ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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86部分:雷神その二
雷神その二
「アルスターの小娘はどうしておる?」
「今は修道院に放り込んでおります。如何致しましょう」
側近の一人が答えた。王は指を顎に当て暫し考えたがすぎに断を下した。
「シアルフィの者共に利用されると厄介だな。消せ」
「解かりました」
「あと武器庫や財物庫にも火をかけよ。敵に利用されぬようにな」
「御意」
命令を下し終えると王は側近達に護られ城を発った。東門をくぐり橋を渡ろうとしたその時だった。上空に天馬が現われた。
王が去った城内では手に松明を持った兵士達が廊下を駆けていた。そして一人また一人とそれぞれの道へ別れ進んでいた。一人の兵士が付き当たりの部屋の前に到着する。扉の上の札には『武器庫』と書かれている。
「よし」
兵士は鍵を開けた。だが鍵は付いてはいなかった。
「あれ?掛け忘れてたのか?」
いぶかりながらも部屋へ入った。そして手にする壺の中の油をぶちまけようとしたその時だった。
兵士の前に二本の剣が交差された。そして次の瞬間には両手を羽交い絞めにされた。
「はい、それまで」
部屋の置くから一人の若い男が出て来た。リフィスである。
「悪いがここの武器は俺達が使わせてもらうぜ。燃やされちゃあ勿体無いしな」
「な、な、な・・・・・・・・・」
兵士が口を酸欠の魚の様にパクパクさせる。リフィスはそれを見て意地悪い笑みを浮かべて言った。
「何で俺達がここにいるって?簡単だよ、空から来たのさ」
そう言って上を指差した。
「天馬や竜に乗せてもらって降下したんだよ。まあ身軽な奴しか乗れなかったけどな。けれどこうしてあんた等の邪魔は出来たわけだ」
「ぐう・・・・・・」
その言葉にぐうの音が出た。
「もっとも俺達の足は速いからな、じきに皆ここへ来るぜ」
松明は取り上げられ消された。兵士は縛られ床に転がされた。
「あんたは今から俺達の捕虜だ。まあうちに入るんなら話は別だがな」
リフィスはニヤッと笑った。その後ろでは兵士達が次々と武器を外へ運び出している。
街を一騎の岸が全速で駆けている。暗灰色の髪と黒い瞳を持つ中年の男で口髭を生やしている。丈の長い茶がかった黒い軍服に白ズボンと黒ブーツを身に着け白いマントを羽織っている。
険しい顔をしている。そこには焦りと不安が色濃く表われている。手綱を握る手は固く、周りには一切目をくれない。ただ離れた場所にある修道院を見ている。
(もう少しだ・・・・・・)
馬を急がす。それに従い馬足が更に速まる。
(間に合ってくれ・・・・・・)
白い修道院の前に着いた。馬から飛び降り腰の剣を抜き階段を駆け上がる。木造の扉は開かれていた。そのまま中へ入っていく。
中は礼拝堂だった。窓は様々に彩られたステンドガラスであり椅子と横長の机が整然と並べられている。礼拝堂の奥には祭壇が設けられており地槍ゲイボルグを司る神である地母神エルダの像がある。そこで数人の男と二人の少女が争っていた。
一人は茶の長い髪の小柄な少女である。剣を手に机の上と椅子の間を跳び回っている。
椅子を敵へ向けて蹴り上げる。敵の男はそれを顔に受け後ろによろめいたところを喉を掻き切られる。別の男が剣を出すとその手を蹴り飛ばし顔の横を刺す。まるで猿の様である。
もう一人の少女は茶髪の少女と同じ位の背丈をしており後ろを短く切り前を延ばした茶の髪型に少年の様な顔立ちと茶色の大きな瞳を持っている。膝までの白い法衣と赤がかった橙色のタイツ、緑のマントを着ている。
少女が左手の平を前へ突き出した。火球が撃たれ男の胸を直撃した。男は吹き飛ばされステンドガラスを破り外へ落ちていった。
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