普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
185 始まる三年目
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
〝〝ホグワーツ特急〟が吸魂鬼の群れに襲われる〟と云う──ダンブルドア校長が憤慨するであろう珍事から幾らか時間が経っていて、俺達は無事に──とはいかなかったが、【ホグワーツ魔法魔術学校】に辿り着いていた。
―こいつは驚いた…。……君達、その歳でもう〝守護霊の呪文(パトローナス・チャーム)〟を使えるのかい? ……私は今年からホグワーツに赴任するんだが──私にまだ君達へと加点する権限が無いのが残念だよ―
アニーとハーマイオニーが〝ホグワーツ特急〟内の吸魂鬼を吹き飛ばしたので、実は吸魂鬼がコンパートメントに入った時点で目を覚ましたらしいルーピン先生からはそう誉められたりした一幕が在ったりしたのだが、詳しくは割愛。
……ちなみに、〝ホグワーツ特急〟が吸魂鬼に襲われた際、マルフォイはフレッドとジョージが居るコンパートメントに逃げ込んだと云う話もあったのだが、そのへんも割愛。
閑話休題。
新一年生の組み分けが大事無く終わり、新入生歓迎パーティーのご馳走が出てくるのを俺の両隣に座っているアニーとハーマイオニーと談笑しながら待っているとダンブルドア校長が不意に立ちあがり、「新学期おめでとう!」と新入生に祝いの言葉を掛けてから神妙な面持ちで話し始めた。
「皆にいくつかお知らせがある。……その内の一つはとても──本当にとても大事なことじゃから、ご馳走を食べて眠くなってしまう前に片付けてしまおうかの…」
ダンブルドアはこほん、と咳払いの後に「〝ホグワーツ特急〟での〝捜査〟があったから皆のものも知っている通りなのじゃが…」と続け──更に言葉を紡ぐ。
「我が校、【ホグワーツ魔法魔術学校】は今年度から人の幸せな気分を啜って生きる──云うところの吸魂鬼を、シリウス・ブラックが捕まるまでアズカバンより門番の代わりとして預かっておる」
ダンブルドア校長がいつに無く神妙な面持ちで語る。
……生徒間に不安が走ったのが判った。
「吸魂鬼は儂も最も穢れた生き物だと思っている生き物じゃ。吸魂鬼にはいかなる言い訳や取引は通じぬ。……じゃから、くれぐれも学校の入り口に近付くなどして──吸魂鬼に手を出させる口実を与えるでないぞ」
ダンブルドア校長はそこに「監督生の諸君は己が寮生の生徒が吸魂鬼に手を出さぬ様に努々気を付ける様に」と付け足す。
そして今度はこほん、と咳払いを1つして、今度は朗らかな表情と明るい声音で話を切り替えた。
「さて、今からは楽しい──嬉しい話をしようかの…」
ダンブルドア校長がそこから語ったのはルーピン先生の〝闇の魔術に対する防衛術〟のクラスの教授に着任すると云う話と、ハグリッドが〝魔法生物飼育〟にのクラスに於いて〝ハグリッド先生〟となると云う話だった。
……あまりな好ましい言い方ではないが──言ってしまえば〝知識〟通りの話だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
(さてどうするか…)
よく飲んで、よく食べ、よく騒いだパーティーの夜、グリフィンドール寮のベッドの上でもはや恒例の〝自問自答会〟を脳内で開催していた。……その〝自問自答会〟の議題の内容はやはり、〝今年はどうするか〟であった。
(アニーには〝守護霊の呪文(パトローナス・チャーム)〟を授けちゃったしなぁ…)
それは〝ルーピン〟の出番を奪ってしまったと云う事にもなり得るが今年、吸魂鬼がこのホグワーツに蔓延るのが判っていた手前、〝アニーに〝守護霊の呪文(パトローナス・チャーム)〟を教えない〟と云う選択肢はなかった。
(あ、そういえば)
〝守護霊の呪文(パトローナス・チャーム)〟ついて考えていたらふとクィディッチに乱入してきた吸魂鬼を思い出し、連鎖的に〝全く〟と云っていいほど関わってこなかったクィディッチの事を忘れていたのを思い出す。
……クィディッチの事を思い出せば更に連鎖して自寮のチームであるグリフィンドール・チームのキャプテンであるオリバー・ウッドの事を思い出した。
(……クィディッチについても考えないとな──あぁ、そういや、オリバーが今年で最後か…)
俺はクィディッチは嫌いではないし、きっとアニーもクィディッチは嫌いではないだろう。……寧ろ音速以上で戦闘機動をとった事がある俺と、両親──特に父であるジェームズ・ポッターからその才能を存分に継承出来ているアニーからしたらクィディッチは得意な部類だろう。
いつもの三人の中で話に上がらなかったハーマイオニーだが、彼女自身がクィディッチが得意でない事を自覚していたのか、〝在ったり無かったり部屋〟にて俺とアニーに箒の乗り方についても師事してきたので、箒の乗り方についても教授しておいた。
……最終的にはハーマイオニーは、その頑張りが功を奏したのか〝良い〟くらいにまで向上した。……もちろん〝在ったり無かったり部屋〟でのブーストも相俟っているのだろうが、やはりはハーマイオニー自身の頑張りの成果なのである。
閑話休題。
(……今年からクィディッチやるのもありっちゃ、ありか…?)
