| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ八十七 佐々木小次郎その十三

「そうであろう」
「はい、我等の国といえばです」
「まさにあの国です」
「土佐です」
「土佐以外にはありませぬ」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「それははっきりと言う」
「その時が来たならば」
「まさに」
「うむ、しかし今都はじゃ」
 彼等がいるこの町はというと。
「もう幕府の目が行き届く様になっておる」
「かつての六波羅探題の様にですな」
「所司代という役職がもうけられていますな」
「板倉殿が入られて」
「もう目が光っていますな」
「板倉殿は出来た方じゃ」
 長宗我部はこのこともわかっていた、それもはっきりと。
「だからじゃ」
「こうして集まっていれば」
「まさにすぐにですか」
「気付かれてしまう」
「だからですな」
「散るのじゃ」
 そうせよというのだ。
「わかったな」
「はい、わかりました」
「今気付かれては厄介ですし」
「時が来たならば」
「その時に」
「そうせよ。それとじゃが」 
 長宗我部はかつての家臣達にさらに言った。
「お拾様と千姫様が夫婦になられたな」
「はい、先日」
「そうなられましたな」
「目出度いことに」
「そうなりましたな」
「これで右府殿はお拾様の外祖父になられた」
 このことを言うのだった。
「これは大きいぞ」
「お拾様の後見も出来る」
「そういうことですな」
「何か意見も出来ますし」
「大きいですな」
「そうじゃ、だから転封もじゃ」
 これもというのだ。
「言える、幕府は大阪が欲しい」
「あの地をですか」
「どうしてもですな」
「右府殿は欲しい」
「そうなのですな」
「しかし豊臣家についてはじゃ」
 この家についてはどうかというと。
「実はじゃ」
「どうでもいいと」
「そうなのですか」
「わしはそう見ておる」
 こう家臣だった者達に言った。
「だから豊臣家が他の国に移ればじゃ」
「摂津、河内、和泉を手放し」
「そのうえで、ですか」
「他の国に移られれば」
「それで、ですか」
「よいと思われている」
 これが家康の考えだというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