世界をめぐる、銀白の翼
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第二章 Lost Heros
最終戦、最後の一人
ディエンドの周囲から八人のライダーが消え、彼一人だけが崩れたトンネルを見ていた。
ここもまた入る前と同じように、左右が壁ではなく鉄骨の鉄橋。
終わったはず。
だが、このジットリとした嫌な感じは何か。
目の前の瓦礫。
ただの残骸にすぎないその中から、いまだに途切れぬ敵意があふれ出てきていた。
それに――――
ガラッ・・・・
攻撃をぎりぎりで回避したはずのフェイトと長門がいない。
「!!」
ディエンドがディエンドライバーを握り、驚愕する。
瓦礫の中から蒔風が立ち上がってきたのだ。
その右手にはブスブスと煙を上げて焼けている「何か」を握っていた。
おそらくはその「何か」を盾にして攻撃をしのいだのだろう。
しかし、それでもダメージは通っており、頭からは血を流し、全身からは擦過傷が見え、口は切ったのか吐血なのかはわからないが血の跡が残っていた。
「まさかあれを耐えきるとはね・・・・・!!!」
「小賢しいぞ、海東。インビジって逃げておけばいいんだよ、お前は」
「・・・・・確かにそれは考えたさ」
蒔風の言葉に、海東が応えた。
そう、彼はやろうと思えばいつものように引っ掻き回してはインビジブルのカードで逃げることもできた。
だが
「だけどね、君は前に言ったんじゃなかったかい?」
「あん?」
「倒すことより、守ることの方がはるかに難しい。それこそ強さ、ってね。弱いのはシャクだから僕もやってみたけど・・・いまでは皆を守りたいと思っている。もちろん、自分が一番なのは変わらないけど」
「・・・・上等」
「だから危なくなるまでは、君を倒すためにいろいろやらせてもらおう」
《ATTACK RIDE―――BLAST!!》
ディエンドがカードを装填し、数十発もの弾丸が蒔風へと襲いかかる。
その弾丸をすべて右手で握っているそれで弾き飛ばし、接近して行く蒔風。
そして、ディエンドが蒔風の握っているものを見てギョッとした。
最初、握っているのは瓦礫か何かなのかと思った。それを盾にして凌いでいたものだとばかり思っていた。
だが、接近して初めて分かった。
これは人だ。
しかも、こんな消し炭のような状態でもまだ再生しようとしているようで、再生したてでもろい肉体がブラストの弾丸ではじけ飛んで行っていた。
「ッッ!?」
それを見ては銃弾など撃てない。
ディエンドが蒔風の攻撃を避けながら、ディエンドライバーで殴っていく。
と、蒔風の後方頭上にフェイトが現れ、その首を狙ってバルディッシュサイズフォームを振るった。
その左足は怪我をしており、血でボロボロになっていた。
おそらくは回避しようとした瞬間、蒔風が掴んで引きとめたのだろう。
蒔風が何をつかんで彼女を止めたのかは、わかりきっている。
その右腕に握られているモノがそれだ・・・・
蒔風は右手に握ったそれをフェイトに突き出し、その鎌を寸前で止めさせた。
「お前・・・ッッ!!!」
「やらんのか?ならおれがやろう」
蒔風がそう言ってグシャリ、と非常に耳障りで嫌な、炭を握り潰したような音がし、その「人」の首が握りしめられもろく崩れた。
直後、その体が光と変わって消え去り、それが長門の姿の写ったカードへと変化する。
「有希さん!!!」
「厄介な長門やれてよかった。礼を言っとくぞ」
「お前・・・!!!」
その言葉に、フェイトがバルディッシュからハーケンセイバーを放ち、それとともに飛び出してきて蒔風へと自身も切り掛かる。
計六発のハーケンセイバーと、フェイト自身とで計七つの斬撃が蒔風へと迫る。
(掛け値なしの七発同時斬撃!!片腕じゃ防ぎも弾けもしない。躱しても大樹さんが狙い撃ってくれる。さあ・・・)
「終わり・・・だ・・・・!!!」
その考えのもとに、フェイトが蒔風へと突っ込んだ。
フェイトの後方ではディエンドがファイナルアタックライドのカードをディエンドライバーに装填して準備をしていた。
―――彼女の考えは正しい。
今の蒔風にはこれを防ごうにも、フェイト自身の攻撃は受け切れない。
うまく弾き、流したとしても、同様にフェイトの攻撃には弾き返されてしまうし、そうして体がはみ出た瞬間にディエンドに撃ち抜かれるだろう。
だからと言って最初から回避などしたら当然ディエンドに撃たれるし、そもそもそんな大きな動作では下手をしたらフェイトにだって切り捨てられるかもしれない。
そう、彼女の考えは正しいし、十人に聞いたら十人は「倒せる」と答えただろう。
だがそれは、そこに「相手が蒔風だったら?」という項目がなければ、だが。
この男に、「決死」はない。
それに、あくまで死に対してだけだが「覚悟」もない。
だから、「やる」と思った瞬間にはその行動がとれるのだ。
たとえそれが、未来を無視した行動であっても、だ。
ドドドドドド、ザシュッ・・・・・・・・
想像よりもはるかに静かな音と主に、フェイトが蒔風に突っ込んだ。
しかし、おかしい。
剣を打ちすえた音もしない。
回避し、受け流したのか?
違う、それならば地面に突き刺さったコンクリートが破壊された音がするはずだ。
回避はしていない。
ならば、導き出される答えは一つ。
「え・・・?」
「やっといて・・・驚くな・・・覚悟の強さを、見せてくれよ」
「そん・・・なっ!?」
ゴゴッ!!
