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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第三章 X《クロス》
  強奪


「イクスヴェリア・・・イクスって言うんですね!」

「はい・・・それにしても師団長クラスをああも簡単に・・・・」

「私だって、「EARTH」の一員でもあるんですから!!ってあれ?私なんで敬語なんだろ?」

「私、王様ですから・・・・」



火災現場のビル内で、スバルとイクスが互いに自己紹介をしてなんやかんやと話し合っていた。



ぶっちゃけると、戦闘の衝撃でビルが崩れて脱出できないのだ。


これ以上壁を崩すと、崩落に巻き込まれる可能性があるということだ。





「やりすぎちゃった・・・・」


そうスバルが呟いて舌を出したのはつい三十秒前。

しかし、その直後にティアナから通信が入って、彼女のことを聞いた。



冥王・イクスヴェリア



マリアージュを作り出す能力を持ち、そしてその力は今の時代に必要ないとし、自分を探すマリアージュから逃げ続けていた少女だ。



無論、スバルも自分の素性やらなんやらを話している。
相手は古代ベルカの時代を生きた正真正銘の本人なのだ。

戦闘機人のことも知っていたし、理解もある。


何より、自分は兵器だ、なんてことは、誰かを拒絶する理由にはならないということを知ってもらいたかったのだ。




そして、理樹とともにこちらに到着したティアナの通信から、彼女がアンデットの標的になっているらしい、ということを聞き、ここから脱出しようと待っているのが今。



「理樹、まだー?」

『もうちょっと。どう撃てばスバルさんたちを凍らせないでビルを凍結させられるか計算してるから』



スバルがもう安心しきった声で理樹に残り時間を聞く。

つまり、外からの冷凍砲撃でビルを凍らせて、崩壊と火災を同時におさめようというのだ。



「エリオたちもいるからしっかりね?」

『わかってるよ。えっと・・・エリオたちはここ・・?なんだこの反応・・・・!?こいつは!?』

「どったの?」



同じようにエリオたちの場所も割り出していた理樹だが、その声が張りつめたものに替わる。
それに対し、スバルが気軽に聞くが、その返答はとてもではないが気軽なものではない。



『アンデット・・しかもこの反応は上級!!』

「!?」

『現在エリオと交戦中・・・・真人は!?』



「理樹!!私、そっち見に行って・・・」






ドォンッッッ!!!





「キャあっ!?」

「ウォォォォォオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

「ゲッは・・・速いッ・・・・このガキが・・・・!!!」




と、そこに突如として壁が崩れ落ち、ドーベルマンアンデットを押しやってエリオがこの場に突っ込んできたのだ。


ストラーダはすでにギア・エクセリオン。
さらには全身から雷をほとばしらせて、その身体能力を限界にまで跳ね上げていた。


「ぐぅお・・・・!!おぉやぁ・・・・見つけたよ、冥王!!」

「!!スバルさん!!!」

「もらっ・・・「させるかぁッッ!!!」」



バツッ!!!




この部屋に吹き飛ばされたドーベルマンアンデットがイクスを見つけそちらに駆けていくが、電光石火でその眼前にエリオが立つ。


「このガキ!!」

「覇ッッ!!」



ドバァッ!!



そして、エリオがストラーダを構えると同時に地面を踏みしめ、電流を周囲にまき散らして電磁波の壁のようなものでドーベルマンアンデットを弾き返して防ぐ。



「ルーテシアをさらったのはお前か!!」

「ガッッハァ・・・・・ち・・・万全じゃなきゃこんなにきついのかい!!」


エリオに向かい、抜き手のようにして二、三度突くドーベルマンアンデット。
命中すれば鋭い爪がエリオの体を突き貫いただろう。

しかし、今のエリオは身体能力が底上げされている状態だ。
その場のコンディションにもよるが、おそらくはライダーの最強フォームにも匹敵しうる。


その突きを身体を逸らし、返して躱し、最期の一撃をストラーダで叩き落として石突でドーベルマンアンデットの顎を下から突き上げた。


が、そこで頭を上に向けながらドーベルマンアンデットが双銃を抜き放ち、エリオに向かって発砲してきた。


それを弾き落とすエリオだが、立て続けにやってくる銃弾が肩や頬、腿を掠り、ところどころ出血させていっていた。


「エリオ!!」

「スバルさんはその子のそばにいてください!!!キャロッッ!!」

『フリード、ブラストレイ!!』



ゴォウ!!!



