ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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79部分:合流その一
合流その一
合流
−レンスター城ー
ダンドラム要塞、アルスターにおいて解放軍が鮮やかな勝利を収めていた時リーフ達が立て篭もるレンスター城は絶体絶命の危機に瀕していた。
城壁に次々と梯子が掛けられ兵士達が昇って来る。その数はレンスター城の守備兵のそれを遥かに上回っている。
フリージの将兵達がカリオンを取り囲んだ。そして一斉に襲い掛かる。
一人目の兵士を斬り捨て二人目の胸を貫く。三人目を両断し四人目を斬り城壁から落とす。
ケインの槍が梯子から城壁に上がって来た兵士の胸を破り下へ突き落とす。横から斬り掛かる敵兵を薙ぎ払い三人目の頭を潰す。
件がアルバへ突き出される。彼はそれを槍で払うと喉を貫く。続いて剣を抜き振り向きざまに二人の敵兵の首を刎ねる。
ロベルトは弓を力の限り引き絞り矢を放つ。額を撃たれた敵兵がまっ逆さまに落ちる。それが二人になり三人になる。若いながら腕は確かだ。
リーフは城壁の上をフィン、ナンナと共に走り回り危機に陥っている場所へ急行する。
ナンナは剣を振りながら傷付いた兵士達を杖で癒していく。これにより多くの戦士達が再び戦場に向かえるようになる。
リーフは自ら先頭に立ち剣を振っていた。シグルドの妹であり剣の使い手としても知られていたエスリンの血を受け継いだのかその剣技の冴えは未熟ながらも光るものがある。駒の様に回転して二人を斬り倒し一撃で自らの倍近くはある敵兵を斬り上げた直後別の敵に剣の乱舞を浴びせ倒す。若き主君の思いも寄らぬ奮闘にレンスター軍は勇気付けられその士気は高まった。
だが誰よりも凄まじい強さを発揮したのはフィンであった。普通のそれよりも遥かに大きな槍を己が手足の如く振り回し鬼神の如き形相で迫り来るフリージ軍の将兵達を次々と薙ぎ倒していく。
「貴様等に、貴様等に我が主君の御命、そして私の宿願、渡しはせぬ!」
顔も服も朱に染まり血走った眼で敵兵を城壁から叩き落とした。首が、腕が、胴が彼の周りを竜巻の様に飛び散っていく。
イードの戦いで主君キュアンとエスリンが戦死したとの報を受けた時激しい夜の雨の中彼は号泣した。一晩泣き明かし雨が止み夜も更け朝になったときまだようやく歩けるようになったばかりのリーフの小さな手がフィンの頬を撫でた。涙は止まった。しかしリーフを抱き締めまたもや涙が溢れ出した。この時今腕の中にいる幼ない主君を例え己がどうなろうとも守り通そうと誓った。
レンスター落城の折にはリーフを小脇に抱え空から襲い掛かるトラキアの竜騎士達を次々と倒し血路を開き逃げ延びた。
その後はリーフと共にレンスター各地を転々とした。バーハラの戦いから辺境のフィアナへと落ち延びてきたかっての仲間であるジャムカやベオウルフ達と会う事すら出来なかった。追っ手と飢えに悩まされながら密かにレンスター王家を慕う者達の助けもありかろうじて二人で生きてきた。そしてフィアナに辿り着き近くの村でリーフを育てながら時が来るのを待っていた。やがてジャムカやデュー達がアグストリアへ向かいラケシスはセリスのいるイザークへ旅立った。この時ベオウルフとラケシスの娘ナンナを預かった。
暫くして旧友グレイドとその妻でありレンスター攻防戦で戦死したドリアス将軍の愛娘セルフィナがレンスター近辺の漁村に身を潜めているとブリギットに聞かされそこに向かった。その村でカリオンやロベルトといった若い騎士達と出会い今や明るく溌剌とした少年に成長したリーフを盟主にした反フリージ反グランベルの解放軍を旗揚げしたのだ。
そしてセリスの挙兵に呼応し領主であるグスタフが兵を連れアルスターのブルーム王へ謁見に行っている隙にレンスター城を急襲し占拠した。そこでレンスターの復活とセリス公子率いるシアルフィ軍の支持を表明したがたちまちイシュトー率いる四万の兵に包囲され身動き出来なくなってしまった。イシュトーがメルゲン防衛の為その地へ帰ると公認にレンスター領主であったグスタフが指揮官になった。彼の戦術及び作戦指揮は甚だ稚拙であり何とか持ち堪える事が出来た。だが篭城して二月が過ぎようとし武器や食糧も残り少なくなってきていた。
フィンが周りの敵兵達をあらかた倒し尽くした頃フリージ軍の人智から攻撃停止のラッパが鳴り響いてきた。ふと空に目をやると日が高く昇っている。どうやら昼食を摂りに戻るらしい。
「食事、か」
フィンの槍の構えを解いた。そして城壁を降り本陣の置かれている旧王宮へ帰っていった。
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