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真田十勇士

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巻ノ八十一 上田城へその十二

「切れ!そして突くのじゃ」
「そうしてですな」
「敵の動きを散々に乱す」
「そうするのですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「だからよいな」
「わかり申した」
「それではです」
「このまま攻めて」
「そうして」
「次じゃ」 
 幸村は戦いつつ言った、赤い鹿の角を持つ鎧兜と陣羽織の中で。
「次の策に移るぞ」
「はい、では」
「ここは」
「そうしますか」
「そうじゃ、まずは我等は徹底的に攻める」
 敵である彼等をというのだ。
「よいな」
「それでは」
 兵達も応え幸村を先頭にして攻める、既に攻めにかかりきって周りを見ていなかった徳川方の軍勢は幸村の手勢の攻撃を受けて総崩れになった。
 そしてだ、昌幸もここぞとばかりにだ。
「鉄砲だけでなくじゃ」
「うって出て、ですな」
「敵を追いやりますか」
「うむ、川まで追いやれ」
「そして川で」
「そこで、ですな」
「また策がある」 
 幸村と同じことを言った。
「それをするぞ」
「ですな、そうしてですな」
「敵を総崩れにしますな」
「徹底的にそうして攻めましょうぞ」
「全ては殿の思い通りですな」
「これが内府殿なら違う」
 家康、彼ならばというのだ。
「あの御仁は城攻めには慎重じゃ」
「手堅く攻められますな」
「その為城攻めが下手とも言われますが」
「それは慎重であまり攻められぬ故のこと」
「城攻め自体はですな」
「わかっておられる」
 そうだというのだ。
「そうした御仁なのじゃ、だからな」
「ここでもですな」
「こうして攻められませぬな」
「慎重にされる」
「そうされていましたな」
「やはり中納言殿はお若い」
 翻って秀忠はというのだ。
「しかも初陣でじゃ」
「戦がわかっておられぬ」
「それが表に出ましたな」
「そしてその結果ですな」
「我等もこうして防げて、ですな」
「攻められますな」
「そうじゃ」 
 まさにというのだ。
「このままじゃ、ではな」
「はい、城からもですな」
「追い立ててやりましょう」
「そして川にまで追い立て」
「そのうえで」
「度肝を抜いてくれよう」
 昌幸はにやりと笑った、そして兵達に槍や刀で切り込ませ真田家のお家芸である忍術も使わせた。すると。
「な、何じゃ!?」
「右から来たぞ!」
「左からもじゃ!」
「後ろからも来たわ!」
「何じゃこの攻めは!」
「どういう攻めじゃ!」 
 徳川方、城攻めを行っている彼等は忽ちのうちに大混乱に陥った。そしてそのうえでだ。
 城の外の軍勢は幸村の手勢と十勇士達に攻められどうにもならなくなっている、秀忠はその状況を見て蒼白になった。 
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