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花火と犬

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第三章

「だからね」
「そうだな、じゃあそっちを用意するか」
「西瓜よりも?」
「そうするか」
「それじゃあね」
「さて、楽しみだな」
 権造は笑みを浮かべて自分の気持ちを述べた。
「その日が」
「そうね、じゃあ窓からね」
「花火を観るか」
「お酒を楽しみながら」
 ロックの梅酒を飲みつつだ、そう話してだった。
 老夫婦は実際に花火大会の時を待っていた、その日はすぐに来た。
 大会は夜になると早速はじまった、空に次から次にだった。
 大輪が咲く、赤や青、白に黄色で彩られた花達がだ。権造は自宅の窓からその花達をロックの梅酒を飲みながら眺めていた。
 そして隣で観る早百合に言った。
「孫達は残念だったな」
「花火だけじゃ嫌だっていってね」
「出店の方に行ったからな」
「朱鷺子と一緒にね」
 二人の娘である、ちなみに次女で夫の仕事先の関係で二人の家からすぐの場所に住んでいる。長女の三和子はやはり夫の仕事先の関係だが二人の家から離れた場所にいて今回は来てはいない。
「そうしたから」
「だからな」
「仕方ないわね」
「そうだな、まああの子達が来たらな」
「アイスはね」
「何時でも出そうな」
「ええ、そうしましょう」
 二人で花火を見つつ話した、そして。
 権造はふとだ、サンルームの方を見てから妻に問うた。丁度一発の花火が終わったのその間にとそうしたのだ。
「タロとワラビはどうだ?」
「ちょっと見て来るわね」 
 早百合も二匹がいるサンルームの方を見て答えた。
「これから」
「ああ、頼むな」
「タロは多分ね」
「立って尻尾振ってはあはあ言って舌出してな」
「嬉しそうにしてるけれど」
「ワラビだな」
 権造が気にかけているのは彼女のことだった。
「どうだろうな」
「ちょっと見て来るわね」
「ああ、悪いな」 
 早百合は夫に言ってからサンルームの方に行った、そしてすぐに戻って来てこう言った。
「やっぱりよ」
「怖がってるか」
「ええ、かなりね」
「そうか、じゃあ俺もな」
「見て来る?」
「ワラビは怖がりだからな」
 このことはよくわかっている、家族であるだけに。
「それじゃあな」
「やっぱり怖がってたわね」
「どんな感じか見て来る」
「わかったわ」
 権造もサンルームに行った、早百合も夫について行った。すると実際にだった、タロは灯りを点けたサンルームの中で。 
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