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風魔の小次郎 風魔血風録

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70部分:第七話 力と力その六


第七話 力と力その六

「よし、頑張ろう」
「今度の試合、絶対勝つぞ!」
 こういう流れになったのである。小次郎はこのことも一同に話すのだった。
「ってなったんだよ」
「また随分と楽しい流れだな」
「そうですね」
 小龍と麗羅が言った。二人も笑顔になっている。
「友情ってわけか」
「劉鵬さんも驚いてますね」
「ああ、目を白黒させていたぜ」
 話す小次郎も満面に笑顔をたたえて話すのだった。
「何が何だかわからないって顔でな」
「何かそれっていいな」
「そうだな」
 林彪の言葉に兜丸が頷く。
「青春だな」
「ああ、スポ根だ」
「スポ根!?」
 しかし兜丸がこの単語を出すと麗羅がまず目を丸くさせた。
「スポ根って何ですか?」
「聞いたことがないな」
 これは小龍も同じだった。
「食い物か?」
「違うだろ。飲み物だろ」
 林彪もそれは知らないのだった。
「あれだろ。新しいジュースでよ」
「違うよ、全然違うぜ」
 兜丸は全くわかっていない一同に対して告げる。
「スポ根っていうのはな」
「スポ根っていうのは?」
「あれだよ。だから」
 説明しようとする。ところが。
「あれだよ・・・・・・ええと」
「要するに青春だな」
「そうそう、それそれ」
 少し離れた場所でやはりジャガイモの皮を剥いていた霧風に対して答える。
「それなんだよ、つまりは」
「そうか、青春か」
 小次郎はそれを聞いて何か羨ましさを感じるのだった。
「あいつ青春しているのか」
「俺達には何か縁のないものだな」
「そうだな、全くだ」
 林彪が小龍のその言葉に頷く。
「戦いに明け暮れ影に潜む忍にはな」
「そうですよね。それは全然」
 麗羅も羨ましそうな顔になっている。
「縁のない話ですよね」
「そうかな」
 だが霧風は彼等の言葉に対して異議を唱えるのだった。
「何だよ、霧風。違うっていうのか?」
「感じ方は人それぞれだ」
 彼はこう言うのだった。
「それはな。青春もそうだ」
「!?どういうことなんだ!?」
 やはり小次郎にはわからない。首を傾げるだけだった。
「俺達も青春してるっていうのかよ」
「だからそれぞれだ。私達にしろ夜叉にしろな」
「夜叉もかよ」
「命をかけている青春もある」
 霧風はまた言った。ジャガイモの皮を剥きながら。
「仲間がいてそこに温かさがあれば。それで青春ではないのか」
「そういうもんかね」
「答える必要はない。しかしだ」
「まあ御前がそれならそれでいいけれどな」
 小次郎はわからない顔のまま述べた。
「じゃあまあジャガイモをな」
「そうだな。早く全部剥かないとな」
「蘭子さんにどやされるぞ」
「小次郎君がね」
「そうだな。俺が・・・・・・っておい」
 林彪、小龍ときて麗羅のところで。小次郎は言い返すのだった。
「俺かよ」
「御前は避雷針なんだよ」
 兜丸の言葉だった。
「だから我慢しろ。いいな」
「何で俺が避雷針なんだよ。雷使う御前じゃなくてよ」
 それに不満だが彼はそれで怒っているわけではなかった。楽しくジャガイモの皮を剥きつつ話をしていた。練習を終えた劉鵬は一人で柳生屋敷にまで帰っている。その時にふと神社に立ち寄った。古い神社だ。石の階段が結構な高さだ。そこを登って賽銭を入れる。祈るのは一応は柔道の試合のことだった。
 
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