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風魔の小次郎 風魔血風録

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28部分:第三話 忍の掟その六


第三話 忍の掟その六

 ボーリング場の裏では。やはり夜叉一族の面々がいた。彼等が色々と細工をしていたのだ。
「よし、今度は指が取れなくなるボールだ」
「それをやるか」
 笑いながら細工をしている。しかしそこに竜魔が来たのだった。
「げっ、御前は」
「風魔の」
「せこい真似はさせない」
 竜魔はこう言うと夜叉一族の面々をすぐに叩きのめした。それが終わると彼の目の前に黄色い炎が姿を現わしたのであった。その中にいたのは。
「夜叉八将軍不知火か」
「その通りだ」
 敵意に燃える目で笑っていた。
「風魔九忍筆頭独眼竜の竜魔か」
「そうだ」
 竜魔もまた答える。表情を変えずに。
「やるべきことはわかっているな」
「無論」
 その敵意を露わにした笑みで応える。
「では行くとしよう」
「うむ」
 二人は場所を変えてその場から姿を消した。その彼等と入れ替わりの形で小次郎がボーリング場の裏にやって来た。しかしそこで彼が見たのは倒れ伏す夜叉の者達だけだった。
「何だよ、兄ちゃんもうやったのかよ」
「ふん、所詮は無駄なこと」
 彼等は倒れ伏しながらも言うのだった。
「不知火には勝てない」
「八将軍にはな」
「そうか、やっぱり来ていたのかよ」
 小次郎はそれを聞いて楽しげに笑う。右肩に木刀をかけながら。
「じゃあ追いかけるか。兄ちゃんにいい格好させるもんかよ」
 こう言い残してそこから姿を消した。その時竜魔と不知火はボーリング場の駐車場において対峙していた。最初に仕掛けて来たのは不知火だった。
「行くぞ、竜魔!」
「むっ!」
 激しく跳びそこから右手に持つ木刀と左手に持つ呉釣で攻撃を仕掛ける。左右から縦横無尽に。まるで獣の様な動きだった。
「貴様にこの不知火の攻撃が見切れるか!」
 木刀を突き出したかと思えば左から釣で切り裂かんとする。竜魔はまずはそれを後ろに跳んでかわした。そのうえで一旦間合いを取るのだった。
「今のをかわしたか」
 不知火は一旦攻撃を終えて竜魔に声をかけた。
「まずは褒めておこう。だが」
「だが。何だ」
「この不知火は一対一の戦いでは誰にも敗れたことはない」
 自信に満ちた声で竜魔に対して告げるのだった。
「だから貴様に対しても」
「一対一か」
「そうだ」
 竜魔の言葉にも答える。
「だから。ここで必ず貴様を倒す」
「戯言を。何が一対一だ」
「何っ!?」
「そこに出ている者達」
 不知火が顔を顰めさせたところでまた言うのだった。
「出て来い。そこにいるのはわかっている」
「やれやれ」
「わかっていたか」
「その声は」
 不知火のよく知っている声だった。彼が後ろを振り向くとそこから七つの影が現われた。八将軍の他の面々が姿を現わしたのだった。
「上手く隠れているつもりだったがな」
「気配でわかる」
 竜魔は悠然と右手で扇を操る陽炎に対して述べた。
「それだけの殺気を出していればな」
「殺気か」
 陽炎はその殺気という言葉に対して笑みを浮かべてみせた。血生臭い、獲物を味わう蛇の様な笑みだった。
「この陽炎だけ来たのかと思ったが。皆闘いが好きなようだねえ」
「血に餓えているのさ」
 雷電が手袋をその両手にはめながら前に出て来た。
「風魔の血にな。竜魔」
 そして竜魔に対して声をかける。
「貴様はこの雷電が」
「さて、竜魔よ」
 陽炎がまた悠然と竜魔に声をかけてきた。
「どうするのだ?まさか貴様一人で我等八人と闘うのか?」
「それでもいいが。だからといって容赦はしないぞ」
 黒獅子は二人よりもさらに好戦的な笑みを竜魔に向けていた。
「何しろ貴様等の血に餓えているからな、俺達は」
「俺と闘うか、竜魔」
 妖水はいささか狂気じみた笑みでヨーヨーを操っていた。
「楽に死なせてやるぜ」
「むっ」
 しかしここで。闇鬼がふと声をあげた。
「待て。どうやら一人ではない」
「何っ!?」
「どういうことだ闇鬼」
 彼のその言葉を聞いて白虎と紫炎が声をあげた。
「一人ではないだと」
「では一体」
「やいやいやい!」
 彼等が問うたその時。竜魔の横に小次郎が飛び出てきた。相変わらず右肩に木刀を担いで威勢よく姿を現わしたのであった。
 
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