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Three Roses

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第三十五話 臨終の床でその四

「この王宮にいた時も」
「滅多にでしたね」
「来ることはなかったわね」
「そうでしたね」
「血がつながっているというのに」
「それでもね」
「私達は疎遠なままでしたね」
「今思えば」
 二人で悔恨と共に話すのだった。
「そうですね」
「残念なことに」
「全くです」
「しかしです」
 悔やむ二人にだ、マリーが話した。
「これより」
「はい、お姉様のところに」
「それでも」
「参りましょう」
 マリーも内心悔やむものがあった、だが今更そうした感情を抱いても仕方ないとわかっていてだ。それでだった。
 二人そして側近達を連れてだった、そのうえで扉をノックした。そうしてからだった。
 どうぞという声がかあかり部屋に入る、するとマイラの質素なベッドの中にいた。そのベッドの中からマリー達を見た。その顔は蒼白で髪の毛も弱ったものであり顔には明らかな死相が浮かび出ていた。
 マイラはマリー達に死相が浮かび出た顔を向けてだ、消え入りそうな声で言った。
「聞いていました」
「私達が来ることは」
「はい」
 そうだというのだった。
「既に。ですが」
「ですが?」
「来てくれるとはです」
 こうマリーに言うのだった。
「思えませんでした」
「私達は」
「来るとは聞いていました」
「それでもですか」
「ですが本当に来てくれるとは」
 そうはというのだ。
「思えませんでした」
「私達が」
「三人がこうして私の部屋に来てくれたことは」
 命が消えそうな中で思い出す、不思議と様々なことこれまで忘れていたことが次から次にと思い出されてくる。
「何時以来でしょうか」
「確か」
 セーラが答えた、既に三人もマリーの側近達もマイラの枕元に来ている。マイラは三人には席を用意させていて座らせた。
「それは」
「私が十歳の時でした」
 マイラはその思い出される記憶の一つを出した。
「その時でした」
「十歳ですか」
「もう遠い昔ですね」
 こうも言った。
「最早」
「十歳の時は」
「あの時に来てくれて」
「そしてですか」
「その時からです」
 まさにというのだ。
「この部屋に貴女達が来たことはありませんでした」
「そうだったのですか」
「私もです」
 マイラは自分のことも話に出した。
「貴女達の方に行きませんでした」
「私達の部屋に」
 今度はマリアが言った。
「行くことはありませんでしたね」
「それは」
「私が一番覚えていることです」
 正確に言えば思い出している、そうしたことだ。 
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