真田十勇士
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巻ノ八十一 上田城へその六
「これよりじゃ」
「はい、それでは」
「これよりですな」
「上田城に向かい」
「攻めまするか」
「鉄砲も弓矢も使いじゃ」
そしてというのだ。
「一気に攻めるぞ」
「この数で、ですな」
「攻め落としますか」
「その様に」
「うむ、ただ降った者は切るな」
秀忠はこのことも厳命した。
「女子供もじゃ」
「決してですな」
「戦わぬ者以外は切るな」
「そのこともですな」
「徹底せよ」
こう言うのだった。
「わかったな」
「はい、そのこともまた」
「注意します」
「断じてその様なことがない様」
「徹底します」
「このことも破れば切る」
秀忠の言葉はここでも厳しかった。
「我等は武士であることをわかっておれ」
「肝に命じておきます」
皆こう答える、そしてだった。
秀忠は軍勢を上田城に進ませた、そして城の前まで来てだった。城に人をやってこう言わせたのだった。
昌幸にだ、使者は秀忠の言葉として伝えた。
「ふむ、降れとな」
「はい」
使者は昌幸、そして彼のすぐ傍に控える幸村に答えた。
「そうされよとのことです」
「中納言殿はか」
お命はです」
それはというのだ。
「取らぬ故、断じて」
「中納言殿は律儀な方」
このことでは父である家康の遥か上を行くと評判である。。
「それではか」
「はい、誓っておられます」
「そうか、しかしじゃ」
「若殿のこの申し出は」
「謹んでな」
そうしてというのだ。
「辞退させて頂く」
「左様ですか」
「戦は武士の務め」
笑ってこうも言った。
「ならばな」
「戦われると」
「この白髪首、取られよ」
ここでも笑ってだ、昌幸は言った。
「ここでお待ちしておりまするとな」
「若殿にですか」
「伝えられよ」
使者い穏やかな声で告げた。
「是非共」
「それでは」
使者は昌幸の言葉を受けて一旦秀忠の本陣まで戻った、そのうえで彼の言葉を秀忠に伝えたのだった。
するとだ、秀忠はこう言った。
「わかった、ではな」
「それではですな」
「致し方ない」
こう言ってのことだった。
「戦じゃ」
「はい、それでは」
「皆のこれより城を攻める」
秀忠は本陣に詰める諸将に告げた。
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