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第二章
「学校帰りに皆見に来るまでらしいぜ」
「えっ、沢口靖子さんクラス?」
「そこまで凄いの」
「そんなに可愛いの」
「ああ、そうらしいんだよ」
あの美人女優に匹敵するまでだというのだ。
「だからな。期待できるぜ」
「さあ、どんな娘なのか見るか」
「楽しみにしておくか」
男組だけでなく女組もだ。誰もが期待していた。そうしてだ。
その転校生が来た。その名前は。
伊豆香奈恵といった。まず皆このことに気付いた。
「おい、小さいな」
「小柄じゃね?」
「一四七位か?」
「子供みたいだな」
まずはだ。皆その小ささを見た。しかもだ。
顔はいい。蒲鉾型の黒い、睫毛の長い目に形のいいカーブをした眉に大きめの薄い唇の口、ややふっくらとした柔らかそうな頬を持っている。黒髪を奇麗に櫛を通して肩の付け根辺りまで伸ばしている。
確かに可愛い。しかしだ。誰もが拍子抜けして言うのだった。
「童顔だよな」
「可愛いけれど高校生に見えないよな」
「どう見ても小学生だよな」
「だよな、子供か?」
「ちょっと。ロリはなあ」
「俺ロリもいいけれどちょっとロリ過ぎるだろ」
流石に小学生にしか見えなくてはだというのだ。
「長野から出て来たらしいけれどな」
「可愛いことは可愛くてもな」
「幾ら何でも子供過ぎるな」
「ちょっとな」
「だよな」
皆香奈恵があまりにも小さく子供に見えるからだ。それでだ。
一気に引いた。まさに潮が引く様にしかもだ。
喋っているのを聞いてだ。余計にだった。
「小学生の声だよな」
「年齢詐称じゃねえよな」
「高いしな」
「女の子だって声変わりするのにな」
「そんなの全然感じさせないしな」
「何なんだろうな、本当に」
皆彼女をとても高校生、彼等にとって年齢的に相応な相手だと思えなくてだ。それでだ。
恋愛対象からは外した。女組もこう言うのだった。
「可愛いことは可愛いわよね」
「それも凄くね」
「話してても明るくてジョークも通じるし」
「ウィンタースポーツ好きだしね」
この辺りは流石長野と言えた。
「意地悪とかもしないし」
「いい娘なんだけれど」
「噂みたいにカリスマがかったのないわよね」
「あれじゃあ子供だからね」
「凄く小さいし」
香奈恵は文句なしにクラスで、いや学年で一番小さな娘だった。勿論列になると一番前だ。しかも体育の授業では半ズボンがやけに大きく見えた。
とにかくあまりにも小柄で童顔なのでアイドルというよりはジュニアタレントの様な目で見られた。周囲の評価はそうした意味で期待外れというものだった。
だがそれでもだ。例外がいた。剛士はだ。
その香奈恵、同じクラスになった彼女をはじめて見た時からだ。ぼうっとなった。
それでだ。クラスメイト達に密かにこんなことを言うのだった。
「なあ、伊豆さんってな」
「小さいよな」
「小柄だよな」
「小学生にしか見えないわよね」
「すっごく可愛くないか?」
こうだ。驚いた様な顔で言うのだった。
「もうな。あんな可愛い娘いるんだな」
「可愛いことは可愛いけれどな」
「それは確かだけれどな」
「それもかなり」
クラスメイト達も香奈恵は可愛いことは認めた。
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