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Three Roses

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第三十六話 葬儀その一

                 第三十六話  葬儀
 旧教の儀礼での国葬の用意が進んでいた、その中で。
 宮廷の者達の一部はひそひそと話をしたのだった。その話はというと。
「側室のお子でもだな」
「しかも旧教徒であられたが」
「国葬を以てお送りするのか」
「しかも旧教徒の葬儀で」
「マリー様がマイラ様を思われる故に」
「だからか」
「何というお心の広い方なのか」 
 マリーについての話だった。
「素晴らしい方だ」
「それだけマイラ様のことを思われていたのか」
「お母上が違うとはいえ」
「そうしたことは関係なかったのだな」
「信仰の違いも関係ない」
「そうであられたのか」
 マリーのそうしたことがわかったのだ、そしてだ。
 その話を耳にしてだ、太子もマイラの側近であったオズワルド公と司教に言った。
「マリー王女に感謝しているな」
「はい、心から」
「そのことを深く感じています」
 二人は太子に厳粛な面持ちで答えた。
「ここまでして頂けるとは」
「夢にも思っていませんでした」
「マイラ様は王家の方であられましたが」
「側室のお子であられました」
「そして旧教徒であられましたので」
「とても」
「そこを敢えてだ」
 太子は厳粛な面持ちのままの二人に述べた。
「マリー王女は果たしたのだ」
「ご自身の姉上だからこそ」
「そうされたのですね」
「政治的にはだ」
 語る太子にしてもその対象のマリーにしても政治を司る者達だ、それ故に政治から離れることはない。それで今も政治のことから話すのだ。
「側室の子であり旧教徒であるからだ」
「あの様に国葬をせずともよい」
「旧教徒の儀礼でなくともですね」
「普通に葬ってもいい」
「むしろその方がいいのですね」
「そうだ、しかしだ」
 それでもというのだ。
「マリー王女はそうした、素晴らしいことだ」
「左様ですね」
「我等も深く感謝しています」
「まさに心から」
「そう感じています」
「私もだ、この度の国政は反発を受けるかも知れなかった」
 側室の子であり旧教徒であったマイラをその様に葬ることはというのだ。
「それでも行った」
「マイラ様を思われるが故に」
「だからこそ」
「私も感謝している」
 太子自身もというのだ。
「妃を彼女が望むであろうやり方で送ってくれるのだからな」
「だからこそですね」
「太子も感謝されているのですね」
「マリー王女に対して」
「それ故に」
「そうだ、私ならそうはしなかった」
 決してというのだ。
「妃が側室の子であることはどうでもいいが」
「若し新教徒であったなら」
「新教の儀礼では送られなかった」
「そうだ、送りはしたが」
 それでもというのだ。
「あそこまですることはな」
「とてもですか」
「されないですか」
「そうしたことは」
「太子も」
「私はロートリンゲン家の者だ」
 だからだというのだ。
「旧教の家だ、だからだ」
「新教で送ることは」
「どうしてもですね」
「出来ない、しかしマリー王女はした」
 新教徒であってもだ、しかもマリーの信仰心は強い。だがそれでもだったのだ。 
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