普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
189 ムーニーとワームテール
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
シリウス・ブラックがホグワーツに侵入してそれなりの時間が経過した。もちろんの事ながら〝シリウス・ブラック、ホグワーツへ侵入〟の報はグリフィンドールの生徒のみならずホグワーツの全生徒に拡散された。
……生徒間では〝シリウス・ブラックの侵入方法〟が、まことしやかに噂されていて、ニアピン──と云うほどでもないが、いい線を行っている考察としては〝灌木に変身した〟等と云う考察もあったり…。
(……まぁそうなるよな──タイミング的にはおかしくないしな…)
そして、俺はと云うとやはりと云うべきか──待ってましたと云うべきか、シリウス・ブラックがホグワーツに侵入して以来最初の〝闇の魔術に対する防衛術〟の授業の後にルーピン先生に呼び出された。
場所は去年──もとい、去年度にロックハートに呼び出された、〝闇の魔術に対する防衛術〟の教室の準備室みたいな部屋だ。
「食べるかい? 〝ハニーデュークス〟の最高級チョコレートだ。美味しいよ」
「いただきましょう」
(整頓されてるなぁ…)
部屋に入って、ファンレターの束が無いことに気付き、きちんと整理整頓された部屋にわずかばかりの寂寥感を覚えたのは自分でも意外だった。
自身でも意外だった寂寥感に戸惑いながら、貰ったチョコレートを味わい、チョコレートの味で満たされている口内をルーピン先生に淹れて貰った紅茶の苦味で直しているとルーピン先生は俺に語りかける文言を思い付いたのか、1つ咳払いする。
「んんっ──そういえばロンは今夏、日本に行ったんだったね。……日本は楽しかったかい?」
「はい。治安も大変良かったですし、日本の人々は優しい方ばかりです──そして何より、ご飯が美味しかったです」
ルーピン先生の語り口は当たり障りの無いものだったので、俺も日本へ行って感じた事をそのまま陳述する。
……やはり、こうやって日本から見てだが──外国に腰を据えて生活していると、日本の暮らしの快適さが改めて判る。
閑話休題。
「ははっ、それは良かった。……でも私が聞きたかったのはそこじゃあないんだ」
(だろうな…)
こうやってルーピン先生に呼ばれ尋問じみた事をされている理由を大方理解している俺は心の中で合いの手を入れる。……しかし、そんな事はおくびにも出さず、顔に〝納得〟しないようにしながら、ルーピン先生の言葉を待つ。
「君は確か12年も生きている鼠を買っているんだってね──〝予言者〟で見たよ。君が〝予言者〟の記者に話した内容では指が一本欠けているともね」
「はぁ、そうですが──スキャバーズがどうかしたんですか?」
「実は推論になってしまうが〝指が一本欠けているネズミ〟には聊か覚えがあるものでね。……だからそのスキャバーズを私によく検分させてほしいんだ」
「どうして──ですか?」
「私の推論が正しければ先のシリウス・ブラックがホグワーツに侵入した件と関係がある可能性があるからだ」
「……っ…」
驚きのあまり、小さく喉を鳴らす。……もう少しぼかすと思っていたが、思いの外直球だったからだ。ルーピン先生は〝さもありなん〟と言いたげに鷹揚に頷いている。
「……〝予言者〟を見たなら知っていると思いますが、スキャバーズは家族の一員です。詳しく聞かせていただけますね?」
「……そうだね。君にも知る権利は有りそうだ」
ルーピン先生は「でも」と切る。
「長くなりそうだから、今夜この部屋にスキャバーズとアニーを連れておいで」
「スキャバーズは判りますがアニーも…?」
「アニー──と云うより、アニーのお父さんであるジェームズと関係している事だ。……故にアニーも知っておくべきだろうしね」
更に「さあ、もうお行き。次の授業におくれちゃうよ」とルーピン先生に言われて、時間を見ると確かに時間はたっぷり有るとは言えない状況になっており、ルーピン先生の言葉を断る理由もとりわけ無かったので、そのまま部屋を辞した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ルーピン先生、こんばんは」
「こんばんは、ルーピン先生」
「こんばんは。よく来てくれた、ロン、アニー」
夜、今日の〝闇の魔術に対する防衛術〟の授業のあとにルーピン先生から言われていた通り〝闇の魔術に対する防衛術〟の準備室に訪れると、ルーピン先生は朗らかな態度で出迎えてくれた。
