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鉄血のベーオヴォルフズ

作者:司遼
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第01話 鉄華団

鋼鉄の巨人が二体大質量をぶつけ合う拮抗、どちらかが力を僅かでも緩めればその天秤は崩壊する。

『ライド!』

ガンダムバルバトス・ルプスの中からミカヅキが呼ぶ。寸差、脆くなった壁をぶち抜いてモビルワーカーが飛び出してきた。

「おいさっさと乗れ!」

それがモビルアーマーの上部ハッチを開いたと思えば、赤毛の少年が裸の上半身を出すとハッシュに叫んだ。

「え・‥‥」
「ミカヅキさんの邪魔になるって言ってんだ!!いいから早く乗れよ!死にてぇのか!?」

「あ、はい!」

怒鳴りつけられて気づく、こんな至近距離でモビルスーツがバーニアを吹かしたらそれだけで人間なんて丸焦げだ。
だから、あの白いガンダムは敵を抑え込むばかりで動けないのだ。

急いでモビルワーカーに向け走る、そして飛び乗るとタラップにしがみつく。

「よし、振り落とされんなよ!!」

急発進するモビルワーカー、その後部タラップにしがみついたままハッシュは振り返った。

「あれが、ミカヅキ……ビルスの言っていた。」


ハッシュ・ミディは炎の中に立つ白いガンダムを見つめ続けていた。





『毎度毎度仕事の邪魔をしやがって!!』

ソードメイスの刀身と大剣の刀身が火花を散らし、削り合う。その石火の向こうでバルバトスと自分を睨みつける血色のガンダム。

「知らないよ、だいたい―――――気に食わないんだよ、お前ら」

ミカヅキがフットペダルを押し込む。バルバトス・ルプスの出力が増大する。機関が唸りを上げてソードメイスで敵の大剣を押しのけた。

『ぬぅ!!』

体勢を崩した紅のガンダム、その腹に蹴りを叩き込む。その血色の機体は体勢を崩しそうになりバーニアを吹かして地表を滑ることで後退。

そこへ追撃を仕掛けるべく自身もバーニアを吹かし地面を蹴る。
モビルスーツの大質量を受けた地面が弾けてガンダム バルバトス ルプスの巨体が疾駆する。

『舐めるなッ!!』

追撃に迫るバルバトスルプスに対して大剣を横なぎに振るう真紅のガンダム。――其れをソードメイスで受け止めようとする。
しかし、突如大剣が大鎌へと変形した。

「――――ちぃ!」

大鎌の切っ先がバルバトス ルプスの胸元へと迫る。舌打ち、バルバトス ルプスの機体を仰向け倒す。
そしてバーニアを吹かして寝転がるような姿勢で後方へと急速後退。バーニアを巧みに制御して再び相対する。

「相変わらず厄介だな、」

コックピットで操縦桿を握りなおしながら呟くミカヅキ。もうこのガンダムと相対するのは何度目になるのか。

様々な場所で略奪行為を行うこの宇宙海賊と矛を切り結ぶんで来たが未だに仕留めきれない。
感触から、阿頼耶識に近いものが感じられるが何処か、何かが違う―――そんなシステムを搭載している。

「けどまぁいいや……」

バルバトス ルプス背面のサブアームを稼働させる。そして背にマウントされた太刀を抜き放つ。
間合いでは敵の大鎌のほうが広い。ならば連撃で仕留めるだけだ。

以前なら細いパイプぐらいにしか思えなかったが、今なら此奴の使い方が分かる。


「潰すだけだ!」

駆ける。右の腕にソードメイス、左の腕に太刀、左右に趣の異なる鋼の暴威を携えて








「状況はどうですか?」
「ミカ達を向かわせた、追い出すだけならそう難しくはないはずだ。」

クリュッセ自警団本部、其処に座す鉄華団の団長オルガ・イツカは眼前の元雇い主の少女を見据えながら答える。

火星からその戦力の過半数を地球圏へ撤退させたギャラルホルンにはもはや火星地上の治安を行えるだけの戦力は無く、地球と同じく各地で自警団発足の動きが活発化していた。

そんなさなか、鉄華団はテイワズというバックボーンによって供給される装備、そして地球での実績。
更には他でもないギャラルホルン自身からの推薦もありクリュッセの治安を任される専属契約を結ぶ事となった。

「しかし、これで6度目‥‥早く手を打たないと、これ以上の犠牲は――――」
「ああ、分かっている。安心してくれ――――俺たちは鉄華団だ。舐めたことをしてくれたケリは付ける、必ずだ。」






「これ以上奴らを逃がすな!!」

幾つもの砲音がさく裂し、こだまする。土煙の粉塵が上がり土煙があちこちで吹き上がる。
高機動戦車、鉄華団モビル―ワーカー部隊が敵の人狩り部隊へ攻撃を行い、その逃亡を阻んでいた。
人間を拉致するのにMSは不向きだ、必然それ用の歩兵と輸送車両が必要となる。

