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第四章

「新宿の食べ飲み放題でな」
「徹底的に食って飲んでか」
「忘れるぜ」
 笑って言った。
「そうするからな」
「そうか、じゃあな」
「ああ、吉報を待ってろよ」
「そうさせてもらうな」 
 こうしたことを話してだ、そしてだった。
 俺はその金本すみれさんのところに行った、所属しているサークルはロシア文学研究会だとわかっていた。何でも大学も専攻はロシア文学とするつもりらしい。
 部室の扉をノックするとどうぞとその金本さんの返事が来た、それで意気込んで中に入るとだった。
 部室にいるのは金本さんだけだった、テーブルと椅子それにロッカーがある基本殺風景な中に生活臭が加わったその中にお菓子を食べつつテーブルに向かって本を読んでいた。その金本さんが俺に言ってきた。
「あの、何か」
「はい、実は」
 俺はこう前置きしてだ、金本さんに告白したが。
 その夜俺は新宿の食べ飲み放題の居酒屋でビールを飲みつつだ、一緒に飲んでいる耕太に言った。
「で、告白はしたけれどな」
「まさかのまさかか」
「いや、言った直後に気付いたよ」 
 本当にその時にだ。
「金本さんの左手にな」
「薬指にか」
「指輪あったんだよ」
 まさにそれがだ。
「それでわかったさ」
「結婚してたか、その人」
「言われたよ、御免なさいの後でな」
「結婚してるってか」
「それでな」
「だからその告白はか」
「受けられないってな」
 御免なさいの後実際にこう言われた、礼儀正しく立って告白した俺に向かい合って立って言ってくれた。
「言われたよ」
「そんなこともあるな」
「ああ、幸い俺達以外にいなくてな」
「この話知ってるの俺だけか」
「誰にも言わないって言ってもらったよ」
 俺の告白のそのことをだ。
「有り難いことにな」
「いい人だな」
「そうだな、しかしな」
 ビールをジョッキで飲みつつホッケを焼いたのを食っている耕太に言った。
「こんなことあるんだな」
「コクった人がもう結婚してるってことがか」
「こんなの社会人になってからだって思ってたぜ」
「まあ十六歳から結婚出来るからな」
 女の子はだ。
「だから一応な」
「大学生でもだよな」
「学生結婚だってあるしな」
 実際にだ。
「こうしたこともな」
「あるか」
「ああ、可能性はゼロじゃなかったんだよ」
「それでゼロじゃない可能性か」
「御前は会ったんだよ」
 まさにそれにだ。 
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