英雄伝説~灰の軌跡~
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第13話
~パンダグリュエル・格納庫~
「これは……!?」
「……ッ……!」
「なああああああああっ!?」
「最悪の状況ね………」
「チッ……既に先回りされちまっていたとはな。」
貴族連合軍の兵士達の死体だらけの格納庫の惨状を見たルーファスは目を見開き、アルフィン皇女は息を呑み、デュバリィは信じられない表情で声を上げ、スカーレットとヴァルカンは厳しい表情でリィン達を睨んでいた。
「うふふ、リィンお兄さんに達についてきて正解ね♪―――お陰でレンが狙っていた獲物を楽に見つける事ができたわ♪」
「やはりアルフィン皇女も連れてきてくれましたね。」
「ああ、後はアルフィン皇女以外を殲滅するだけだ。」
レンは笑顔を浮かべてヴァルカンとスカーレットを見つめ、ステラの言葉にリィンは静かな表情で頷いてルーファス達を見回した。
「なあっ!?あ、貴女は……――――メンフィル皇女”殲滅天使”レン・マーシルン!しかも”特務支援課”にいたリィン・シュバルツァーまで……!まさかたったそれだけの戦力でこの惨状を作り出したというのですか!?」
「え……”シュバルツァー”………?ま、まさか貴方はテオおじさまとルシアおばさまの……」
レンとリィンに見覚えがあるデュバリィは信じられない表情で声を上げ、デュバリィの言葉を聞いて一瞬呆けたアルフィン皇女は驚きの表情でリィンを見つめ
「………お初にお目にかかります、レン皇女殿下。我が名はルーファス・アルバレア。”四大名門”の”アルバレア公爵家”の嫡男にして、若輩の身ではありますが貴族連合軍の”総参謀”を務めさせていただいております。初対面で突然質問をする等無礼に値しますが、それでも質問させて頂きます。メンフィル帝国の今回のこの暴挙………やはりユミルの件でしょうか?」
一方ルーファスは一端冷静になってレンに会釈をした後厳しい表情でレンに問いかけた。
「クスクス、さすが”総参謀”と言った所かしら?状況の理解が早くて説明の手間が省けたわ。」
「ッ!何故ですか!?襲撃されたユミルの被害は軽微で済み、更に死者も出ていないと聞いております!しかもあの件は父―――アルバレア公の独断です!なのに何故メンフィル帝国はエレボニア帝国との戦争に踏み切ったのですか!?」
自分の推測をレンが肯定すると唇を噛みしめたルーファスは厳しい表情でレンに問いかけた。
「「………………」」
「よくもお兄様とエリゼお姉様の前でそのようなふざけた事をぬけぬけと口にできますわね……」
(……あら?どうしてあの兵士は笑って………もしかしてあの兵士の方は……)
ルーファスの発言を聞いてリィンとエリゼが厳しい表情でルーファスを睨んでいる中、セレーネは怒りの表情で呟き、ある事に気づいたステラはアルフィン皇女を護衛している一人の貴族連合軍の兵士に視線を向けていた。
「うふふ、自作自演で”ハーメルの惨劇”を起こしてリベールに戦争を仕掛けたエレボニアがメンフィルの怒りを攻めるなんて、傲岸不遜ねぇ?第一今回の戦争は”メンフィル帝国領にエレボニア帝国の貴族が雇った猟兵が襲撃した事が原因”であって犠牲者の有無は関係ないし、ユミル襲撃は”ハーメルの惨劇”と違って、正真正銘”他国の襲撃”によるものの上、”ハーメル”の時と違って、戦争回避の為の猶予―――謝罪や賠償をする期間は与えてあげたわよ?」
「え……リベールに戦争を仕掛けたエレボニアって……もしかして”百日戦役”の事ですか!?しかもエレボニアが自作自演で”ハーメルの惨劇”を起こしたって仰いましたけど、”ハーメルの惨劇”とは一体どういう事なのですか!?」
「バカな……大使館から私の耳にそんな話は届いておりません!」
レンの話を聞いてある事に気づいたアルフィン皇女は驚きの表情でレンに問いかけ、ルーファスは信じられない表情で反論した。
「大方貴方達貴族連合軍の部下達が内戦とは関係ない他国に駐留している大使達からの連絡をまともに取り合おうとしなかったのじゃないかしら?”真に恐れるべきは有能な味方ではなく無能な味方”とはこの事を言うのでしょうね♪――――最も、だからと言ってユミルの件でエレボニアに怒りを抱いているメンフィルがエレボニアの事情を気にして戦争を仕掛けないなんてありえないんだけどね♪―――ああ、それと”ハーメルの惨劇”に関してはオリビエお兄さん―――オリヴァルト皇子も知っているから、再会する事ができたらその時に聞いたらオリビエお兄さんが”百日戦役の真実”を教えてくれるのじゃないかしら。」
