提督はBarにいる。
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違いが判る女に
「なぁ司令官、カフェオレとカフェラテってどう違うんだ?」
とある日の午後、時刻は15時。丁度オヤツで一服していた時の話だ。その日の秘書艦でもあった菊月が、俺にそう尋ねてきた。
「何だ?藪から棒に」
「いやなに、昨日長月達とそんな話になってな。偶々今日のオヤツの飲み物がカフェオレだったんで聞いてみただけだ」
今日のオヤツはニューヨークチーズケーキ。勿論俺の手製だ。チーズケーキにゃ紅茶もいいが、やはりコーヒーが欲しくなる。それで菊月にはカフェオレを、俺はカフェラテ、大淀はカプチーノを啜っていた。
《材料混ぜて焼くだけ!ニューヨークチーズケーキ》※分量ケーキ型18cm分
・ビスケット:120g
・バター:60g
・クリームチーズ:400g
・グラニュー糖:120g
・サワークリーム:200g
・生クリーム:150ml
・卵:2個
・バニラエッセンス:数滴
・コーンスターチ:大さじ2
・レモン汁:1/4個分
焼いて仕上げるベイクドチーズケーキの起源ってのはポーランド辺りが発祥と言われている。それをユダヤ系移民がアメリカに持ち込んで発展した。そして、ニューヨークに移り住んだユダヤ系移民が多く作っていた為に、ニューヨークチーズケーキと呼ばれるようになったらしい。
まずはケーキの底の生地から。ビスケットをビニール袋等に入れて細かく砕き、そこにレンジ等で加熱して溶かしたバターを流し込んでよく混ぜる。ビスケットが粗い方が食感もよくて美味いんだが、いかんせん焼き上げるのが難しくなる。慣れない内は細かく砕いた方が無難だ。バターと混ぜたビスケットはケーキ型の底に敷き詰めて平らに均し、冷蔵庫で冷やしておく。こうすると溶かしバターが冷えて固まり、後々の作業がしやすくなるからな。
クリームチーズを常温に戻すか軽くチンして柔らかくし、グラニュー糖を加えて混ぜ合わせ、生クリーム、サワークリームも加えて混ぜる。サワークリームってのは簡単に言えば生クリームで作ったヨーグルトだから、普通のヨーグルトよりも濃厚に出来る。サワークリームが無ければ水切りヨーグルトと生クリームを半々で混ぜれば代用出来るからそっちを使ってくれ。
卵は一旦別の容器に割り入れる。卵の殻の混入を防ぐのと、万が一傷んだ卵を混ぜないようにする為に、な。卵を加える時には溶かないでそのままチーズ生地に加える。溶いて加えると生地に空気が入り、焼いた時に膨らんでしまう。密度の高いどっしり濃厚なチーズケーキに仕上げる為にも、空気を含ませないように混ぜるのはポイントだな。
卵も混ざったらコーンスターチとレモン汁、バニラエッセンスを加えてよく混ぜる。型に流し込んで表面を均したら天板に乗せ、型の半分位の高さまで天板にお湯を入れる。そして180℃に余熱したオーブンで30分焼く。これは湯煎焼きというやり方で、スチーム効果がある為に表面が割れにくくなるし、じっくりと内部に火が通せるからしっとりと焼き上がる。クリーミーで滑らかな舌触りのチーズケーキを目指すならオススメの焼き方だ。
180℃で30分焼いたら、150℃に温度を落として更に30分焼く。この間、チーズケーキはオーブンから出さないように。2回目の焼きが終わったらオーブンの電源を落とし、更に1時間放置。オーブン内の余熱で中に火を通すためだ。その後は取り出して冷蔵庫で冷やして完成。大体6時間位冷やせば食べ頃かな?