……当然スキャバーズも連れて来ていて、これから起こる事を知らずにケージの中ですやすやと眠っている。スキャバーズが起きている時といったらご飯時くらいなものだ。……一応ケージの中には車輪等の運動器具は備えてあるのだが、スキャバーズが運動しているところはちっとも見た事がなかった。
(……やっぱり〝服従の呪文〟でも掛けて無理矢理にでも動かすべきか──あっ…)
ぐでっ、といつもの様に眠り呆けているデブネズミを見てそんな事を考えていると、ふと疑問を持つ。
〝死の呪文〟〝磔の呪文〟〝服従の呪文〟は〝人〟に使ってはならない、〝人〟に使ったらアズカバンで終身刑が確定すり──いわゆる〝許されざる呪文〟ではあるが、その対象が〝人間だと知らなかった場合〟──〝未登録の〝動物もどき(アニメーガス)〟だった場合〟は?〟と考えてみるも答えは出なかった。
〝動物もどき(アニメーガス)〟に変身している最中に亡くなってもどうなるかすらもわからないし…。
(これは〝在ったり無かったり部屋〟で調べる必要があるか…)
……ちなみにどう訊いても心象が悪くなる可能性があるので〝先生に訊く〟と云う選択肢は端から無い。
閑話休題。
ルーピン先生の前置きが終わったので、メインの思考をどうでも──よくはないが、今はあまり関係のない内容の考察から、ルーピン先生との会話に切り替える。
「……で、アニー、君をここに呼んだ理由はロンから既に聞き及んでいると思うけど…」
「はい。……どうにもシリウス・ブラックについての話だとか…」
「大体その通りだ。……まずは私と──いや〝私達〟と君のお父さんとの関係から話そう…」
………。
……。
…。
「……以上だよ」
「そんな事が…」
ルーピン先生は、ジェームズ・ポッター、シリウス・ブラック、リーマス・ルーピン──そして、ピーター・ペティグリューについての関係性を、自身が人狼であることと、ルーピン先生以外の3人が未登録の〝動物もどき(アニメーガス)〟であった事以外の全てを語った。
「……で──実に意外だったんだけど、ロンが“忍びの地図”を持っているなら話が早い」
ルーピン先生が語らなかったのは主に〝ルーピン先生自身が人狼である〟の件と〝未登録の〝動物もどき(アニメーガス)〟〟の件の二つだけ。〝いたずら仕掛人〟についての言及があった。
……その事を〝識っていた〟俺はともかく〝識らなかった〟アニーはその件で驚いてしまったので、入手ルートこそ明かさなかったが──“忍びの地図”を持っていると云う話を持っていると云う話をする事となった。
(……まさかなぁ…)
ルーピン先生から過去の話を聞いていて、驚くことがあった〝差異〟があったのだ。
(それにしても──ピーター・ペティグリューが名付け親だったとは…)
てっきり〝知識〟の通り、シリウス・ブラックがアニーの名付け親だと思っていた俺は、思わず呆けてしまった。……小さな差異ではあるが、それこそ〝ピーター・ペティグリューのした事〟がどれだけ罪深かったのか──どれだけかつての親友を憤慨させたのかが判る。
……ピーター・ペティグリューは、ある意味〝子殺し〟と云う大罪を犯そうとしていたとも云える。だからこそシリウス・ブラックに追われているのだ──今もなお。
「ロン、〝地図〟を渡しておくれ──何、別に没収するわけではないから安心してくれて構わないよ」
「判りました。“来たれ(アクシオ)”──どうぞ」
「ありがとう──見事な〝呼び寄せ呪文〟だグリフィンドールに10点上げよう」
〝地図〟を使うとは聞いていなくて、寮に置きっぱなしだったのでルーピン先生からの要請通り、グリフィンドール寮から〝地図〟を〝呼び寄せ〟る。
……渡した瞬間、普通に〝異形戻し〟を使った方が早かったような気がしたが──〝やはり〝ピーター・ペティグリュー〟の名前を〝地図〟上で確認したほうが安心〟だと自己弁護して敢えて口にしなかった。
ルーピン先生は慣れた手付きで“忍びの地図”に杖を当てて「〝われ、ここに誓う。われ、よからぬことをたくらむ者なり〟」と唱える。……すると“忍びの地図”は一も二もせずに、その体を表すかの様に杖先を中心に【ホグワーツ魔法魔術学校】の地図が広がっていき、ホグワーツの全容を表す。
そしてルーピン先生は俺達にも見える様に〝地図〟を俺達がいる──〝闇の魔術に対する防衛術〟の部屋が見れるページまで捲り、一秒ほど動き止めると信じたくないモノを見たかの表情で呟く。
ルーピン先生の視線の先はこの部屋に注がれていて、部屋に居る人物は[ロナルド・ウィーズリー][アニー・ポッター][リーマス・ルーピン]で──そしてあともう一人、この場には見えない[ピーター・ペティグリュー]の名前があった。
SIDE END
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