と、そこでビルの壁が崩れてその向こうから巨大化したフリードの炎が襲い掛かり、ドーベルマンアンデットを包み込んだ。

それにより、その場から彼の姿が消える。
しかし、それと同時にビルに限界が来たのかギギギギギギ、というコンクリートと鉄骨の軋む音がして崩壊が始まった。



「マズイ、崩れるよ!!」

「スバルさん、こっちに!!」


そういってエリオがスバルとイクスを自分のもとに呼び、一か所に集まるように叫んだ。
それに従って集まる二人だが、逃げ道はもちろん、足場すらもが見えなくなるほどに周囲は崩壊し、砂埃を上げている状態。


足場だけはウイングロードを短く展開しているから大丈夫だが、これではすぐに崩壊に巻き込まれてお陀仏だ。



「ど、どうするの!?」

「大丈夫です。理樹さん!!今です!!!」



ドシュッ、ゴォン!!!!



スバルが心配そうに叫ぶ。
が、大丈夫だと言ってエリオが理樹に合図を出した瞬間、彼らを巨大なパイプが覆っていた。


そのパイプはビルを横一直線に貫いており、薄く緑色の色がついたバリアだった、


「大丈夫!?」

「大丈夫です!!救助者も無事です!!」


そのパイプの元には理樹が翼をはためかせて飛んでおり、おそらくはあそこからこれを発生させてビルを貫き、中にエリオたちを入れたのだろう。



「び、びっくりしたぁ・・・」

「あれは・・・翼人!?」


スバルが豪快な助け方に腰を抜かし、イクスが翼人である理樹に驚いて座り込んでしまう。




「真人さんは?」

「真人なら大丈夫。傷は深くないし」



ドーベルマンアンデットと遭遇した瞬間、エリオは激昂して突っ込んでいこうとしたのだが、それを待ってたとばかりにドーベルマンアンデットはカウンターで弾幕を張ってきたのだ。

無論、そんな攻撃を知らなかったエリオはそれをまともに喰らってしまう状態だった。
しかし、それを真人がとっさにかばったらしい。

そのあと、真人は大丈夫だと言って自力で瞬風に戻り、エリオはドーベルマンアンデットを追った、ということだった。




「そうですか・・・よかった」

「じゃあ今から降ろすから、ちょっと待って」


そう言おうとした理樹だが、その言葉が最後まで続く前に、そのパイプを何者かが攻撃してきた。




攻撃してきたのは、真下から。
崩壊して瓦礫の山になったビルの中から、ドーベルマンアンデットが二本のガトリングで黒空流星群を放ってきたのだ。


それはエリオたちのいる場所を挟んで左右の場所に命中し、パイプバリアを粉々に砕く。
無論、その間にいて支えを失ったエリオたち三人は落ちていく。


ウイングロードを再び展開しようとするスバルに、ストラーダを構えようとするエリオ、何かにつかまろうとするイクス。


しかし、その三人のド真ん中にドーベルマンアンデットがジャンプして飛び込んできた。
そして彼が三人の高度に到達した瞬間、独楽のように回転しながら左右に腕を伸ばし、エリオとスバルに向かって引き金を引いた。



二人は空中という不利な体勢にありながらもそれを防ぐが、その連射と威力にストラーダは弾かれて落ち、ナックルで防いだスバルもウイングロードを展開する間もなく、その威力に押されて落ちていく。


そしてドォン!!とガシャァ!!という音をそれぞれ立てて、エリオとスバルが地上に落下した時には、すでにドーベルマンアンデットはイクスをその腕に抱えて気絶させ、その場から逃走を始めていた。



