FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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堕ちた神
前書き
最近気になってるけどアルパレス編はちゃんとアニメ化されるのだろうか?一応アニメ化されてからストーリーを展開させていこうと思っているので、先にこのストーリーが終わったらどうしようかと考えています。
第三者side
ピリリリリリ
周囲の人々の視線が集まる中、唯一立っている青年のポケットから響く音が次第に大きくなってくる。
「やれやれ、ずいぶんと時間がかかってしまったな」
ポケットから小さな魔水晶を取り出すと、数度振るなりして音を止める。
「じゃあ私はこれで退散させてもらいます。それでは」
地面に伏せている男性たちに丁寧におじきをした後、その場からゆっくりと離れていくホッパー。そんな彼に恐怖を抱いているクロッカスの住民たちは、関わり合いたくないと道を開ける。
「あの・・・大丈夫ですか?」
そして彼の姿が見えなくなったところで、一人の女性が歩み寄ってくる。それに便乗したクロッカスの住民たちも、傷だらけの青年たちを心配し、歩み寄ってきていた。
「メル・・・クリアス・・・に・・・」
「え?」
ほとんど全員が意識を失っている中、辛うじて意識を保っていた一夜が、相手に聞こえるか聞こえないかギリギリの声で話しかける。
「メルクリアス・・・の・・・王国兵・・・たちに・・・この事を・・・伝え・・・てくれ・・・」
「わ!!わかりました!!」
彼の頼みを聞いてすぐさま街の人たちが動き出す。一夜はクロッカスの人々の暖かさに小さく笑みを浮かべると、そのまま深い眠りについた。
「氷神・・・永久凍土」
左腕を引き、目の前にいるリーゼント目掛けて冷気を帯びた拳を振るうレオン。そのスピードの前に、火の造形魔導士はなす統べなく吹き飛ばされる。
「クレサン!!」
壁に大きなヒビが入るほどの威力で打ち付けられた青年を心配し叫ぶ赤黒い髪の男。だが、そんな余裕は彼にはなかった。
「氷神・・・」
一瞬飛ばされる仲間に視線を向けた後、後ろから冷気を感じ取った青年が振り返ると、そこには体を一回転させながら蹴りの体勢に入っていた少年の姿があった。
「氷結」
「がはっ!!」
「ネイモン!!」
側頭部を蹴り抜かれた男は、まるで回し車に巻き込まれたかのように回転しつつ地面を転がる。
「ゴホッ・・・」
頭から出血しているネイモンと呼ばれた男と壁からようやく抜け出したクレサンと呼ばれた男を一瞥した後、他の二人に体を向けようとしたところ、先にやられていた腹部のダメージからか、咳き込み口を押さえる。
「元々ケガしてたみたいだが、俺たち相手に一人で渡り合うとは」
「頭がグラグラすんぞ」
血のついた手を拭っている少年を見ながら蘇った青年たちが称賛の声を上げる。それを聞いたかつて対戦した女性は、悔しそうに奥歯を噛み締めていた。
「貴様など私が倒してやる!!」
「目が本気だな」
よほど以前彼に辱しめを受けたことを恨んでいるらしく、何としてでも彼を倒したいと肩に力の入っているエーメ。それにユウキがビビっていたが、敵の姿を見てその表情が変化する。
「ゴホッゴホッ・・・ゲホッ」
一度落ち着いたかと思われた咳が再度・・・それも、なかなか止まらなくなってきたレオン。口を押さえるその手からは、ボタボタと赤いものが滴り落ちてくる。
「ん?」
その姿に違和感を持った四人はしばし様子を観察してみることにした。だが、いつまで立っても彼の咳が納まる気配がない。
「これは・・・」
「ずいぶんと深くまで突き刺さったようだな」
よく見ると、止血していたはずの脇腹からも血がちょっとずつ滲み出てきている。それは彼の肉体に与えられたダメージが相当な大きさであることを窺わせるのに十分なものだった。
「そういや、全身包帯だらけだったっけ、こいつ」
「傷も癒えてないのにここに攻めてきたのが運の尽きだったか」
「ぐっ・・・」
一時は人数差を苦としないレオンに押し込まれていた四人だったが、形勢がたちまち入れ替わったことに喜ばずにはいられない。
一方のレオンは、口から流れてくる血を噛み締めながら、痛みに耐えているのが精一杯のように見えた。
