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Three Roses

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第三十五話 臨終の床でその一

                 第三十五話  臨終の床で
 セーラとマリアの到着は太子も聞いた、彼はその報告を自室で聞いていたが聞いてから静かな声で言った。
「わかった」
「では」
「お二方は」
「私が何かすることも出来ることでもない」
 こう言ったのだった。
「私はエヴァンズ家の者ではない」
「だからですか」
「何もですか」
「私はロートリンゲン家だ」
 この家の人間だというのだ。
「あくまでだ、それにだ」
「それに?」
「それにと申しますと」
「何故肉親同士の出会いを邪魔する」
 こうも言ったのだった。
「そうした趣味はない」
「そうですか」
「だからですか」
「何もされないのですか」
「そうなのですか」
「そうしたことは無粋だ」
 否定の言葉だった、明らかに。
「私は好きではない」
「ではですね」
「お三方とお妃様のことはですか」
「何もされない」
「一切ですね」
「おそらくこれがだ」
 太子は遠くを見る目だった、表情もそうなっていた。
「最後となるのだ」
「お三方とお妃様が会われるのは」
「これがですか」
「最後になる」
「そうだというのですか」
「妃は残念だが」
 マイラへの想いもだ、太子は言葉に出した。
「あともって三日か」
「三日、ですか」
「もうそれだけですか」
「病が進んでおられますか」
「思った以上にだ」
 太子自身もというのだ。
「病の進みが速い、妃達の弟王はさらに速かったと思うが」
「どうもです」 
 側近の一人である典医が言ってきた。
「ああした病はです」
「若い方がだな」
「進むのが速いです」
「むしろ年老いている方がか」
「進むのが遅いです」
「妙な病だな」
「身体にしこり、腫瘍といいますか」
 典医はマイラ、そしてこれまでの三代の王達の病のことを話した。それは彼が医者として見たものである。
「それは若ければ若いだけです」
「進むのが速いのか」
「身体を蝕んでいき」
「死に至らしめるか」
「あの様に」
「そうなのか」
「そうした病なので」 
 だからだというのだった。
「お妃様もです」
「次第にか」
「はい、蝕まれ」
「あの様に痩せ衰えてか」
「左様です」
「そうなのだな」
「そうです、お妃様もお若いので」
 それが為にというのである。
「お亡くなりになられるのかと」
「そうなのだな」
「お若いと普通はお身体も強く」
「病にも勝てるな」
「そうです、ですがあの病は」
 若ければそれだけとだ、典医はまた太子に話した。 
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