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Three Roses

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第三十六話 葬儀その二

「その器に感銘している、それだけ姉への愛情が強いのだ」
「それが為にですね」
「ああされたのですね」
「それは出来ることではない、しかしそれを出来たマリー王女にだ」
 何といってもという口調での言葉だった。
「私は感銘している、ではだ」
「はい、ご葬儀にですね」
「太子も出られるのですね」
「そうする、その後でだ」
 太子は二人にさらに言った。
「私は帰る」
「お国に」
「帝国に」
「そうする、この国にいる理由がなくなった」
 マイラの夫であったがそのマイラが亡くなった今はというのだ。
「それならば去るしかない、後は大使が来るが」
「その大使殿はですね」
「太子とは違いますね」
「そうだ、ロートリンゲン家の血筋の者ではない」
 帝国の者だがそこが違うというのだ。
「だから子を為すことも出来ない」
「そしてお傍の方も」
「太子の時とは違いますか」
「そうだ、そのこともな」
「だからですか」
「最早我々は」
「この国は新教で固まる」 
 そうなるというのだ。
「旧教の復権は二百年はないだろう」
「そうしようと務めても」
「それでもですか」
「そうだ、最早固まった」 
 新教の国としての基盤がというのだ。
「卿達にとっては残念だが」
「では我々は次第にですか」
「力も失っていきますか」
「この国が新教の国となる中で」
「まさにその中で」
「そうなるだろう、しかしマリー王女は旧教を迫害するつもりはない」 
 マリーがそうした者ではないことを知っていての言葉だ。
「だから卿達もだ」
「害されることはない」
「そうなのですね」
「そうだ、だから安心するのだ」
 こう言うのだった。
「この国の信仰、旧教のそれは衰えるだろうが」
「それでもですね」
「我々は」
「そうだ、信仰を守ることだ」
 立場が次第に弱くなろうともというのだ。
「いいな、そうするのだ」
「わかりました、では」
「その様にしていきます」
 二人も太子にこう答えた、厳かな声で。
「それが我等の務めですね」
「この国の旧教を守ることが」
「それではです」
「そうしていきます」
「頼んだ、帝国からも助けはしていく」
 これまで通りというのだ。
「その力はこれまでより弱くなるがな」
「それでもですね」
「そうしていかれますね」
「そうしていく、マリー王女の婚姻の話も進んでいる様だが」
 太子はこちらの話もした、マイラやこの国の旧教のことだけでなく。
「その婚礼の儀の時にはおそらくだ」
「この国をですね」
「去られていますね」
「そうなっている」
 太子も彼の側近達もというのだ。
「その時は頼んだ」
「わかりました、それでは」
「その時までお願いします」
「そして我等はです」
「この国の旧教を守っていきます」
「その様にな、私は子を為せなかった」
 マイラ、彼女との間にというのだ。 
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