一年時はスリザリンにクィディッチ杯を取られ、二年時はレイブンクローが優勝するのを〝予想〟した。……〝ニンバス2001〟を携え、鼻持ちならない笑みを浮かべているマルフォイにこれ以上ホグワーツで大手を振って歩かせないためだ。
一年時はともかくとして、二年時はクィディッチの優勝杯をグリフィンドールが取れない理由に俺が関わっていて──クィディッチ杯が獲得出来ない事は判っていたことなのだが、悔しくないなんて事は無い。
……しかしそんな事は露とも知らないだろうオリバー──と、フレッドとジョージは断り続けている俺とアニーに一年が経過した今でも声を掛けてくれている。……正直なところ、オリバー達のクィディッチに対する熱意に絆され掛けていた。
(……そうなれば箒を造る必要もあるな──いっそアニーのも一緒に造るか? ……アニーの様子を見る限りだとアニーも同様だろうし…)
前に述べたことがあったが、アニーは〝ニンバス2000〟を与えられていない。……そうなれば、諧謔的な言い方になってしまうが──〝ぼくのかんがえたさいきょうのほうき〟を造る必要がある。
〝ぼくのかんがえたさいきょうのほうき〟と考えて〝最凶の加速力を持つ箒〟〝最高の追従性を持つ箒〟──などと云った様々な箒が思い浮かぶ。
(……箒は〝別荘〟で造るとしても──なんならそこらの箒を〝魔獣化〟させても良いしな)
〝生きている箒〟なんてものはもう〝箒〟とは云えないかもしれないし──十中八九クィディッチでも使えないだろう。……そんな事は頭では判っていても、妄想は止めなかった。
……やはり、〝在ったり無かったり部屋〟で箒の造り方を調べつつ、一から造った方が話が早いだろうと気付く。
(クィディッチの件はこれでいいかね。……そして──後は…後は…後は…)
今年からアニーを誘ってクィディッチに参加をすることを決めてそこらの話題を取り敢えず打ち切っては二ヶ月前の様に意識を沈めていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
―ミスター・ウィーズリー、ミス・ポッターは残りなさい。後で話があります―
〝古代ルーン文字〟の授業を終えてやっとこさ見付けたマクゴナガル先生が教師を務めている〝変身術〟の授業後、マクゴナガル先生からそんな風に呼び止められる。
(……〝特別授業〟の事か…)
マクゴナガル先生に呼び止められる理由について覚えがあった俺とアニーは──少なくとも俺は心を踊らせていた。アニーも生徒達が退室するまで浮わついている様子を隠しきれていなかったあたり〝特別授業〟に対して心を弾ませているのだろう。
「昼食の前です。貴方がた二人もお腹を空かせているでしょうから件の〝特別授業〟について手短に連絡事項を伝えておきます」
「はい」
「良い返事ですミス・ポッター。……よほど楽しみだったのでしょう。……今日夕食を済ませたらこの部屋に来なさい。今日の夜から〝特別授業〟を開始しましょう」
「今日からって──新学期開始早々ですね」
食い気味にマクゴナガル先生の言葉に反応してしまって羞恥のあまり「うぅ…」と轟沈したアニーは放っておき──俺とアニーの二人のみが受講出来た〝特別授業〟。余りにも早く開講されるので少々面を食らってしまった。
「……〝あれ〟は一朝一夕で習得出来るものでは決してありません。だから練習を始めるのなら、早ければ早いほどに越した事はないのです」
「あ、なるほど」
言われてみれば腑に落ちるもので、〝あれ〟はとても──〝変身術の最高峰の1つ〟と云っても良いほどに高度な魔法であり、その修得にかなりの年月が掛かる代物だった。……公開されている限りの〝それ〟を使える7人に関する文献を見る限り、人によっては10年も掛かったと云う例もあった。
……〝予習〟──もといズルが出来ていた俺は多分だが、マクゴナガル先生の講座を3回ほど受けるだけで直ぐに修得出来るだろうと予測している。……しかし、マクゴナガル先生は俺が〝予習〟出来ていることは知らないので、修得までの速さを少々ゆっくりにしなければならない。
(……アニーに“アギトの証”を貸して〝在ったり無かったり部屋部屋〟で隠れながら練習すれば1年でいけそうだ)
そんな皮算用を脳内でしている内にマクゴナガル先生から「昼食へ向かって良いですよ」と言われ、俺とアニーはその指示通り昼食の為にホールに向かった。
それがマクゴナガル先生からの〝特別授業〟──〝動物もどき(アニメーガス)〟の授業の第一歩だった。
SIDE END
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