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怪獣の来訪

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第七章

「そうはな」
「夢にもね」
「ああ、しかしな」
「しかし?」
「子供はやっぱりな」
 怪獣かと思えるまでにやんちゃで手がかかってもというのだ。
「元気でないとな」
「心配になるわね」
「そうだろ」
 こう妻に言うのだった。
「怪獣がいいのか病気がちなのがいいか」
「どっちがいいかっていうと」
「答えは一つだな」
「ええ」
 その通りだとだ、美紗子も答えた。
「そう言われるとね」
「幾ら手がかかって困ってもな」
「子供は健康が第一ね」
「そうだろうな、だからな」
「翔平のやんちゃはかえって」
「喜ぶべきだろうな」
「そうなるのね」
 美紗子も納得した顔で頷いた。
「つまりは」
「そうだろうな、それじゃあな」
「ええ、これからもね」
「翔平を二人で育てていこうな」
「元気な子のまま」
「そうしていこうな」
 二人で笑顔で話した、そしてだった。
 二人はこの時言い合った通りに頑張ってだ、二人で翔平を育てていった。翔平はすくすくと育ち名前を取った人物の様に成長していった、だが。
 目出度く成長して就職もした息子にだ、美紗子は少し笑ってこんなことを言った。
「まさかね」
「まさかって?」
「いえ、背は大きくなるって思ってたわ」
 それはというのだ。
「けれどね」
「けれどって」
 翔平はもうすっかり大きくなっていた、背は一九〇を超えている。勇人も一緒にいるが両親よりもずっと大きい。
「何かあったの?」
「まさか消防署に入るとは思わなかったわ」
「全くだ」
 勇人も言う。
「しかも事務なんてな」
「ラグビーをしてね」
「野球じゃなくてね」
「事務になるなんてな」
「思わなかったわ」
「まあそれは」
 どうしてかとだ、翔平は妻に答えた。
「人事でそうなったから」
「だからか」
「仕方ないのね」
「うん、僕に言われてもね」 
 それはというのだ。
「どうしようもないよ」
「そうか、それはか」
「翔平が出来ることじゃないのね」
「ちょっとね、けれど就職も決まったし」
 翔平はそんな両親に笑って話した。
「これからも元気に頑張るよ」
「御前は生まれてからずっと元気だったけれどな」
「もう元気過ぎる位にね」
 二人は翔平が産まれた頃からのことを笑って話した。
「これからもな」
「そうしていってね」
「何か子供の頃そんなに悪かったんだ」
「ははは、怪獣みたいだったぞ」
「本当にね」
 二人は息子に笑ってこうも話した。
「とにかく悪くて悪戯ばかりしてな」
「大変だったのよ」
「けれど元気でな」
「そのことは心配していなかったわ」
「そうなんだね、まあとにかくこれからもね」
 就職が決まったからとだ、翔平はまた言った。
「元気にやっていくよ」
「そうしろ、健康で元気でいられたらそれだけで幸せだ」
「だから何時までもそうあっていてね」
 翔平と共にいたそれだけの歳月を経た顔でだ、二人は我が子に言った。そうして二人で共に我が子のこれからの幸せを願うのだった。幼い頃は怪獣の様だった彼のことを。


怪獣の来訪   完


                        2016・12・23 
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