普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
182 ガリオンくじグランプリ
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
俺からしたらホグワーツに入学して2回目の夏休み。フレッドとジョージに気を散らされるのをさすがに学習した俺は、課題を出された手前から〝在ったり無かったり部屋〟でハーマイオニーと、新たに俺達の訓練に参加する事となったネビルともに一気に片付けた。
―……うわぁ…。凄すぎて、もう〝凄い〟としか言い様がないよ…―
これは〝在ったり無かったり部屋〟──もとい【エヴァンジェリンの別荘】を初めて見たネビルの感想で、あまりにも〝お約束〟な感想だったので俺達三人は苦笑いしたり。
……ちなみにネビルの魔法的な手腕は、〝2年生と云う年齢からしたらそれなり〟と云うくらいにまで引き上げておいた。……〝それなり〟止まりなのは、夏休みの課題を片付けながらあくまでも課題の消化が先決だったからだ。〝ちゃんとした訓練〟が始まるのは来学期からにしてあり、その辺はネビルにも伝えてある。
閑話休題。
……更にちなみに、アニーがこの〝宿題ローラー〟に参加しなかったのは理由がある。……「今の内に課題を終わらせちゃうと、夏休み中アルビオンと遊ぶくらいしか暇を潰す方法が無くなっちゃうんだよね」──とはアニーの言で、そう語るアニーは妙に煤けていたのが印象的だった。
また閑話休題。
そして、俺達ウィーズリー家は激動の渦中にあった。
【日刊予言者新聞】から〝高額当選しました!〟とな旨の、〝二通〟の〝吼えメール〟が届いて【隠れ穴】がてんわやんわとなり──まだその騒々しさが抜けていないのが現状だ。
実は父さんもグランプリを──それも二等を当てていたのだ。……それ故【日刊予言者新聞】から〝今世界で一番幸運な魔法使いの一家〟と囃されるようになったり…。
「はぁ~…」
新学期、マルフォイからもたらされるであろうイヤミの事を考えると軽く憂鬱になる。
……7月14日──ホグワーツから帰ってのとある朝のことだった。
………。
……。
…。
「あらロンおはよう」
「おはよう、母さん」
寝起き特有のアンニュイな気分を気合いで顔を洗うと同時に吹き飛ばし、階下のリビングに降りてみればそこには朝食の準備している母さんの姿があった。母さんの朝の挨拶に返し、テーブルの脇に置いてあった【日刊予言者新聞】を手に取る。
……皆がまだ起きる前なら、時間的な限度はあるが──割かし悠々自適と新聞を読めるので俺は早起きを心掛ける様にしている。
閑話休題。
――――――――――――――
【魔法省官僚とその息子 〝ガリオンくじグランプリ〟大当たり! 賞金の総額は2200ガリオン!!】
〝魔法省・マグル製品不正使用取締局長〟アーサー・ウィーズリーと、その六男で【ホグワーツ魔法魔術学校】の生徒であるでロナルド・ウィーズリーが今年の〝ガリオンくじグランプリ〟を当てた。
これでウィーズリー一家が当選した賞金額の総額は2200ガリオンとなり、アーサー・ウィーズリー氏は記者に向かって「これを奇跡と言わずに何を奇跡とするのか。家族の皆も、大層驚きながら喜んでいたよ。……妻のモリーが顕著だった」と、万感を籠めて語ったと云う。
なお、賞金の使い道に関してアーサー・ウィーズリー氏に訊いてみたところ、「旅行になると思うよ。行き先の方は詳しくは決まっていないが、ロン──一等を当てたロナルドの希望で日本になると思う。……〝日本〟はロナルドの話ではマグルの電化製品で一番を行っているらしいから私としても楽しみだよ」と、アーサー・ウィーズリー氏は記者がたじろいでしまうくらいに熱弁した。
――――――――――――――
「……おっふ…。……なんじゃこれは」
新聞を読み、満面の笑みを浮かべている父さんの写真を見て変な呟きを洩らしてしまった俺を誰が責められようか。
これではいけ好かないマルフォイへの話題の種を渡してしまったようなものだ。
ちなみに〝息子さん──俺の方にも取材を…〟という話があったらしいが、父さんが矢面にたってくれたのでそこら辺は感謝している。
……罷り間違って酷評家──もとい、〝でっち上げ屋〟のリータ・スキーターに当たったりしたら、その時点で須郷と同じ処置を取っていた公算が高い。
閑話休題。
(……父さんが起きたか)
気が付けば母さんと父さんの寝室から人──母さんはキッチンで朝食を作っているので、父さんが出て来るのが判ったので、【日刊予言者新聞】を畳み、いつも父さんが座るところに置いておく。
それと同時に父さんがリビングへのそのそ、と欠伸を噛み殺しながら入ってきた。
「……ふぁ~あ、おはよう二人とも」
「おはよう、父さん」
「おはよう、アーサー。……もう少しで朝ごはんが出来ますからね、座って待ってて──ロン、悪いんだけど」
「OK、いつも通り皆を起こしてくるよ」
こうして今日もまた一日が始まる。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE アニー・リリー・ポッター