「!!!」

「足いった~シビレル・・・だがもらったぞ、冥王の名を冠する兵器を生産しうる少女!!!」



そう叫んだかと思うと、シュバッ!!という音とともに、ドーベルマンアンデットの姿がその場から消えた。




「ぐ・・・理・・・樹さん!!追えませんか!?」

『クラウドと違って、僕に加速開翼の力はないんだ!!でも大丈夫。居場所はわかってるから!!』




そう叫ぶのは、瞬風の中に戻っていた理樹。
モニターには海の上を走るという芸当をこなしながら逃走するドーベルマンアンデットと、その腕に抱えられたイクスが映っていた。




「ここからなら射程内だけど・・・・」

「ダメだ・・・イクスも巻き添えになってしまう!!「瞬風」搭載の武器は使えない!!」




モニタールームではそう言った言葉が交わされていた。


瞬風で海上を走るドーベルマンアンデットを追ってはいるものの、いかんせん手を出せる状況ではないのだ。


しかも、もし市街地に逃げ込まれるとまずい。
否、地上を逃げられるだけでもまずいのだ。


今のドーベルマンアンデットはさほど早くない。
しかし、それはクロックアップや風足と比べた場合であり、理樹の飛翔と同じぐらいの早さだ。


そのスピードで、瞬風は追いかけている。
この速度でこの巨艦が陸の上を飛べば、その突風で地上が危険にさらされる。

どれくらい危険かと言えば、車が木の葉のように舞うくらい危険である。


かなり上空に上がれればいいのだが、消火活動から追い始めたので高度が足りない。
そして今から上昇しては、その間に逃げられてしまうのだ。




もしここで仮に、理樹が飛び出して追っていけば、確かに追いつく事は可能かもしれない。

しかし、それまでだ。
こうして戦艦には乗って来てはいるものの、まだ先日のクロコダイルアンデットとの戦闘のダメージも全快しているわけではない。

この状況でドーベルマンアンデットと戦い、負けずにイクスを無事に奪い取ることは、あまりにも現実的ではないのだ。


さらにはもし万全でも、彼はあくまでも賢者タイプ――――防御の翼人だ。
一刀も賢者タイプに入るのだが、あれはまた特別な部類。


基本として、賢者タイプの翼人は、防御や能力に重きを置いたタイプ。


本来ならば攻め込むのはクラウドや「彼」のような戦士タイプであるべきなのだ。




この場にエリオやスバルがいれば、必ず取り戻せた。
二人と理樹がそろえば、必ずあいつを止め、イクスを奪い返せる。


しかし、この現状のメンバーでトップクラスの機動力、移動速度をもつ二人は善戦したもののあいつに落されてしまってこちらには来れない。


体力的に見て、もう追いつけはしないだろう。




だから今は―――――



「こうやって・・・追いかけるしかないのか・・・・!!!」

「!!理樹!二時の方向から、大量のアンデットの反応が!!!!」

「そんな・・・・!!!」



と、そこに飛び込んでくるデータ、そして映像。
まだ遠くて細かく見えないが、ザッと見て三十体近くのアンデットだ。


それが群れのように固まり、こちらに向かって突っ込んでくるではないか!



「砲撃用意!!一体残らず撃ち落とすよ!!!」

「「「「「了解!!」」」」」



一同がドーベルマンアンデットを追いながらも、向かってくるアンデット共との応戦体勢に入る。



そして、衝突。



実にその衝突で十体ほどのアンデットが爆発して海に落ちていくが、今はそれを気にしている場合ではない。
残りの二十体ほどが瞬風の速度に合わせてきて、その機体にしがみついて攻撃してきたのだ。


無論、それを撃ち落としていくが、こうも張り付かれては戦艦では分が悪い。


戦艦が揺れ、速度が落ちる。
しかし、それでもまだ彼らはドーベルマンアンデットを追っていた。



だが




「!!! 敵からの砲撃が来る!!全員衝撃に備えて!!僕のタイミングで舵を切るんだ!!」



理樹が揺れる機体の中で、モニターにあるものを見た。

それはこっちに銃口を向け、にやりと邪悪な笑みを浮かべるドーベルマンアンデット。


そして、その腕には、腕を覆うように並んだ銃で構成された一門のガトリング。


無数に並ばされたその銃の中心。
彼自身の握る銃の引き金が、鋭い眼光とともにカチリ、という小さな音とともに引かれ、凄まじい音を放って弾丸が固まって砲撃のように打ち出されてきた。



「今だ!!」

「右方全力旋回!!」



ゴォォォォォオオオオオオオオ!!!




