レーヴァティン
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第一話 夢幻の世界へその十五
教会の外観は木造のキリスト教の教会だった、ただし三角の屋根の上にあるものはハンマーだった。十字ではなく。
そのハンマーを見てだ、久志はまた言った。
「トールだからですね」
「ああ、わかったかい」
「トールの武器のミョッルニル」
「それだよ」
そのハンマーはというのだ。
「トール様の象徴でな」
「それが教会にあるから」
「この教会はトール様のものになるんだ」
「そういうことですね」
「じゃあ今から中に入ってな」
そのトール神の教会にというのだ。
「その兄ちゃんと会ってくれ」
「わかりました」
男に応えてだ、久志は彼に教会の中にも案内された。教会の中も木造でありキリスト教の教会にある様なステンドガラスはなく。
簡素な礼拝堂があるだけだった、そこにやはり木で彫られたトール神の像が置かれていた。髭だらけの顔をした半裸の筋肉質の大男だ。右手には短いハンマーがあり腰には帯がある。久志もよく知っているトール神の姿だ。
その神の前にだ、黒いキリスト教のものを思わせる法衣を着た男がいた。そしてその男の前に彼が座っていた。
「やっぱり御前だったか」
「貴様か」
英雄だった、英雄は久志にその鋭い目を向けて応えた。
「貴様もここに来たのか」
「ここが何処か全然わからないんだけれどな」
「俺はさっき聞いた」
英雄は法衣の男に目を向けて言った。
「神官というらしい」
「神官さんか」
「はい」
その神官と呼ばれた男も応えてきた、見れば穏やかな表情をした初老の男だ。顔の皺と白髪が印象的だ。
「トール様にお仕えしている」
「そうですか」
「それで、です」
神官は久志にも話した。
「宜しければこの世界のことを貴方にもお話したいですが」
「そうしてくれますか」
「さもないとですね」
「はい、何が何だかです」
久志は神官に言った。
「どういった世界に来たのか訳がわからないので」
「そうですよね」
「お話して下さい」
「それでは」
「じゃあわしはこれで」
久志を教会まで案内してくれた男は久志の後ろから言ってきた。
「畑に戻ります」
「おじさんは農家でしたか」
「ああ、そうだよ」
男は久志に笑って答えた。
「これでも広い農園持っててな」
「やっていってるんですか」
「そうさ、今から麦畑だ」
そちらの畑に行くというのだ。
「かかあと一緒に頑張ってくるさ」
「そうですか、ここまで有り難うございました」
「礼いはいいさ、じゃあまたな」
「はい、また」
二人でこうしたことも話してだ、そしてだった。
久志は神官からこの世界のことを聞いた、それは彼にとってははじめて聞くものだった。そしてここから全てがはじまった。
第一話 完
2017・1・5
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