ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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8部分:峡谷の戦いその四
峡谷の戦いその四
「がはっ・・・・・・」
口から鮮血を吐きハロルド将軍は倒れた。
「馬鹿な、寄せ集めの軍ではなかったのか・・・・・・」
小さく呻きハロルド将軍は息絶えた。馬上で弓を高く掲げたレスターに周りの解放軍の将兵から歓声が湧き起こった。それを見たイザーク軍の将兵達は我先に解放軍へ投降しだした。
ガネーシャの戦いは解放軍の圧倒的な勝利に終わった。参加兵力は解放軍三千、イザーク軍一万五千、イザーク軍は兵力の五分の一に当たる三千近くの将兵及び司令官であるハロルド将軍が戦死し残った将兵は全員解放軍に投降した。セリスは彼等を迎え入れ解放軍はその兵力を一万五千と一気に増やした。ガネーシャ城は無血開城し、解放軍は入城した。
「それじゃあ今後は僕達と一緒に戦ってくれるんだね?」
城の一室でセリスは一組の男女と話していた。男は筋骨隆々の長身に黒く長い髪と髪と同じ黒の瞳を持つ精悍な顔立ちの若者である。白いズボンに茶のブーツ、緑の上着とバンダナを着け胸当てを装備している。女は男と比べると小柄であるが歳の割には少し高めの少年の様な少女であり黒髪と漆黒の瞳、白いズボンの上に黄のブーツを履いている。やや丈の長い赤橙の上着をベルトで止めている。
「はい。私も妹のエダもトラキア王のやり方に疑問を持ち出奔した後このイザークで傭兵をしていました。しかしダナン王の悪辣な行いにも賛成出来ませんでした。もしセリス様が宜しければこのディーンとエダを解放軍の末席に加えて下さい」
ディーンと名乗った男は淡々とした感じでセリスに参入の希望を述べた。エダは黙して兄の隣で立っている。
「歓迎させてもらうよ」
セリスは微笑んで言った。
「僕達はグランベル帝国の圧政から皆を救う為に戦っている。だがまだまだ力が足りない。僕達と一緒に戦ってくれるのならば過去や出自はどうだっていい。ただ民衆を苦しめなければね」
「セリス公子・・・」
「君達も今から解放軍の一員だ。共に帝国の圧政から民衆を救おう」
「解りました!」
「はい!」
二人は解放軍の敬礼となったシアルフィ式の敬礼をし部屋を後にした。セリスがその部屋で暫し休んでいると兵士が来客を告げに来た。
¥「誰かな?」
客が部屋に入って来た。それはセリスも良く知る人物だった。
緑の髪と瞳を持ち紙の様に白く細い顔立ちの長身の男である。白で固められたズボン、マント、ブラウス、ブーツ。しかし上着は緑である。かってシグルドと共に戦った元シレジア王レヴィンである。シレジアの戦いにおいて帝国の圧倒的な兵力の前に敗れた後は国を追われ各地を放浪していた。そのレヴィンが今セリスの前に現われた。
「レヴィン・・・いやシレジアのレヴィン王。どうしてここに」
セリスの言葉に対しレヴィンは目を閉じ両手で制し首を横に振った。
「・・・セリス、オイフェはどう言っているか知らないが私は王などではない。シレジアは母上と共に滅んだのだ。ここにいるのは国を失った間抜けな男さ」
「御免・・・」
セリスはうなだれた。
「いや、謝る必要は無い。解ってくれればな。それよりも遂に始まったな」
「うん」
「帝国に反旗を翻す地としてイザーク程適した地は無い。帝国本土から遠く民の反帝国感情も強い。それにダナン王の暴政が皆を苦しめている。あの男は人望が無く戦術戦略も出鱈目だ。将に適地だな」
「うん。ところでどうして此処に?」
「うむ・・・・・・。実は御前に頼みたい事があるんだ」
「頼みたい事?」
「そうだ。それはな・・・ユリア、入って来なさい」
一人の少女が入って来た。薄紫の長い絹の様な髪にアメジストを薄くした様な神秘的な瞳をした小柄で華奢な美しい少女である。淡い白に近い紫の法衣の上に同じ色の丈の長い薄いローブを羽織っている。
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