そして、理樹の合図とともに瞬風が大きく右に逸れ、その砲撃を回避しようとする。


船内を凄まじいGが襲い、ティアナは壁に倒れ込み、イスに座っていたメンバーはベルトに身体を絞められた。

そんな中理樹だけはしっかりと立っていたあたり、さすがは翼人。
回避のタイミングも完璧だった。最善である。




そう、最善だった。



今この状況において、出来うる限りの最大の回避だった。




しかし、それでも




ドォン!!ヴィーヴィーヴィー!!!!




「左方推進エンジンに被弾!!」

「予備エンジンに切り替えます!!」



しかしそれでも、黒空流星群は命中してしまった。
船体がぐらりと揺れ、海に向かって落ちていく。


途中で予備エンジンが働くが、それでも落下は止められずに、瞬風は海に落ちた。
まともに落ちれば戦艦は衝撃でバラバラだったであろうことを考えると、本当に予備エンジンに助けられた、ということだ。



海上に浮きあがってきた潜水艦のように浮く「瞬風」



しかし、すでにその視界にはドーベルマンアンデットはおらず、代わりに数十体のアンデットがその船体の上に降り立ってきた。







それから数十分後




ハッチから飛び出した理樹とティアナ、そして艦内にいた者の中で戦える来ケ谷や、負傷したといっても通常アンデット相手ならば問題はない真人によってそれらアンデット達が倒されていった。


さらに数分後には、スバルたちの救助も来て、戦艦瞬風は港にまで運ばれていく。




本格的な修理、そして、この出来事を伝えるために、「EARTH」へと連絡を取ろうとする理樹。





しかし、何度呼び出しても応答かない。





彼らは知る由もなかった。
知れるはずがないのだ。





その同時刻、「EARTH」本部も襲われていたということなど。









to be continued

 
 

 
後書き


救えども、やはり奪われる、イクスさん(字余り)




邪神
「ドーベル君はもう二人も連れてきたのかい!!エェル君も一人連れてきている。それに引き換えなんだね君たちは!!」

コック、クロコ、ブロ
「「「申し訳ございません部長」」」

ドーベル
「まったくもー、がんばってくださいよ。せ・ん・ぱ・い」

エェル
「私も一人だけだがな、一人も取って来れないとはどういうことだ?」

コック
「ンダとぉ?」

邪神
「君らに何か言えた口かね!!こんなところでしょぼくれている暇があったら、さっさと一人でも多く連れてきなさい!!」

三人
「わ、わかりましたぁ!!」



みたいな


蒔風
「なにその今にもな「今日契約取って来れなきゃクビだ!!」みたいなドラマ。そんな邪神いやだわ」


ええ、こんな邪神ではないです。
そもそも、邪神に喋らせるつもりもないですし

蒔風
「なるほど・・・上の会話はこう・・・マンガの裏表紙にあるショートコントみたいなやつだな?」


そんな感じ




蒔風
「そしてドーベル。ま た 数 で 勝 負 か」


さて・・・これがどう影響してくるのか。
そして、「EARTH」で何があったのか!!!

蒔風
「次回、「EARTH」での戦い。そして、十人目の魂は?」


ではまた次回








希少能力持ち少女リスト(現状)


古手梨花
古手羽入
御坂美琴
インデックス
アルルゥ
高町ヴィヴィオ
ルーテシア・アルピーノ
イクスヴェリア
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン


残り一名


 
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