風魔の小次郎 風魔血風録
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51部分:第五話 メッセージその九
第五話 メッセージその九
「俺はいつも兄貴のコピー扱いだった。だが違う」
彼は呟く。
「俺は俺だ。兄貴ではない」
こう呟きまた暗い目になっていた。暗い怒りの目であった。
贋作を見破られた白虎だったがこの時は当然ながらそれを知らない。彼は柳生家の蔵に入り込みそこであれこれと物色していた。
「さて、何があるか」
柳生家は夜叉にとっても宿敵だ。丁度夜叉における壬生家と同じような地位にある。北条家の腹心の家であり彼はこの際に柳生家が持つ夜叉にとって害になるものを潰そうと考えていたのだ。
「見たところは大したものはないか」
宝の類には興味がなかった。暗い蔵の中を的確に動き漁るが金やそういったものには目もくれない。次には武器を見るがここであるものを見つけた。
「!?」
木刀を束ねた中に。一際大きな木刀を見つけたのだ。
「まさかこれは」
それが何か。彼は知っていた。だが実際にその目で見たのははじめてだったのだ。
「こんなものがここにあったのか。まさか」
「曲者!」
その時だった。後ろから声がした。
「誰だ!」
「俺だ」
項羽の顔でその声に応えた。振り返ればそこには林彪がいた。
「何だ、項羽か」
「木刀を探していてな」
笑って林彪に述べる。
「それでここに入っていたのだ」
「何だ、驚かすな」
項羽と思って緊張を解いて笑う。
「また夜叉が来たのかと思ったぞ」
「ははは、それは」
林彪は彼から背を向けて蔵の入り口から離れる。隙が出来た。
「その通りだ」
「何っ!?」
「喰らえっ!」
後ろから切りかかった。それで振り向いた林彪の左肩をまず打った。
「うっ、項羽貴様!?」
「ほう、咄嗟に振り向き最悪の一撃はかわしたか」
林彪の今の動きを見つつ言う。
「流石だな。不知火を倒しただけはある」
「不知火だと!?まさか貴様は」
「そうよ。八将軍の一人白虎」
ここで変装を解いた。素顔が露わになり服も夜叉のそれになった。
「ここで会ったが貴様の運の尽き。不知火の仇取らせてもらうぞ」
「くっ、貴様項羽に倒された筈」
林彪は右手で左肩を押さえつつ何とか間合いを離し白虎に言う。木刀はその左手に持っている。
「それがどうしてここに」
「項羽は紫炎によって負傷した。麗羅が今里に連れて行っている」
「では貴様がその項羽に化けてか」
「そういうことだ。戻る前にここで貴様を倒す」
今それを林彪に対して告げた。
「覚悟しろ、いいな」
「覚悟しろだと。だがそうはいかん」
しかし林彪も退くつもりはなかった。傷をよそにまた身構える。
「貴様も不知火と同じ様に。倒してやる」
「そうこなくてはな。俺としても闘いがいがない」
白虎もまた身構えている。
「行くぞ」
「決めてやる。行くぞ!」
身構え。そこから一撃を放った。
「風魔天狼牙!」
いきなり必殺技を出した。一気に勝負をつけるつもりだった。しかしであった。その動きは鈍かった。
「うっ!?」
「さっきの一撃だな」
白虎はその鈍い動きを見てほくそ笑んだ。
「肩をやられたか。なら今の貴様は俺の敵ではない。死ねっ!」
また木刀を一閃させた。今度は胸を袈裟懸けに切った。林彪はそれを受け動きを止め。ゆっくりと背中から倒れるのだった。
「くっ、ぬかった・・・・・・」
「だが。背中から倒れるとはな」
倒れていく林彪を見て言う。
「流石は風魔というべきか・・・・・・むっ!?」
その時だった。風魔の者達の気配を感じたのだ。
「いかんな。一旦隠れるか」
「林彪!」
「どうした!」
風魔の者達は屋敷から戻るとすぐに倒れている林彪に駆け寄った。慌てて彼を助け起こし様子を見る。
「かなり傷は深い」
「意識もないぞ」
劉鵬と兜丸がそれぞれ言う。
「それで大丈夫なのかよ」
「そうだな。傷は深いが何とか助かりそうだ」
竜魔が林彪の頭のところに立っている小次郎に告げる。竜魔と小龍も林彪の側に屈み彼を観ている。
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