提督はBarにいる。
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長芋でスタミナを・その3
「ていとくぅ、オツマミが無くなっちゃいましたぁ~♪」
阿武隈がグデングデンに酔っ払って、拳骨揚げの入っていた皿を振っている。それほど酒には弱くない筈なのだが、愚痴りながら飲んでいたせいでピッチが早くなってしまって酔いが回ったらしい。
「そろそろ止めにしとけ、阿武隈。いつぞやみたいに歩いて帰れなくなるぞ」
「む~、いいんですぅ。今日はトコトン飲みたい気分なんですぅ。それともぉ、ていとくが『お持ち帰り』してくれますぅ?」
にゃはははは、とバカ笑いしている阿武隈。まぁケッコンして嫁艦になっているワケだから『お持ち帰り』しても何ら問題は無いのだが。
「……はぁ。ま。明日非番みたいだからいいけどよ」
「お持ち帰りがですかぁ?」
「違うわっ!ビールとツマミのお代わり出してやるって言ってんだよ」
拳骨揚げに続いて揚げ物連チャンになってしまうが、長芋で作るフライドポテトを出すとしよう。
《熱々!カリッ!ホクッ!フライド長芋》
・長芋:400g
・片栗粉:大さじ1
・薄力粉:大さじ1
・塩コショウ:少々
・青海苔:適量
・顆粒コンソメや塩コショウ:お好みで
さて、作っていくぞ。まずはポテト用の衣を準備する所から。ジップロックのようなビニール袋に、薄力粉、片栗粉、塩コショウ、青海苔を入れて振って混ぜる。しっかりと全体が混ざればOKだ。衣の食感が固い方がいいなら、薄力粉を強力粉に変えてもいいぞ。
長芋は皮を剥き、短冊切りにする。衣の入った袋に切った長芋を入れて再び振って、長芋に衣をまぶす。
フライパンに油を張り、長芋が重ならないように並べる。並べ終わってから火を点けるようにしよう。そうしないと芋同士が入れた時にくっついて悲惨な事になるからな。後は中温でカリッとするまで揚げるだけ。ジャガイモのフライドポテトよりもポキッと折れやすいので注意して揚げよう。揚げ終わったら油を切ってから1本味見をして、塩気が足りなければ熱い内に塩コショウか顆粒コンソメをお好みでまぶす。
「ほらよ、ビールのお代わりと『フライド長芋』だ」
シンプルに衣を付けて揚げただけだが、芋自体の味と揚げた事による独特の食感と味わいが1本、また1本と手が伸びてしまう。病み付きになる味だ。そして揚げ物にビール。この組み合わせが合わない訳がない。阿武隈も夢中になってポテト、ビール、ポテト、ビールのループを繰り返している。
「あっれー?阿武隈じゃん。何してんの?」
そんな時だ、間の抜けたような声が扉の方から聞こえてきたのは。
「ゲッ、北上さん!」
「ゲッとはご挨拶だねぇ。アタシらだって飲みに来たんだから同じ客でしょー?」
「提督……♡」
「まぁ大井っちは提督が目当てみたいだけどさー」
やって来たのは北上と大井。ウチには大井・北上のハイパーズコンビが3人ずついるが、三者三様性格が全く違う。見分けも付けにくいので スカーフの色を変えて判別している。
ハイパーズ(赤):最古参のハイパーズコンビ。三度の飯より戦闘好きで、かなりの脳筋。
ハイパーズ(青):提督LOVE勢のハイパーズコンビ。互いに互いを好きあってはいるが、仲の良い友達レベル。特に大井は提督にぞっこん。
ハイパーズ(黄):所謂クレイジーサイコレズ。北上もそれを嫌がってはいないし、隙あらばイチャついている。提督を毛嫌いしているが、仕事上の上司として最低限の言う事は聞く。
と、3通りのハイパーズがいるのだが、互いに仲が悪い訳でもなくそれぞれに性格の違いを理解して付き合っているので特に問題は起きていない。今晩ウチに顔を出したのは青いスカーフのハイパーズコンビである。
