「確かフォーティーンって雷つかえたよな?」

美琴でパワーアップ。
未知の攻撃はインデックスの知識で対応。
ヴィヴィオの力もあるし・・・

イクスの力で兵隊も作りたい放題。


蒔風
「やべぇ、勝てないwwww」


いやまあ、こんなもんは「設定だけ」になりそうですけどね!!

蒔風
「オォォォイイ!!??」



だって特撮とかの設定見てくださいよ。
それを踏まえて実際の映像見てくださいよ。

矛盾、結構ありますよね?

そんなんでいいんです!!

それに最終的には勝ってもらわないとだし。





蒔風
「次回、みんな集まってから、どーしよー、って話」

ではまた次回

 
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