直後、蒔風の右拳にブゥン、と絶光の光が宿り、光速で拳が振るわれてフェイトを撃ちすえた。
「ガはっ!!」
「・・・・・」
フェイトの左腕上腕に蒔風の拳が叩きこまれ、そのまま地面に叩きつけられる。
地面との板挟みに、彼女の内臓が圧迫されて地面に亀裂が入った。
「やめろ!!」
と、そこに銃弾を放つディエンドだが、蒔風が身体に突き刺さった刃でそれを器用にはじいた。
フェイトが地面に倒されて始めて見えた、蒔風の姿。
背中に三つ
左腕に二つ
左肩に一つ
それぞれにハーケンセイバーの刃が
そして、バルディッシュが右肩に突き刺さった状態で、蒔風は立っていた。
そう、彼は最初からなにも考えていなかった。
避ける?
受ける?
耐える?
笑わせる。そんな物に意味はない。
そこに必要だったのは、ただ目の前の相手を叩き伏せるこの腕。
そして、その腕の届く範囲に相手がいてくれさえすればいい。
そこにわざわざ飛び込んでくるのなら、喜んで受け入れようじゃないか―――――
蒔風の身体から、フェイトへダメージを与えたことでハーケンセイバーが消える。
身体から血が流れ出すが、この程度の出血ならまだ翼人は動ける。
《ワールド!!!》
「な!?」
「に・・・!?」
と、そこであの音声が流れる。
蒔風の右腕は、フェイトを地面に押し当てているので見えないが、何やらもぞもぞと動いていた。
「ばかな・・・あのメモリは探偵君が確かに・・・!?」
その事実に驚愕するディエンド。
それを無視し、蒔風は顔を上空を向け、視線だけをディエンドへと向けた。
「落ちよ・・・」
「!?」
「刃っ!!!」
「クッっ・・・!!!・・・・え?なにも・・・(ドスッ)・・・・か・・・は・・・・?」
蒔風のその言動から、おそらく真上から刃が落ちてくる――つまりはアーチャーの力か何かだろうと思ったディエンドが、咄嗟に上空を見上げた。
しかし、その先にはなにもなかった。
直後、胸に重い衝撃と、鋭利な痛みが走る。
間抜けな声を出し、自分の胸を見るとそこには「獅子」が突き刺さっていて、蒔風はフェイトの背中に座り、腕を拘束して封じ込めていたのだ。
その瞬間、ディエンドは後悔した。
たとえ一瞬だったとしても、この男から目を逸らした自分の行動を。
そうして装甲が散って、大量の血を流しディエンドの身体がカードへと消えた。
それを見て、蒔風が右手に握った携帯の決定ボタンを押して音を鳴らす。
《ワールド!!!》
「こんな程度に騙されるとは・・・・」
「ッッ!!アアアアアアアアアアアアアアアアアああああ!!!!ああ・・・アアアアアアアアアアアアアアアアアああああ・・・・アアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああ!!!!おまえ・・・・お前はァァァァアアアアアアアアア!!!!!!!」
その蒔風の言葉にフェイトが嘆き、悲痛な声を上げ、更にそこに怒気を込めてなおも咆哮し、背中に乗る蒔風を睨みつけた。
「お前ッ・・・は・・・!!!」
「最低、か?」
「それ以下だ・・・この犯罪者が・・・!!!」
「皆言ってただろ?俺は一級品の暗殺者だ・・・ってな」
ゴキッ!!!
そうして、蒔風がフェイトをカードへと消す。
そして
ヴォォン・・・・・・
「来たか」
「お前・・・!!!」
そして、ようやく合流することに成功したクラウドは、その光景を目の当たりにして絶句した。
もはや、残っているのは自分だけ。
全員だ。
自分を残して、全ての者がやられてしまった。
「来いよ。終わらせるんだろう?」
「・・・・!!ォ・・ォオ・・・・・」
「さあ・・・・」
「ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
ドォン!!!
クラウドがバイクを疾走させ、蒔風へと突っ込む。
蒔風はそれを紙一重で回避しようとし、身体を返した。
しかし
「おアアアアアア!!!」
「うぐッ!?」
バイクからクラウドが飛び出し、蒔風へと掴みかかって行った。
そのクラウドと共に蒔風が押し出され、そのままハイウェイから落下して行った。
落下先は、森。
上を通るハイウェイのせいで、所々に影が射し、それがこの森の鬱蒼感を醸し出していた。
木々にもまれながら、二人が大地に到達する。
クラウドが無言で大剣のすべてを組み上げ、一つにして握る。
それに応じ、蒔風は風斬車に組み上げた「天地陰陽」を握って静かに見る。
「オレが最後の「EARTH」メンバーになってしまった・・・・」
「・・・・・・」
「だから・・・・だからオレがお前を倒す!!!」
「・・・・御託はいい・・・・お前、オレを倒したいんだろ?えェ!?・・・・・来いよ・・・」
そういって、男二人が睨みあい。
その剣がぶつかり合って最期の闘いが始まった。
to be continued
後書き
ついにここまで来ました・・・・!!!
次回で、全ての戦いが終わります。
そこであらかじめ言っておきましょう。
次話の戦闘は非常に短いです。
力ある者同士の戦闘は、本当に一瞬で終わるということで。
やっと冒頭に続いた・・・!!!
次回、戦闘終了。そして・・・・
リスト残り
クラウド・ストライフ
コンディション
左腕使用不可。
体力値:36%
背中に三つ
左腕に二つ
左肩に一つ
右肩に一つ、刃の刺突痕
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