とある科学の裏側世界(リバースワールド)
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ep.043 第2翼 分かり合えないが故に
修冴は蒼い翼で空気を掴みながら、地を駆けるよりもずっとずっと速く飛鳥に迫る。
すでに振りかぶった状態の蒼い剣を縦に振りかざす。
飛鳥はこれを翼で防ぐ。
彼らが使う不死鳥の炎は、炎でありながら実体と質量を持ち、非常に頑丈なため防御にも役立つ。
しかし.....。
「この程度で.....ぶった斬れ!!」
蒼い剣は飛鳥の持つ紅い翼を両断する。
だがそれは飛鳥が敢えて斬らせたのだ。
飛鳥は剣を完全に振り下ろし切った修冴の両腕を紅蓮の刃で斬り飛ばす。
両腕はクルクルと宙を舞いながらボタリと落ちる。
「ちっ!!」
「不死鳥の2部。」
飛鳥はそのまま流れるように修冴の頭部を狙う。
だがその瞬間修冴は炎になり刃で斬れなくなった。
炎は消えず、飛鳥とある程度距離のある場所まで離れると、分散した炎が1つの塊になり、やがて修冴になった。
『斬り落とした腕もくっついてるな。』
理論不死は3羽のそれぞれの能力の中でとくに防御能力に長けている。
元からの防御力も3羽の中では高く、先ほどとは逆に飛鳥が修冴の翼を斬り落とそうとすれば刃を通す事すら不可能だと言える。
また理論不死と言われるだけあって現実にある攻撃手段でフェネシスにダメージを与えられるのは同じ能力である不死鳥を宿す者たちしかいなかった。
『防御力の延長には治癒力の向上も含まれている。 治癒能力は命廻天翔が最も優れてるが、理論不死も治癒能力が低いわけじゃない。』
3羽はそれぞれ攻撃能力、防御能力、治癒能力の3つに分類される。
攻撃能力に長けた不死火鳥は能力によるダメージをもっとも強く与えられる。
防御能力に長けた理論不死は能力によるダメージをもっとも軽減できる。
治癒能力に長けた命廻天翔は能力による反動をもっとも軽減できる。
とくに命廻天翔は1羽しか所持していない状態で第4部まで解放しても、戦えないが多少動くくらいの再起が可能だ。
だが乱発すれば反動の蓄積で等しく死ぬ。
つまりは3羽の中で強さの基準を仮に付けるとするならば命廻天翔が1番強力で不死火鳥と理論不死が拮抗しているのだ。
「気を抜いてる場合か?」
飛鳥はハッとして目の前に意識が向いた。
その瞬間、寒気すら感じさせる殺意を感じ取った。
大きく振りかぶった蒼い剣を振り下ろす。
飛鳥はその一撃を自身の持つ紅蓮の剣で防ごうとするが、蒼い刃は飛鳥の剣に触れると同時に爆発した。
「何ッ!!」
飛鳥は強烈な爆発のダメージをもろで受ける。
無論、能力を使った修冴にダメージはない。
自分の炎で自滅しないようにできているのだ。
「衝撃爆発。」
炎を操れる不死鳥の能力は同じように爆破を操作することも可能で、硬い障害物などはこの爆破の威力で装甲ごと吹き飛ばす仕組みだ。
爆破による黒煙を切り裂くように飛鳥が飛び出す。
不死火鳥は3羽の中ではもっとも治癒能力の低い1翼だった。
「はぁ....はぁ....今のは効いたぜ。」
飛鳥が正常に動けるのは身に宿した命廻天翔の治癒能力による恩恵を受けたからだ。
不死火鳥のみなら致命傷になっていたかも知れない。
『まったく....1番運の無い1翼と言われただけのことはある。 他の補助がなければ簡単に崩れる。』
そう思っている内に命廻天翔の治癒能力で傷口は塞がり、ある程度体力も戻っていた。
修冴はそれを見て歯を食いしばる。
やはり第2段階では飛鳥を倒せないと悟ったのだ。
一方の飛鳥は決着を付けようと第3段階目の技を実行し始めた。
生み出した炎を自ら圧縮し、再び炎の玉に莫大なエネルギーを送り、それを圧縮する。
『何だあれは?』
修冴は唖然とした。
というのも不死鳥の能力はあまりに強力すぎる故、その能力にはいくつものルールが設けられていた。
その中でも大まかなものは2つある。
・自身の所持する不死鳥の数より1つ多い技までしか使えない。
・能力の強力は段階を得て強化されるため、順番に解放させていかなければならない。
修冴はこの2つのルールから未だに第3段階の技を発動させなかったし、見たことも無かった。
圧縮された炎は見る見る膨張し出し、やがて飛鳥が見えなくなるくらいまで巨大化した。
「太陽の3部。」
グラグラと周辺を歪めるほどの強力な熱量。
普通なら発動されるのを阻止しようとするが、修冴の中ではそれとは正反対の意思があった。
修冴はこの技を真正面から受け止めることで不死鳥の能力を試そうとしているのだ。
『3羽揃えば絶対的な力になるという不死鳥の能力。 桐崎は俺よりも能力を使える。 ならこの異能がどこまで強力なのか試しに受け止めてやるよ。』
修冴から生える蒼い炎の翼は鉱物のような性質に変化し修冴を包み込む。
理論不死本来の防御形態だ。
鉱物のような性質に変化した炎の強度はダイヤモンドに匹敵あるいはそれすらも上回る。
「炸裂しろ!」
飛鳥が作り出した炎の球体は破裂し、蓄積された熱量が一瞬で辺りに放出された。
その熱量はダイヤモンドを気化されるほどのもので、真正面から受けた修冴は重症を負った。
後書き
今回はここまでです。
次回もお楽しみに。
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