「雹」
「無効化」
痛みを堪えて天井を覆うほどに巨大な雲を作り出す。これでこの危機的状況を打破しようと考えたレオンだったが、ユウキにそれを消されてしまう。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
魔法を消されたレオンはガクッと地面に膝をつく。彼の呼吸は次第に荒くなっており、顔を上げているのも苦しくなっていた。
「もうさっきほどの力はないな」
「体力が限界なんだろう」
最初は魔法の完全な無力化もできないほどの力を持っていた少年の変わり果てた姿に残念そうな声を出すユウキ。その隣にいるエーメはそれを見て嬉しさを溢れ出させていたが。
「くくっ。まずは完全に意識を奪ってやる」
剣先を少年へと向け一気に降り下ろすエーメ。それはレオンの背中に突き刺さり、胴体を貫く。
「が・・・はっ・・・」
それによりさらに吐血する少年を見て、エーメの笑みにさらに拍車がかかる。
やがてレオンの瞳が閉じていき、完全に動かなくなってしまう。
「死んだのか?」
「まさか。まだ殺さないよ」
ゆっくりと剣を引き抜くと、支えを失った少年は地面へとグッタリと崩れ落ちる。それから彼女は、血溜まりに浮かぶ少年の腕を掴み引きずり始める。
「どこに行くつもりだ?」
「エミのところに連れていく」
ズルズルと血痕を残しながらレオンをある人物の元へ連れていこうとするエーメ。その後ろ姿を見た三人はタメ息をついた。
「相当恨んでいるらしいな」
「大勢に見られたわけでもないのによぉ」
「女の考えることはわからないな」
以前何があったのかは知っている三人は、止めるのも面倒だと考えたらしく、気の済むようにやらせようと後を静かについていくことにしたのだった。
シリルside
「な・・・ない・・・」
下腹部の下を触りながら、あるべきものがないことに顔面蒼白になってしまう。ないはずのものがあってあるべきのものがない・・・これってまさか、相当ヤバイんじゃないのか?
ドゴォンッ
「うわあああああ!!」
一人あり得ないような出来事に頭が混乱していると、近くから爆音と仲間の悲鳴が聞こえてくる。それで思い出したけど、サクラとラウルが危険な状況に陥っていたこと思い出し、そちらを見る。
「ごめんラウル!!大丈夫!?」
そこにはすでに意識を失い、動けなくなっているラウルと、彼を揺すり謝罪している少女の姿があった。
「まずは一人、ってところかな」
そこから離れたところにいる偽サクラは、完全に伸びているラウルを見て、ゆっくりと二人の元へと歩み寄っていく。
「そこから動かないでね、サクラちゃん」
「うっ」
命令されラウルを揺する手が止まるサクラ。その彼女にルナと呼ばれていた人物が迫る。
「サクラ!!」
絶望感に苛まれていたけど、それよりも今は彼女たちを助けなければと言う責任感が勝る。なので、急いでそちらに向かおうとしたのだけれども・・・
「そうやって隙だらけで、危機感のない子ね」
後ろからもう一人の敵に思いきり胸を鷲掴みにされてしまう。
「キャフッ」
弾力が出てきた胸を掴まれて思わず変な声が出てしまった。女みたいな声に恥ずかしくなり、赤面しつつ口元を押さえる。
「なかなか大きくなったわね、子供の癖に」
反撃しないのをいいことにずっとソフィアのような行動を取っている女性。それを振り払いたいのだが、体が思ったように言うことを聞いてくれない。
「何なんだ・・・お前の魔法って・・・」
変な声が出ないようにと声を押さえながら後ろの変態に問い掛ける。
「私の魔法の鍵は“バランス”。肉体のバランスやホルモンのバランスを崩して、敵に影響を与えることができるの」
最初に突進した時、急に体がブレたのはそれが原因なのか。そして今俺の体に起きているのも間違いなくその魔法が原因だ。
「それで?本物の女の子になった気分は」
イヤらしい笑い声を発しながらそう問いかけてくる。そう、今俺は女の子の体に変化させられているのだ。それもなかなかのスタイルの女の子に。
「絶対殺す・・・マジで殺す」
「いや~ん、オチビちゃん怖いよ~」
本気の殺気を放ってみるが、冗談としか受け取られずにさらに体を密着させられる。マジでイライラしてきたぞ?本気で殺しちゃうよ?