「電話は良いねぇ、人類が生み出した文化の極みだよ。……グラハム・ベルやトーマス・エジソンに感謝しなきゃ──いや、ホント」
『……ガチもんの天才だからなその二人は』
「そうだね」
電話の向こうのロンの呟きに短く肯定の意で返して直ぐに話題を移す。
……ホグワーツから帰って来たボクは、やはりと云うべきかこのダーズリー家で狭隘な生活を強いられていた。……〝ダドリーのボクに対する接し方〟に多少の変化はあったが、総じて〝障らぬ神に祟りなし〟精神で接してきているのが丸判りだった。
「……で、日本はどうだった?」
『概ね良かったよ。……ただなぁ…』
「〝ただなぁ…〟──って、どうしたの? ……何かあった…?」
歯切れの良くないロンを心配しながらそう訊いてみるが──ボクのそんな心配はどうやら杞憂だったようで…。
『いやいや、日本って〝電化製品〟の──非魔法族の最先端を行ってるだろう? だからさ秋葉原に行った時、父さんが狂喜乱舞したのを思い出してな』
「あー、なるほどね」
去年ロンの家に泊まらせてもらった際、ボクが非魔法族の家で育てられた事を知ったウィーズリーおじさん──ロンのお父さんから盛大に絡まれた事を思い出す。
ウィーズリーおじさんの〝あれ〟は、〝日本以外の国に居るなんちゃって日本フリーク〟──とな表現が一番適しているのかもしれない。……それほどウィーズリーおじさんはマグルとマグルの生み出した文化が好きなのである。
「……ふふっ」
『ぐぬぅ…。嘲りおったなっ…?』
ロンのそんな話を聞いていたら去年の事を思い出し、笑みの一つや二つ、知らず知らずのうちに洩れてしまう。……しかしロンはそんなボクの失笑を嘲笑と受け取ったのか〝気分を害しました〟──みたいな体を取る。
……が、電話越しからでもロンがそこまで怒っていないのがわかる。ロンの声音には険がのっていないし、〝ロナルド・ランスロー・ウィーズリー〟になってからは判らないが──真人君がかちキレると逆に静謐になるのを知っているからだ。……間違っても今みたいにふざけた口調にはならない。
「ごめんごめん。……でもボクも暇だったんだよ?」
『……まぁ、いいけどなー。……課題は?』
だからこんな風に軽くででも良いから、謝ればすんなりと赦してくれる。……そしてロンは思い出したかの様に話題を〝課題についてのあれそれ〟に移す。
「もう8割以上は終わってるよ。……もう9割いくかも」
『はやっ。……まぁ、俺も一応それくらいだけどな』
ホグワーツに居る分は、〝在ったり無かったり部屋〟である程度他の生徒より時間が使えるボク達からしたら宿題が出されても〝吝かではない〟とばかりに片付けられるのだが、こちらの場合はいかんせん、〝どっさり〟と出されても、一ヶ月ほど机に張り付いていたら課題がおおよそ片付いてしまう。
ロンやハーマイオニーと同様に〝課題が苦にならない〟──と云うのも関係していた。
……尤も、ネビルはロンやハーマイオニーとやっていた〝宿題ローラー〟を見るかぎり〝お察しください〟と云う感じだったが…。
「………」「………」
一瞬、沈黙がボクとロンの間を支配するが、数秒の後ロンは不意に〝英語ではない言語〟で語りだす。
『……〝本当はアニーとも日本へ行きたかった〟』
「……〝ボクもだよ〟」
ロンが口にした言語ボクも聞き慣れていた言語──日本語だった。……ボクはパスポート持っていないので、海外に行けなかった。
「……〝日本へならロンに新婚旅行で連れてってもらうから良いもん〟」
『〝へぃへぃ、判りましたよ──でも気が早すぎやしませんかねぇ…〟』
ロンは悪態をつきながら更に『〝……いや、結婚が可能になったらすぐにプロポーズするんだけどな〟』と付け足す。
「ありがとう──でももうすぐ〝時間〟だから切るね」
『……わかったよ。じゃあ7月30日──明日か。……明日にそっちに行くから』
「うん、またね」
がちゃり、と電話を切る。……実に楽しい時間だったが大概の事象には〝終わり〟と云うものがある。楽しい時間が終わってしまった。……そして〝終わり〟があると云う事は〝始まり〟もあると云う事になる。
……余韻に浸るためにも自室に戻ろうと思ったが、その前に近くの物陰で息を潜めていた〝彼〟に声を掛けておく。
「……ダドリー、居るんでしょ?」
「ボーイフレンドかい?」
「そうだよ」
ぬ、と物陰からガタイが縦にも横にも大きい従兄弟──ダドリー・ダーズリーが揶揄い混じりに訊いてきたので、一も二もなく肯定する。……彼氏と云うよりは寧ろ婚約者に近いが、そこまで語ってやる義理はないので皆までは語らない。
(……明日か…)
7月30日──明日はボクの誕生日である7月31日の前日なので、ウィーズリー一家に迎えに来てもらい、【隠れ穴】でボクの誕生日を祝ってもらえる事になった。
(まぁ、それより──)
「ママぁー! アニーよく判らない言葉を使ったぁぁあ!」
それより今ボクしなければいけないのは、ペチュニアおばさんに日本語が話せる事についての説明だった。
SIDE END
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