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ルーブルの聖女

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第二章

「大変だろ」
「入館時は他の格好でトイレの中で着替えて」
「その格好にな」
「後は美術館の中を歩き回る」
「何で歩き回るかですね」
「何かと物騒だしな」
 近年とだ、ボレロはブリゲーニュに話した。
「世の中」
「テロがありますからね」
「テロリストは手段も場所も選ばないからな」
「悪質な奴は徹底的にそうですね」
「そもそも平気で一般市民に無差別な攻撃を行う連中だぞ」
 軍隊や政府の施設や人員等でなくだ。
「何の関係もない武器も持っていないな」
「そんな卑劣な連中ですから」
「この美術館の中でもだ」
「それこそ平気で、ですね」
「仕掛けてくる」 
 テロ、それをだ。
「美術品も観ている人達もな」
「それこそ平気で、ですね」
「爆弾仕掛けたりする」
「今は変装してですね」
「事前に爆弾とか仕掛けやすい場所チェックしているかもな」
 そうではないかというのだ。
「それか暴れるには何時何処がいいかとかな」
「観て回っているんですか」
「毎日観て回ってな」
「そもそも入館、退館時にいないことは」
「このこと自体がおかしいだろ」
「はい、本当に」
 ブリゲーニュもボレロのその指摘に頷いた、男二人で昼食を摂りつつ熱心に話をしている。尚その食事の量はブリゲーニュは先輩の三倍程のものだ。
「そこは」
「と、なるとな」
「不審者か幽霊か」
「幽霊ならいいがな」
「幽霊はテロをしないからですね」
「どれだけましか」
 無差別攻撃をするテロリスト達よりというのだ。
「本当にな」
「言われてみればそうですね」
「だからその不思議な女性を見たらな」
「要注意ですね」
「館長にはわしから言うか」
 この美術館の責任者である彼にというのだ。
「そうするか」
「そうされますか」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「何かおかしな動きをしたら」
「少しでも」
「その時は君の出番だ」
 ブリゲーニュの巨大で筋肉質のその身体を見つつの言葉だ。
「いいな」
「僕のですか」
「確かレスラーだったな」
「はい、プロレスの方の」
 学生時代のことをだ、ブリゲーニュはボレロに話した。
「それをやっていました」
「得意な技は何だ」
「カナディアンバックブリーカー、パイルドライバー、ドロップキック、空手チョップです」
「大技が多いな」
「その大技で、ですか」
「どうしてもという時はな」
 こう言うのだった。
 
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