「オリヴァルトお兄様が”百日戦役の真実”を………」
「……ッ……!」
レンはルーファスを見つめて笑顔で指摘した後アルフィン皇女の問いかけに答え、レンの答えにアルフィン皇女が呆然としている中、ルーファスは唇を噛みしめ
「更にもう一つ良い事を教えてあげる♪今回の戦争の元凶となった貴方の父であるアルバレア公爵は貴方の母と共にレン達メンフィル帝国軍によって討たれて”見せしめ”としてバリアハートの貴族街に、バリアハート占領時にメンフィルが連行して処刑したバリアハートの貴族連合軍に加担していた貴族達の当主達と共に”晒し首”にされているわよ♪」
「!!」
「なあっ!?」
「”鉄血”並みにえげつない事をするようだな、メンフィルは………」
「しかもバリアハートが既にメンフィルに抑えられていたなんてね……」
「そ、そんな………」
凶悪な笑みを浮かべたレンの答えを聞いたルーファスは目を見開き、デュバリィは信じられない表情で声を上げ、ヴァルカンとスカーレットは厳しい表情でレン達を睨み、アルフィン皇女は表情を青褪めさせて身体を震わせていた。
「そういう訳で、聡明な貴族連合軍の”総参謀”の貴方は既に理解したでしょう?メンフィル帝国は今回の戦争でエレボニア帝国の”貴族連合軍”を報復対象とし、”貴族連合軍”の上層部や貴族連合軍に加担していた貴族達の当主達の殲滅を目的の一つとしているって事に。―――勿論貴族連合軍に加担している結社を始めとした”裏の協力者達”のおバカさん達もみ~んな、その中に入っているわよ?」
「……ッ!」
「つまりは私達もメンフィルの標的になっているという事ね……」
「クソッ、”西ゼムリア通商会議”を襲撃した”G”の旦那達の件もあるから、この戦争で俺達”帝国解放戦線”もついでに殲滅しようって魂胆か……!」
「!まさかNo.ⅠやNo.Ⅹと連絡が取れないのは既にメンフィル軍との戦闘を始めているからですか!?」
レンの話を聞いたルーファスは自分達が絶体絶命にして投降すら許されない状況である事に唇を噛みしめ、スカーレットとヴァルカンが厳しい表情をしている中、ある事に気づいたデュバリィは目を見開いてレンに問いかけた。
「大正解♪”劫炎のマクバーン”はパパ―――”英雄王”リウイ・マーシルンとリフィアお姉様の”守護神”であるゼルギウスお兄さんが、”怪盗紳士ブルブラン”はエヴリーヌお姉様達と”剣帝”がそれぞれの”執行者”を殺害する為に相手をしている最中だから、あの二人がここに救援に来ることは諦めた方がいいわよ?」
「なあっ!?」
「と言う事は結社からの援軍もアテにできないみたいね……」
「どうするんだ、”総参謀”さんよ。まさに”万策尽きた”状況だぞ。しかもさっきの”殲滅天使”の話からすると投降した所で俺達は全員殺されるぜ。」
レンの口から出た更なる凶報にデュバリィは信じられない表情で声を上げ、スカーレットは唇を噛みしめ、ヴァルカンはルーファスに判断を促した。
「………レン皇女達を無力化し、レン皇女を人質にとってメンフィル軍と交渉して地上に下ろしてもらう。ただ、メンフィル帝国との和解交渉の件で少しでもエレボニアがメンフィルと戦争を望んでいない事を印象付ける為にも絶対にレン皇女は当然として、レン皇女の護衛達の命も奪わないでくれ!」
「この状況で殺すなとか、無茶言ってくれるぜ……」
「ハア……まあ、厄介なのは”殲滅天使”だけで後はただの護衛兵なのが唯一の救いね……」
「アリアンロード様直属の鉄機隊の”筆頭隊士”たる私にとっては大した相手ではありませんわ!」
ルーファスの指示にヴァルカンとスカーレットがそれぞれ呆れている中、デュバリィは得意げに胸を張った。
「卿らは殿下の護衛に専念してくれ!」
「ハッ!」
「……了解。」
更に貴族連合軍の兵士達にアルフィン皇女の護衛を命じたルーファスは自身の得物である騎士剣を抜いてヴァルカン達と共にリィン達と対峙した。
「我が信念と誇り、そして”あの方”への忠誠を貫き通す為、無礼を承知で一時的に貴女を拉致させて頂きます、レン皇女殿下。」
「(”あの方”ねぇ?ちょっとだけ気にはなるけど、どうせここで殺せば戦争に支障はないからあんまり気にしない方がよさそうね……)うふふ、それじゃあ貴族連合軍の”総参謀”及び”裏の協力者達”の”殲滅”を始めましょうか、L小隊の皆さん♪」
「御意ッ!―――リザイラ、メサイア、アイドス!みんなも力を貸してくれ!」
ルーファスの口から出たある言葉が気になったレンだったがすぐに頭の片隅においやってリィン達に視線を向け、レンの言葉に力強く頷いたリィンはリザイラ達を召喚した!