……っと、そんな事よりカフェオレとカフェラテの違い、だったな。
「全くの別物だ。そもそも、カフェオレはフランス語でカフェラテはイタリア語だ」
「そうなのか……で、意味は?」
「カフェオレ……正確にはカフェ・オ・レだがな。レの部分が牛乳を表してる。カフェラテはラッテの部分が牛乳って意味だな」
「つまり?」
「どっちも直訳すれば牛乳入りコーヒー、又はコーヒー牛乳って意味になる」
「同じじゃないかぁ!」
ダン!と菊月がマグカップをテーブルに叩き付ける。おっと、危ねぇなぁ。零れたらどうすんだ勿体無い。
「全然別物だ。カフェオレは普通のコーヒー……所謂ドリップコーヒーだな、それに牛乳を足した物。カフェラテはエスプレッソという濃く抽出したコーヒーに牛乳を加えた物だ」
そもそも、コーヒーとエスプレッソは原料は同じでも淹れ方が全くの別物だからな。
《コーヒーとエスプレッソの4大相違点》
①淹れ方が違う
さっきも軽く説明したが、普通のコーヒーってのは紙フィルターなんかで濾して作るドリップコーヒーの事だ。対してエスプレッソは専用のマシンで高い圧力を掛けて一気に短時間で抽出する物だ。
②豆が違う
一般的にはだが、ドリップに使う豆は比較的浅煎りの豆を使う。(焙煎の時間が短く、酸味が強くて苦味が弱い)
対して、エスプレッソは深煎りの豆を使う事が多い。(焙煎の時間が長く、苦味が強くて酸味が弱い)
淹れ方が違うから豆の煎り方も変わる。道理だな。
③味が違う
エスプレッソってのは前述の通り、一気に高圧で抽出する為に濃い。味で言えば旨味が凝縮されてカフェイン少な目なんだ、意外な事にな。そしてクレマと呼ばれる細かい泡で表面が覆われている事もある。
④量が違う
エスプレッソは濃い。だからこそ喫茶店やカフェだとエスプレッソ単品で頼めば小さいカップで出てくる訳さ。
「とまぁ、コーヒーとエスプレッソは材料が一緒でも全くの別物の飲み物な訳だ」
「でも、カフェオレとカフェラテの違いの説明にはなってませんよ?提督」
うるせぇ大淀、言われなくても解ってんだよ、んな事ぁ。
「カフェオレとカフェラテの最大の違いは……コーヒーと牛乳の比率だ」
必ずしも比率が決まってる訳じゃないし、そこは個人の好みに合わせていいんだが……そうだな、焼酎のお湯割りみたいなモンさ。焼酎が多い方がいい奴もいるし、お湯が多い方がいい奴もいる。そんな具合で捉えて欲しいんだが。
カフェオレは大体、コーヒーと牛乳の割合が半々の場合が多い。あんまり牛乳が多いと、それこそコーヒー牛乳になっちまうからな。
カフェラテはコーヒーを2とすると、牛乳が8位の割合が一般的だな。濃い目で苦味の強いエスプレッソに牛乳を加えて飲みやすくしたのがカフェラテと思ってもらえば間違いない。だからカフェオレはマイルドで飲みやすく、カフェラテは苦味も強めに感じるが仄かに甘味もあるのだ。それと豆知識だが、カフェラテのミルクは泡立たないように温めたミルク(スチームミルク)を使う。カフェラテに浮いてるあの泡はコーヒーのクレマなんだよな、これが。
「え?だってカプチーノにも浮いてますよ?泡」
だぁから、カフェラテの泡とカプチーノの泡は別物なんだっつの!そっちも説明してやるから、ちょっと待っとけ!
《カプチーノとカフェラテの違い》
カプチーノも使うコーヒーはエスプレッソなんだが、使うミルクに一工夫加えられるんだ。
カフェラテはエスプレッソが2にミルクが8、使うミルクはスチームミルク(泡立たないように温めたミルク)。
カプチーノはエスプレッソが3にスチームミルクが3、そこにフォームミルクという蒸気の力で泡立てたミルクが4入るのだ。※店によっては3等分という店も
つまりはコーヒー(エスプレッソ)が泡立っているのがカフェラテ、ミルクが泡立っているのがカプチーノだ。カプチーノの泡の方がモコモコしてて、消えにくいのは牛乳を泡立ててるからなのさ。
「へぇ~……流石提督、お詳しいんですね」
「まぁな、昔取った杵柄って奴さ」
「え、だって司令官は昔柔道の選手だったんじゃ」
「社会人では、な。学生の頃は部活動やりつつ、貧乏学生だったからバイト生活よ」
新聞配達に始まり、喫茶店、中華料理屋、洋食屋にイタリアンレストランetc……色々やったぜ。
「ほとんど料理が関わってるお店なんだな……」
「まぁ、料理が好きってのもあったが。何より賄いが出るってのがデカかった……さて、休憩は終わりだ。残りの時間もキリキリ働くぞ~」
よっこらしょ、と重い腰を上げてソファから立ち上がる。ちょっとばかし昔が懐かしくなったな……こんな午後も、たまには悪くない。
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