「いや~最初は他の娘達と間宮さんで飲んでたんだけどね?解散した後飲み足りないから飲み直そうって話になってさぁ」
「そしたら大井がウチで飲もう、と言い出したワケか」
「正解~」
そりゃあね?見りゃ何となく解るもの。こっち見ながら満面の笑みで鼻唄ルンルンしてるもの。
「む~……」
阿武隈は前髪を抑えて唸りながら北上を警戒している。聞く所によるとどの北上も、阿武隈に出くわすと頭をワシャワシャと撫でたくなり、その度にセットした前髪が崩れるとご立腹らしい。
「何だよアブぅ、そんなに警戒しなくても良いじゃんかさ~」
「北上さんが止めてって言っても頭グシャグシャにするからでしょ!?後アブぅって呼ぶのも止めて!」
「や~、なんてーか多摩姉にとっての猫じゃらしというか、マタタビというか……なんか弄りたくなるんだよねぇ」
北上はうへへへと笑いながら、両手をワキワキと動かしている。
「うぉ~い、アホやってねぇでとっとと注文してくれよ?」
「あ、そう?んじゃあアタシは梅酒ロックで。ツマミはテキトーに」
「あ、私も梅酒で。……出来ればカクテルがいいです」
「あいよ。んじゃツマミは俺が作っから、酒は早霜頼むな?」
早霜もコクリと頷くと、手早く準備に入った。さてさて、俺もとっとと作りますかねぇ。
《お好みの具材で!とろろ芋グラタン》
・とろろ:200cc
・卵:2個
・マヨネーズ:大さじ2
・塩:小さじ1/3
・しめじ:1/3パック位
・ブロッコリー:小房で8~10個
・オクラ:4本
・ピザ用チーズ:適量
さて、作っていくぞ。まずは長芋をすりおろしてとろろにする。そこにマヨネーズ、卵、塩を加えてよく混ぜる。その間に、オーブンを250℃に余熱しておく。
お次は中の具材の支度。オクラは板摺をして産毛を取ってから、ブロッコリー、しめじと共に耐熱皿に入れてラップをし、レンジで1分加熱。後は食べやすいようにカットしておく。今回はキノコと野菜のみの具材だが、他にはベーコンをダイスカットして入れてみたり、ウィンナーを入れてみたり、今の時期なら菜の花を入れたりしても美味いぞ。……まぁ具材はお好みでって事さ。
グラタン皿を用意して、とろろ生地の半量を敷き詰めたら具材を並べてその上から残りのとろろ生地をかけて表面を均す。そこにピザ用チーズを散らして、余熱しておいたオーブンで15~20分程焼けば完成。
「……大井さん、『黄金池』です。どうぞ」
「あら、ありがとう。甘くて飲みやすいわねコレ」
「他のお店でも飲まれてきたとの事でしたので、少し薄めにしておきました」
《カクテル『黄金池』のレシピ》
・梅酒:25ml
・チェリー・ブランデー:10ml
・ブルー・キュラソー:10ml
・ジンジャーエール:適量
氷を入れたオールドファッションドグラスに、材料を入れてビルド。軽くステアしたら完成。濃さはジンジャーエールの量で調整しよう。
「こっちもあがったぞ。『特製とろろグラタン』だ」
「お、美味そうだねぇ。提督、3人分取り分けてよ」
「ふぇっ?」
北上の言葉に目が点になっている阿武隈。
「別にさぁ、アタシだってアブぅと喧嘩したいワケじゃ無いんだからさ。たまにはいいんじゃない?こういうのもさ」
「……そうですね、私的にはとってもオッケーです」
「ほらほら、じゃあ乾杯しましょ?」
「そだねー、じゃあ乾杯~」
カチン、とグラスが打ち鳴らされて楽しそうに笑いながら、酒を酌み交わす3人。阿武隈も先程までのやけ酒はどこへやら、今は楽しそうに飲んでいる。やっぱり酒の席ってのは楽しくなくちゃな。こんな夜が毎晩続くことを願ってやまないよ、俺は。
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