「なっ!?」
「何なの、あの女達は……!?あの黒髪の男の身体から出て来たように見えたけど……」
「―――気を付けろ、S!あの3人の中で特に紅毛の女から尋常じゃないヤバイ気配を感じるぞ!」
「へ――――って、なああああああっ!?あ、ああああああ、貴方は”嵐の剣神”セリカ・シルフィル!何で貴方がここにいるんですの!?」
リザイラ達の登場にルーファスとスカーレットが驚いている中アイドスの強さを感じ取っていたヴァルカンはスカーレットに忠告し、アイドスの容姿を見てある人物と勘違いしたデュバリィは信じられない表情で叫んだ後表情を青褪めさせて狼狽え
「フフ、私はセリカお兄様の妹のアイドスよ。」
デュバリィの様子を見たアイドスは苦笑しながら答えた。
「へ?よく見たら女性ですわね……何だ、本人じゃないんですの。フフン、ちょうどいいですわ……クロスベルで貴女の兄から受けた屈辱、ここで返させて頂きますわ!」
アイドスの答えを聞いたデュバリィはアイドスをよく見てアイドスが女性であり、自分が知る人物ではない事に気付いた後不敵な笑みを浮かべた。しかしデュバリィの発言を聞いたリィン達は穏やかな性格をしているとは言え、実力からすればこの場にいる敵味方の中で間違いなく”最強の存在”であると共に”人の身では絶対に勝てない存在”と言ってもおかしくないアイドスに向けたデュバリィの発言の無謀さに気付いていた為冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「アハハハハハッ!”神格者”でもないただの人間が古神相手によくあんな無謀な事が言えるわね♪」
「ふふふ、アイドスの強さをその身で思い知った時にさぞ面白い反応をするでしょうね。」
「クスクス、まさに言葉通り”知らぬが仏”ね♪」
「ア、アハハ……相手はアイドス様の強さを知らないのですからあのような態度でいられるのも仕方ないかと。」
一方ベルフェゴールは腹を抱えて笑い、静かな笑みを浮かべているリザイラの言葉に続くようにレンは小悪魔な笑みを浮かべ、メサイアは苦笑していた。
「えっと……どうやら彼女の相手はアイドスに任せた方がよさそうだな。頼めるか、アイドス。」
「ええ、任せて。」
困った表情をしているリィンに視線を向けられたアイドスは苦笑しながら答えた後異空間から自身の神剣――――”真実の十字架”を取り出して構え
「こ、この霊圧は一体……!?」
「な、なんなのよ、その”剣”は……!古代遺物から感じられる”力”を軽く凌駕しているわよ!?」
「何だとっ!?」
「なあっ!?な、ななななな、なんですの、その”剣”は!?主の”槍”と同等――――いえ、それ以上の”力”を感じますわよ!?」
真実の十字架から感じる膨大な霊圧や神気を感じたルーファスは唇を噛みしめ、信じられない表情で声を上げたスカーレットの分析を聞いたヴァルカンは驚き、デュバリィは狼狽えた。
「クスクス……レンは大男―――”帝国解放戦線”幹部”V(ヴァルカン)”の相手をしてあげるわ。眼帯の女性―――”帝国解放戦線”幹部”S(スカーレット)”の首はリィンお兄さん達に譲ってあげる♪」
ルーファス達の反応を面白そうに見ていたレンは気を取り直してリィン達に指示をし
「わかりました。ベルフェゴール達の中から誰か一人を殿下の援護に回しますか?」
「嬉しい申し出だけど、レン一人で十分よ。――――ハアッ!」
リィンの申し出を断ったレンは魔人化して自身の得物である大鎌を構え
「――――神気合一!エリゼとセレーネ、メサイアとリザイラは”S”の相手を頼む!ステラとベルフェゴールはルーファス・アルバレアの相手をする俺の援護を頼む!」
「「「「はいっ!」」」」
「了解しました。」
「了解♪」
レンに続くように自身の”力”を解放したリィンはエリゼ達に指示をし、リィンの指示にエリゼ達は力強く頷いた。
「―――メンフィル帝国軍所属L小隊隊長リィン・シュバルツァー以下9名。これより貴族連合軍の”総参謀”並びに”裏の協力者達”の殲滅を開始する。行くぞ、みんなっ!!」
「おおっ!!」
そしてリィンの号令を合図にリィン達はそれぞれが相手をする敵に向かって行き、戦闘を開始した―――――!
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