地形などの情報からそいつらの補足に成功した副団長ユージン達は小回りの利くモビルワーカーで敵の足止めを行おうとしていた。
しかし、拉致された人間がどれに乗っているかもわからず、命中させるわけにもいかず効果的な遅延が出来ていなかった。

「エイハヴウェーブ反応増大……モビルスーツです!」
「なに、後詰の部隊か!?」

インカムから届く声、モビルスーツの装甲に使われる特殊塗料ナノラミネートアーマーはその動力機関エイハヴリアクターの発する波動を受けて非常に堅牢堅硬となる性質を持つ。

また、その高分子多層構造は運動エネルギーを吸収する性質も持ち、実弾ではほとんど有効打撃を与えられない。
モビルワーカーはモビルスーツに手も足も出せないのだ。


「くそ!仕方がねぇ下がれ!!

「その必要はないぜぇ!」

ユージンの指示をぶった切る新たな通信、後方から新たなエイハヴウェーブの反応が三つ急接近してきていた。

「遅せぇんだよ!」

口元をにやけさせながら頭上を見上げた、その頭上をノーズピンクに塗装された機体を先頭とする三体のモビルスーツが跳躍飛翔する。

テイワズにて新規開発された新型モビルスーツ獅電だ。


「鉄華団一番隊いんや、流星隊いくぜオラああああああ!!」


モビルワーカーの戦線を飛び越して着地したノーズピンクに塗装された獅電。平べったいこん棒、船の櫂のような近接武装を取り出し、メインセンサーに近接戦闘用のカバーをかけ疾走する。

ブーストの勢いをのせ、敵の輸送車両前に立った敵モビルスーツへと殴り掛かる。敵が腰に携えていた大剣でそれを防ぐ。
散る火花、獅電がブーストを噴射し敵を抑え込む。

其処へ僚機の二機の獅電がマシンガンを斉射する。

「流星隊って……」
「俺らの事かよ……」


随伴の獅電を駆るデルマとダンテは揃って怪訝な声を上げる、なんだそのチンピラ風味なセンスのないネーミングセンスは、と言いたかった。
呆れが度を超すと意気がそがれるのを実感した瞬間だった。


「おし!モビルワーカー隊、今のうちに奴らを抑えるぞ!」

ユージンの号令、それに従ってモビルワーカーの車輪が回転を上げ、疾走する。



「今度こそケリつけてやるぜ!!」

ノーズピンクに塗装された獅電を駆るシノが意気を上げて怒鳴る。此奴らを逃し、残された家族や生活の糧を奪われた人たちを何度も見た。
そのたびに苦々しい思いを味わってきた、だがそれもここで終わらせる。


『餓鬼の相手はこっちもうんざりなんだよ!!』

接触通信、人間狩り部隊のモビルスーツからの声が届く。合わせて迫りくる大質量の脅威を回避するシノの獅電。
このパーソナルカラーのためのナノラミネート塗料は自腹なのだ、ダメージを受けて再塗装のたびに給料が減っていく。

何としても当たるわけにはいかない。


『ちぃ相変わらずすばしっこい!』
「はっ遅せぇだよ!この三代目流星号は先代流星号から阿頼耶識とデータを移植してんだ!てめぇらみたいに人を食い物にするだけの奴には負けねぇ!!」

双方の獲物、ナノラミネートアーマーに有効な大質量による攻撃。鋼の暴威が衝突し火花をまき散らす。
通常の砲弾による運動エネルギーの伝達ではナノラミネートアーマーの多層構造が衝撃を吸収し有効打撃とならない。

しかし、砲弾の数倍の質量をもつ大型の近接兵装が砲弾を大きく下回る速度で衝突した場合、その運動エネルギーの伝導速度の違いからナノラミネートアーマーは衝撃を吸収しきれず、通常装甲と変わらなくなる。


「ちぃ!硬てぇ」

舌打つシノ、阿頼耶識による認知能力の拡大と高速反応などの近接戦での大きなアドバンテージあるというのに攻めきれない。

このロディフレームを改造した機体は、ブルワーズで運用していたマン・ロディに近いコンセプトで作られた重モビルスーツだ。
重装甲部位を限定し、両肩に大型シールドを配したことで高い防御力と汎用性を両立させている。

