ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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47部分:魔剣その八
魔剣その八
「リーン・・・・・・」
アレスがリーンの両肩を両手で抱いた。
「アレス・・・・・・」
リーンその手に自分の手を重ねた。二人の想いが手を通して互いに伝わる。
「あの・・・公子様」
館の扉からレイリアとラーラが出て来た。
「君達は?」
「あたしはレイリア、この娘はラーラ。リーンの友達です」
「よろしくお願いします」
「リーンのお友達?じゃあ君達も踊り子?」
「はい。セリス様がよろしければあたし達も入れて下さい。一人より二人、二人より三人の方が良いでしょう?」
「う〜〜ん・・・いいか。よろしく」
「こちらこそ」
ダーナの戦いは傭兵部隊の仲間割れに乗じた解放軍の地滑り的な勝利に終わった。解放軍はほぼ損害を被る事無く勝利を収めただけでなく中継貿易で栄えるダーナや多くの傭兵、黒騎士アレスを筆頭とした優れた将達を手に入れた。ここでもセリスの採ったダーナに対する施策は今まで通りのダーナの地位と自治を約束した寛容なものでありダーナ市民の支持も取りつけた。これにより解放軍は多大な資金及び武具の上納を受け、更に力を増強させた。解放軍の到来に街は沸いた。その中アレスとリーンは街の通りにある病院に向かっていた。
「ここだな」
外見は多少古いが結構大きな病院である。中は外見とは異なり新しい。二人は病院内のシスターに案内されてとある部屋に向かった。
部屋にはジャバローがいた。頭や胸、腕に包帯を巻きベッドに横たわっている。
「何しに来やがったこの野郎」
ジャバローは二人を見るなり言った。
「あんたが生きていると聞いてここへ来た。どうやら元気そうだな」
「ふん、ただ見舞いに来たってわけじゃなあだろうが」
「・・・・・・・・・」
「聞いたぜ、おめえあの後ブラムセルの旦那を殺ってそこの小娘を救い出したんだってな」
「・・・・・・・・・」
「そして解放軍に入ったらしいじゃねえか。へっ、おかげで俺はこの様だ。暫くは動く事すらままならねえ」
「済まない・・・・・・」
「何謝ってんだよ、手前が選んだんだろ。それにもう手前は傭兵じゃねえ。俺と手前は敵同士だったんだ。敵に謝る馬鹿が何処にいるんだ」
「そうか・・・そうだったな」
「ふん、やっと解かったかこの大馬鹿野郎が。まあ気分が良くなってきた。良い事を教えてやるぜ」
「良い事・・・!?」
「そうだ。御前解放軍にいるんだろ、御前の親父の仇の息子のいる」
「ああ・・・・・・」
「それの事だよ。俺は御前の親父さんとあのセリス公子の親父さんのシグルド公子が戦っていた時アグスティのシャガール王に雇われていた」
「それは前聞いた」
「まあ聞け。俺達傭兵部隊がシグルド公子の軍に蹴散らされほうほうの体でシルベール城に逃げ帰った後エルトシャン王率いるクロスナイツが出陣した。しかし数日後エルトシャン王は帰還して来た。そしてシャガール王と何やら二人で話し込んだらしい。暫くして俺の同僚のうち何人かがシャガール王に呼び出された。後でそいつ等に聞くと部屋には血糊の付いた剣を手にし肩で息をするシャガール王と血の海の中袈裟斬りにされ横たわるエルトシャン王がいた。シャガール王は死体を奴隷の墓に放り込めと命令したらしい。ズタズタになったエルトシャン王の死体は袋に入れられ墓に放り込まれた。その直後俺達は トラキアの竜騎兵共と一緒に出撃させられたがシルベール城は陥落しシャガール王も倒された。エルトシャン王の亡骸を墓に放り込んだらしい同僚は皆その時に戦死し俺はレンスターへ流れ着いた。そしてそこでまた傭兵家業をやっているうちにおめえを拾ったのさ」
「本当・・・・・・なのか!?」
「嘘だと思うのならそう思えばいいさ。しかしおめえは解ってる筈だ」
「・・・・・・・・・」
「それにおめえはもっと大切な事を心の底で気付いているだろ。人を恨んでも何も生み出さねえってな」
「・・・・・・・・・」
「まあ良いさ。おめえはおめえの生きたいように生きな。最後にこれを貸してやるよ」
ベッドの中からある物を取り出した。それはジャバローがいつも手にしていた銀の剣とスキルリングだった。
「これを・・・・・・ジャバロー、あんた・・・・・・」
剣と腕輪を手にしたアレスの表情が驚きに変わった。
「何勘違いしてやがる、貸すだけだって言ってんだろうが」
「有り難う・・・・・・」
「貸すだけだって言ってんだろ、礼なんかいらねえよ。いいか、俺の傷が治ったら返せよ。絶対だぞ、絶対」
「解った・・・・・・」
「ふん、やっと解ったか。じゃあ俺は疲れたから少し寝かせてもらうぜ。起こすんじゃねえぞ」
ジャバローは目を閉じて話を止めた。それを見届けたアレスとリーンは頭を垂れた。部屋を去る時神父と会った。その時神父に対しアレスは言った。
「葬儀を頼む」
驚いた神父が部屋に入りジャバローを調べた。彼は既にヴァルハラに旅立っていた。
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