「それじゃ、長い夢へとご案内」
「キャッ!!」
こちらで駆け引き?にもなってないか。そのような感じのものが繰り広げられていると、向こうではサクラが偽物に地面に叩き付けられており、彼女もオレンジ髪の少年同様に地面に伏せていた。
「サクラ!!ラウル!!」
3対2だったにも関わらず、仲間二人を倒され形勢が逆転してしまう。二人のチビッ子を倒した女性は元のサイドテールの女性へと変化すると、こちらへとやって来る。
「あらら?なかなか美味しそうな女の子になっちゃって」
「でしょでしょ?エッチィよね?」
舐め回すように観察してくる薄黄色の髪をした女性と俺を羽交い締めにしている緑色の髪をした女性が楽しそうに今の俺の姿を話し合っている。だが彼女たちのその会話も頭の中に入ってこなくなってきた。なぜかわからないけど、頭がボーッとしてきたからだ。
「エミ、胸揉みすぎじゃない?その子感じまくってるじゃん」
「あれ?やりすぎちゃったかな?」
体から力が抜けかけてきたところでようやく解放される。だけど、息が上がりまくっている上に、妙な疲労感に襲われて地面に崩れ落ちてしまった。
「この子もダウンか。これからどうする?」
「どうしようかしらね」
すでに戦いが終了したかのような雰囲気である二人に悟られないように呼吸を懸命に整える。なんかソフィアにやられた時よりも疲労感が激しいのは、女の子にされちゃってるのが大きいのだろうか?
「エーメたちの手伝いでもしようか?」
「えぇ、あっち4対1じゃん。楽勝でしょ」
聞き覚えのある名前に体がピクッと反応する。エーメって、カノッコ村であった女盗賊と同じ名前だ。
「それより、この子で遊ばない?せっかく可愛くできたんだもん」
疑問に頭を悩ませていると、一人と視線が合い思わず目を反らす。もうこいつらが話していると、嫌な予感しかしないからだ。
「そういえばエーメがこの子の仲間に全裸にされたんだっけ?」
「そんな話し聞いたね」
そういえばウェンディからレオンが女の人の服を一瞬で切り刻んだって言ってたな。となるとやっぱり、あの女剣士がやって来ているのか。
「じゃあさ、この子でその仕返ししちゃおうよ!!部下たち集めて」
「あ!!それ面白そう!!」
その瞬間全身から鳥肌が立ったのがわかった。これから何をされるのか耳に入ってしまった上に、標的がガッツリ俺で決まりきってしまっているからだ。
「そうと決まったら!!」
薄黄色の髪の女性は白い煙で姿を隠す。そして次に出てきた時には、現在の俺の姿へと変化していた。
「エーメに見せてあげよっか。ほら、立って、シリルちゃん」
「ぐっ」
なんで俺の名前を知っているのかわからないけど、体が言うことを聞かずに命令に従ってしまう。そのまま彼女が歩くのにシンクロするように、足が動き出す。
「エーメたちもバトル終わってるといいなぁ」
「まだ合流してないからな、戦ってる可能性はあるね」
二人で並びながら和気あいあいと談笑しているその様子に、思わず吹き出しそうになってしまう。
「お前ら、何も知らないんだな」
「「は?」」
ルナが足を止めたことで同調している俺の足も止まる。そして振り返った二人に向かって、彼女たちの仲間が戦っている相手について教えてあげることにした。
「レオンは俺たちとは別格だよ。お前たちレベルが何人いても、負けることなんかありえない」
前のクエストでのケガが多少残っているけど、それもハンデにはちょうどいいくらいだろう。むしろそれがあっても、彼ならきっと勝ちを納めてくれるはずだ。
「ずいぶん信用してるのね」
「他力本願にもほどがあるけど」
「うぐっ」
それを言われると立つ瀬がない。この間もレオンに助けられたばかりなのに、また今回も彼に助けを求めなくてはならなくなるとは・・・本当に情けない。
「まぁ、強かろうが私たちには関係ないけどね」
「だって人質がいるんだから」
体の自由を奪っている俺を盾にでもするつもりなのかな?俺からするとレオンなら関係なく攻撃してきそうな気がするけど。
「エミ!!ルナ!!」
そうやって会話をしていたら、彼女たちの後ろから聞いたことのある声が聞こえてくる。そちらを見ると、そこにはやはり以前あった女剣士が・・・ん?
「え?」
こちらにやって来る女剣士の姿を見て、目が大きく見開く。なぜなら、彼女が引きずってきているものが信じられないようなものだったからだ。
「レオン!?」
血液の道を作りながら地面を引きずられている氷の神。さっき別れた時とは別人のようになったその姿に、驚かずにはいられない。
「あら?その子ってもしかして・・・」
「えぇ、私たちが倒したわ」
彼女の後ろからゆっくりと付いてくる三人の男たち。彼らもケガをしているようではあるが、レオンのそれと比べれば遥かに軽いものである。
「レオンが・・・堕ちた・・・?」
そしてそれは少年の完全敗北を意味しており、唯一の希望が閉ざされた俺は、ただ呆然としていることしかできなかった。
後書き
いかがだったでしょうか?
今回のストーリーでやりたかったことその2「レオンの敗北」
シリルは女体化してレオンは脱落。おまけに天馬もみんな退場で波乱が起きまくってます。
次は三大竜が出てくる予定です。あとソフィアとか。
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