―――厄介な相手だった。


『おらどうしたネズミが、あの悪魔とやらがいなければ大したことねぇな!』
「てめぇ‥‥」

ネズミ、阿頼耶識手術を受けた人間に対する蔑称。散々言われてきたことだ、かつて自分たちを使い捨ての道具にしてきたCGS一番隊の連中と同じだ此奴らは

『まぁいい、その糞生意気な態度も今日で見納めだ。』
「なに!?」

直ぐには倒せなくても、そのうち擦り潰せるぐらいには有利な運びだったはずだ。
なのに敵の余裕の態度が気にかかった――――その瞬間、レーダーに反応が映った。






『エイハヴウェーブ反応新たに六つ!』
「別動隊か!?不味い、側面を突かれる! 」

シノたちが足止めをしているMS隊をやや迂回する形で敵の輸送車両を追っていたユージンの顔に緊張が走る。
モビルスーツに対し、モビルワーカーは有効な攻撃手段を持たない。だがモビルスーツは一撃でモビルワーカーを木っ端微塵に出来る。

其れを陣形の側面から突かれれば最悪全滅だ。

「くそっ応戦急げ!ラインを作るぞ!!!」

ユージンの指揮のもと、即座にモビルワーカー部隊が配列を変える。一撃の有効打にはならずとも数を束ねれば足止めぐらいは出来るはずだ。

此方が全滅する前にシノたちが追い付ければ、形勢は逆転出来る―――問題は、逆にこちらが先に全滅した場合、シノたちが挟撃に合うという事だ。
寧ろ、其方の可能性のほうが圧倒的にデカいだろう。

打開策が思いつかない―――どうする、ユージン・セブンスターク
焦る思考、だが答えは浮かばない。焦燥感だけが積もっていく中、敵の追加モビルスーツとが接触する。


だが、しかし――――


『今だッ!全機偽装解除――――鉄華団二番隊、出るぞっ!!』


突如として割り込んでくる通信に複数のエイハヴリアクター反応が出現。クリームカーキ色の機体たちが大型火器を敵別動隊へ側面を突く形で向けていた。

その戦闘に立つのは、四本腕のモビルスーツ……高精度射撃モードのためにデュアルアイを兜に隠し、第三の目で敵を射抜くガンダムフレーム、グシオンリベイクだった。


『撃って撃って撃ちまくれッ!!』


グシオン・リベイクが両脇に抱えた大型砲に加え、背のバックパックから生えた二本の腕に持ったロングライフルの計4問を同時斉射する。

『了解っ!』
『いけぇっ!!』

グシオンの左右に立つ同じくクリームカーキ色に塗装された獅雷、タカキとアストンの二人が操る機体だ。
二機ともセンサーカバーが改造され、遠距離戦闘への対応改修が施されている。


『くそぉ・‥‥さっきまで反応は無かったぞ一体――――!?』
『種を明かせば簡単な事だ。』

砲撃で足止めされる中でつぶやいた疑問、だが次の瞬間仲間の機体とのデータリンクが消失し、敵の存在を直感し息をのむ。

隣にいたはずの仲間のモビルスーツ、その機体は後ろから羽交い絞めにされるように短刀が左右から機体の胸元――――コックピットに突き立てられていた。

其れを行ったのは濃紺色に塗装されたグレイズリッター。
そしてその背中にはモビルワーカーのエンジンが複数機、無理やり装着されていた―――エイハヴリアクターを停止し、モビルワーカーの燃料電池で駆動することでエイハヴウェーブ反応を抑えたのだ。


『―――ッ!!!』

反射的に機体を操る海賊、ロディフレームの重厚な機体が大質量の鉄塊を振るう。
しかし、即座にグレイズリッターは背負った太刀を抜刀―――――その腕を斬り飛ばした。


『モビルスーツのフレームごとだと……!?』

極めて高い耐久性を持つモビルスーツは関節部以外破壊するのは並大抵のことではない、なのにこの濃紺色のグレイズリッターはあろうことか、熱したナイフでバターを切るように難なくモビルスーツのフレームを切り裂いた。

尋常じゃない、モビルスーツをフレーム事切り裂いた事もそうだが、エイハヴ・リアクターが停止したモビルスーツはモビルワーカーと同程度の防御力しかない。
流れ弾が一発当たっただけでお陀仏の可能性すらある。それを事無げも無く行い、こうして必殺の一撃を見舞ってくる理不尽の権化。

そんなものは―――


『ば、化けも――――』
『――――――失敬な』

軽く一閃、太刀の軌跡がモビルスーツの胸部を掠め言葉が途中で途絶える。――――モビルスーツのナノラミネートアーマーをモノともせず切り裂いたその一太刀は、的確に装甲からパイロットまでを切り裂いていた。

『人間だよ、俺は。』

 
 

 
後書き
此処が変だよ鉄血!2

ラスタル『(`・ω・´)我々ギャラルホルンに必要なのは秩序を守る力だ!』(第一話)

ラスタル『(-_-)力に固執するは愚か者』(後半特に何かあったわけでもない)


(´・ω・`)ふむ、統合失調症ですね。お薬出しておきますねー 
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