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真田十勇士

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巻ノ八十六 剣豪その三

「修行中とのことじゃ」
「そうですか」
「そして仕官も願っておられるという」
「そういえば宮本殿は」
「うむ、浪人じゃ」
 彼の身分はというのだ。
「まだな、だから関ヶ原では宇喜多殿の軍勢におられた」
「あの方の」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「勝っておったらな」
「宇喜多様が」
「仕官されておったであろうが」
「そう思うと残念ですな」
「宮本殿にとってはな」
 実にというのだった、根津に。
「あの方は実はな」
「志が」
「高い」
「だからこそですな」
「剣術を極めるだけでなくじゃ」
「ご自身もですな」
「身を立てたいのじゃ」 
 そう考えているというのだ。
「今のまま終わらず」
「仕官され」
「それも大きな藩にな」
「そうお考えだからこそ」
「今の立ち場では満足しておらぬ」
 このことは間違いないというのだ。
「あの御仁はな」
「左様ですか」
「そうじゃ、そしてじゃ」
「その宮本殿と」
「今から会おうぞ」
「では」 
 根津は主に応えた、そしてだった。
 二人で街中のある道場に入った、この時変装することも忘れていない。忍術のそれも使ってそのうえでだった。
 道場に入りだ、幸村はこう言った。
「旅の浪人ですが」
「ふむ、何でござろうか」
 出て来たのは初老の男であった、この道場の主と名乗った。
「この道場に」
「はい、一つ手合わせを願いまして」
 それでというのだ。
「参りました」
「そうなのですか」
「この道場で腕の立つ方は」
「そうですな」
 道場主の男は幸村と根津の目と身体つきを見た、そうして言ったのだった。
「それではです」
「貴殿がですか」
「それがしでは役不足でしょう」
 こう言うのだった。
「お二人のお相手は」
「いえ、それは」
「わかります、お二人は共に相当な方ですな」
 その腕がというのだ。
「ですから」
「貴殿ではですか」
「はい、とても」 
 こう言うのだった。 
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